エアバス, エアライン, 機体, 解説・コラム — 2016年1月5日 13:10 JST

なぜANAはハワイにA380を導入するのか 特集・A380はゲームチェンジャーか

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 ANAホールディングス(9202)が、エアバスの総2階建ての超大型機A380を3機導入する方針を固めた。1月中に発表する2016年度からの中期経営計画とともに発表するとみられる。
(正式発表の記事はこちら

 導入路線はハワイ線が最有力候補として挙っており、日本航空(JAL/JL、9201)の牙城に500席以上の機材で勝負に出る。いわば、A380がハワイ路線の“ゲームチェンジャー”となる可能性があるわけだ。スカイマークが導入に頓挫したため、実現すれば日本の航空会社では初導入となる。そして、2年近く発注がないA380が、久々に受注を獲得することになる。

 しかし、A380といえば、中東のエミレーツ航空(UAE/EK)がファーストクラスにシャワールームを設けたり、エティハド航空(ETD/EY)がリビングルームとバスルーム、ベッドルームを完備する最上級クラス「レジデンス」を設定するなど、機体の大きさを生かした超豪華装備と500席クラス、2クラスならば600席を超える大量輸送が目玉だ。

ANAが導入を本格検討するA380。ハワイ路線のゲームチェンジャーになるのか=14年7月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 飛行機の新機種導入は、自動車の乗り換えのような、メーカーや車種の違いといった単純な話では済まない。

 なぜANAはA380をニューヨークやロンドンといった長距離路線ではなく、中距離のハワイに投入するのだろうか。そして、2018年度とされる就航に間に合うのだろうか。

 本記事の前半ではこれまでの経緯をまとめた。後半では、導入路線や機材計画を検証する。

—記事の概要—
きっかけはスカイマーク再建
“A380導入”でデルタに競り勝つ
世界最少座席数だったスカイマークのA380
長距離国際線は777-9X
競争激化するハワイ路線
エアージャパンが運航か
MRJ、新政府専用機、777X

きっかけはスカイマーク再建

 まずは、なぜANAがA380の導入を本格的に検討することになったのか。経緯を整理してみよう。

 「2機はスカイマーク仕様で製造されており、機内レイアウトを変更する必要がある」。2015年5月、エアバスのファブリス・ブレジエCEO(最高経営責任者)は、仏トゥールーズの本社で開いた報道関係者向けイベントで、スカイマーク(SKY/BC)が発注した総2階建ての超大型機A380の今後について、記者(私)の質問にこう答えた。

初飛行に成功したスカイマークのA380初号機=14年4月2日 PHOTO: P. Masclet, Master Films/Airbus

 スカイマークは2011年にA380を6機発注。エンジンは英ロールスロイス製トレント900を選定した。初号機は2014年4月に初飛行しており、2号機まで機体の製造が、3号機は主要部品の生産が進んでいた。順調に計画が進んでいれば、2014年末から2015年上期には、成田-ニューヨーク線に就航していた。しかし、スカイマークの支払いは2014年4月から滞り、7月29日にエアバスが契約解除を通告した。

 そして2015年1月28日、スカイマーク(SKY/BC)は経営破綻する。再建に向け、井手隆司前会長ら旧経営陣は、全日本空輸(ANA/NH)とJALの大手2社とは距離を置く“第三極”としての独立性にこだわる。しかし、最終的にはANAを傘下に置くANAホールディングスの下での再建が、2015年8月5日の債権者集会で決まる。

 大口債権者4社のうち、エアバスとロールス・ロイス、米リース会社のCITが、ANAホールディングスや政策投資銀行(DBJ)などが支援するスカイマーク側の計画案(再生債務者案)を支持したからだ。この時に否決されたもう一つの計画案は、スカイマークにA330-300型機(271席)をリースしていた、米リース会社イントレピッドとデルタ航空(DAL/DL)によるものだった。

 仮にANAがスカイマーク再建に関与していなければ、A380導入という機材計画は打ち出されていなかっただろう。

“A380導入”でデルタに競り勝つ

 2015年8月の債権者集会後、ANAホールディングスでグループ経営戦略室長を務める長峯豊之・取締役執行役員は「2014年3月と2015年1月でトータル40機近い発注をしている」と、エアバスとの関係の深さを強調した。

エアバスとの信頼関係を語るANAホールディングスの長峯氏=15年8月5日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 しかし、ANAが発注したエアバス機はいずれもA320neoファミリーの小型機。黙っていても売れる超ベストセラー機だ。エアバスとしては本音では当然、A330やA350、A380といったワイドボディー機(双通路機)を売りたいところだろう。

 一方、イントレピッド案に参画していたデルタ航空は、エアバスの最新鋭機A350-900を25機発注しているほか、A330の発展型A330neoも25機発注。デルタと合併前のノースウエスト航空は、187機ものエアバス機を発注していた。40機弱のANAの比ではないのは明らかだ。

 なぜエアバスは、スカイマーク案にまわったか。今後の日本市場でのビジネスを見据え、ANAとの関係悪化を避けたかっただけではなく、関係者からはスカイマークが導入に失敗したA380の導入が決め手となったとの声が、このころすでに聞かれた。

 こうした声を、長峯氏は「エアバスとの交渉の中で、契約する話はしていない」と否定したが、今回のA380導入検討に至った。確かに“契約する”とはエアバスに伝えていないかも知れないが、“導入を検討する”と言っていても交渉において何ら不思議ではない。

 エンジンも、スカイマークが選定した


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