MRJ, エアライン, 機体, 解説・コラム — 2015年12月11日 12:58 JST

787も携わったANA小林部長「必ず飛ぶ。心配していなかった」特集・MRJ、それぞれの初飛行(ANA編)

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 「787もだったけれど、私が関わった飛行機は皆遅れると言われてしまう」。自嘲気味にこう話すのは、全日本空輸(ANA/NH)の篠辺修社長。2007年から導入プロジェクト長を務めたボーイング787型機は、度重なる納入遅延を乗り越え、2011年9月に787-8初号機(登録番号JA801A)を受領した。

 ANAが今待ち続けているのは、ローンチカスタマーとなった三菱航空機のリージョナルジェット機「MRJ」。1カ月前の11月11日に県営名古屋空港(小牧空港)での初飛行を成功させた。海外出張に向かう途中、成田空港でMRJの初飛行成功を知った篠辺社長は、「ホッとした」と当時を振り返る。そして、12月11日までにMRJは計3回の飛行試験を実施している。

 MRJのローンチカスタマーであるANAは、航空会社側の要望を三菱航空機に伝えるため、整備部門の担当者を派遣している。今年4月からは、整備センター名古屋技術駐在の小林宏至部長が、県営名古屋空港内にある三菱航空機本社でプロジェクトを進めている。

ANA整備センター名古屋技術駐在の小林部長。客室では手荷物収納棚の大型化がANAの要望として挙がった=15年10月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

初飛行に成功したMRJと記念撮影するANAの担当者と三菱重工の大宮会長ら。小林部長(後列左から2人目)は「必ず飛ぶ。心配していなかった」と話す=11月11日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 小林部長は787の開発時、ボーイングと航空会社がタッグを組んで開発する「ワーキング・トゥギャザー」のチームメンバーとして、2004年からシアトルに4年間駐在した。機体の胴体や主翼、ランディングギアなど構造整備に携わってきた小林部長にとって、787のワーキング・トゥギャザーに参加したことは、MRJでも参考になったという。MRJの開発でANA側のメンバーは、小林部長ら787に携わった人が多く集まった。

 11月11日、初飛行を終えたMRJが到着すると小林部長は「必ず飛ぶんだ、という気持ちだったので、心配はしていなかった」と心境を語った。その背景には、「プログラムが始まってからデリバリーまで、どの辺が大変なのかがわかった」という、787の開発過程を間近で見た経験があった。

 2008年3月27日、ANAはオプション10機を含む25機を発注。ANAと三菱航空機は両社で情報を共有するため、「コラボレイティブ・パートナーシップ(CP)」活動を同年から始めた。APU(補助動力装置)の付け方や、貨物室の扉の開き方など、実際に運航する上で課題となる、整備性や安全性、客室の快適性などについて、ANAがリクエストを出した。

—記事の概要—
要望反映から人材育成へ
型式証明だけではなく「全部が大変」

 こうした航空会社側の要望は、現在どのように実現されているのだろうか。そして、最初の運航会社となるANAは、どのような準備を進めていくのだろうか。(本特集の第2回はこちら

要望反映から人材育成へ

 小林部長が名古屋に着任したのは今年4月。直後に初飛行の実施時期が、予定の4-6月期から9-10月期へ後ろ倒しとなった。「9月、10月で間に合わないとは思わなかった」と、スケジュール変更を聞いた際に感じたという。

県営名古屋空港を離陸し初飛行するMRJの飛行試験初号機=11月11日9時35分 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ANAが三菱航空機へリクエストした項目は、整備性や安全性、快適性など約600件で、このうち約6割が採用された。客室では手荷物収納棚の大型化。収納棚のロックも確実にかかるようにし、客室乗務員がロックを確認しやすくした。

 整備面では、機体全体で部品を交換しやすくしたほか、MRJは脚が長く地上高が高いことから、駐機場の地上電源設備(GPU)と機体をつなげる場所を、身長が低い人でも作業しやすい場所に変更し、APUも整備性を高めた。貨物扉も、空港での作業安全性を配慮した開き方に変更された。

 コックピットについても、操縦桿の


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