2015年1月に経営破綻したスカイマーク(SKY/BC)が3月28日、東京地方裁判所が民事再生手続きの終結を決定したと発表した。2018年度までの中期経営計画も策定し、再建を加速させる。
—記事の概要—
・スケジュール通り進む
・18年度に売上高800億円超、営業益70億円超
・撤退空港へ再就航検討も
・路線認知度に課題
スケジュール通り進む
スカイマークは2015年1月28日に、東京地裁へ民事再生手続きの開始を申し立てた。確定債権は総額約1543億円で、ANAホールディングス(9202)などスポンサーが出資した180億円を弁済原資とし、約161億円を債権者への弁済に充てた。
申立代理人の倉橋博文弁護士は、「債権が確定していない5人を除き、弁済が終わった」と説明。残る債権者への弁済は、数カ月で終える見通しだという。
また、民事再生手続きの終結とともに、東京地裁からの監督命令も取り消しが決定された。監督委員の多比羅誠弁護士は「私の任務も終了した。これだけの案件では、裁判所が定めたスケジュール通りに行かないことが多いが、関係者の努力で進んだ」と述べ、債権者集会などの日程が当初の予定通りに進んだことを評価した。
18年度に売上高800億円超、営業益70億円超
スカイマークは同時に、2016年度から2018年度までの中期経営計画を策定。新生スカイマークとして再生を果たし、新たな成長に向かうことをコンセプトとした。安全や整備体制の強化だけではなく、定時性などの運航品質やサービスの向上、社員の満足度向上などを経営テーマに掲げた。
破綻した2014年度(15年3月期)の通期売上高は809億4600万円(前年同期比5.8%減)、営業損益は176億3500万円の赤字(同25億600万円の赤字)、経常損益は166億8500万円の赤字(同4億300万円の赤字)、純損益が202億1800万円の赤字(同18億4500万円の赤字)だった。
これに対し、2015年度の売上高は700億円強、営業利益は原油価格の下落もあり、15億円強となる見通し。2018年度には売上高800億円超、営業利益70億円超の達成を目標に掲げた。
市江正彦社長は、「現在ボーイング737-800型機(1クラス177席)が26機あり、20機運航している。これを24機まで稼働を高めることで売上増につなげる」と語った。現在は耐空証明が切れた機体が2機あり、稼働率が落ちていることから、整備体制の強化とともに、運航体制を改善していく。
また、ユニットコストについては、市江社長は「現在は8.5-8.6円。8円を目指す」と語った。
撤退空港へ再就航検討も
国際線チャーター便については、2018年度の実現を目指して検討を進める。「1年目の16年度は足場固めで無理。2年目はプランを考えていきたい。3年目は出来ればチャーターを飛ばしたい」(市江社長)と抱負を述べた。
一方、日本から737で飛べる近距離国際線は、国内外のLCCが参入しており、競争が激化している。航続距離の関係から、就航地としては「東アジアや東南アジア、グアム、サイパン」(市江社長)を念頭に検討を進める。
経営破綻により、路線を縮小した国内線について、市江社長は仙台や石垣、宮古、米子、熊本といった撤退した空港への再就航も検討する考えを示した。「1年で撤退するようなことはしたくない」(市江社長)として、地元自治体や旅行代理店などとも意見交換を重ねた上で、慎重に判断していくという。
好調でコードシェア進まず
出資するANAホールディングス傘下の全日本空輸(ANA/NH)とのコードシェアについて、スカイマークの佐山展生会長は「(搭乗実績が)好調なので、進んでいない」と現状を説明。10月に始まる冬ダイヤを含め、当面は実現しない。
佐山会長は、「われわれはいつでもウェルカム。検討してもらえるなら、喜んでやらせてもらう」と、コードシェアの実現には前向きな姿勢を示した。
コードシェア実現と密接な関係がある、ANAの予約システム「エイブル」の導入については、「インターフェースをかませれば、直接つながなくても利用できる。ANA次第だ」と語った。
ANAホールディングスが株主であるエア・ドゥ(ADO/HD)やソラシドエア(旧スカイネットアジア航空、SNJ/6J)、スターフライヤー(SFJ/7G、9206)は、自社システムとエイブルを直結しているが、スカイマークは独立性を保つ観点から、エイブル直結を避ける方針を維持している。
路線認知度に課題
一方、こうした計画を進めていく上で、佐山会長が懸念するのが、就航地での認知度。「アンケート調査で会社の名前は、大手2社を100%として99%。しかし、羽田-福岡線に対する福岡県民の認知度は69%で、羽田-札幌線について北海道民は61%の認知度だった」(佐山会長)と説明した。
佐山会長は、「まだまだスカイマークがどのような会社で、どのように運航しているかが認識されていない」と述べ、定時性向上などで路線ネットワークの認知度を高めていきたいと述べた。
関連リンク
スカイマーク
ANAホールディングス
全日本空輸
スカイマーク再建関連
・スカイマーク、16年2月の搭乗率81.8% 過去5年で同月最高(16年3月28日)
・スカイマーク、羽田-那覇・札幌に深夜便 7-8月は7500円(16年2月22日)
・スカイマーク、ANAとの共同運航「平行線」(16年1月24日)
・スカイマーク、最終赤字202億円 15年3月期(15年10月14日)
・ANA、スカイマークに最大19.9%出資 再上場目指す(15年4月22日)
・A330導入「会社設立並みに大変だった」 スカイマーク、737一本化で原点回帰(15年1月30日)
・スカイマーク、A330運航停止へ 宮古・石垣は運休(15年1月29日)
・スカイマーク、民事再生法申請 社長に有森氏、インテグラルが支援(15年1月28日)
特集・スカイマーク”官邸主導”再建
前編 コードシェアは「毒まんじゅう」か(15年8月6日)
後編 ANAがA380導入!?(15年8月6日)