女性の社会進出が進む中、産休や育休を経て長期的に働き続けることや、管理職への登用が進まないなど、課題が多い。
政府は女性活躍推進法の成立に伴い、2020年までに従業員が301人以上の企業や団体に対し、女性管理職の割合を30%以上に引き上げる目標を掲げ、最終的に50%を目指すとしている。301人以上の企業・団体は、2016年4月1日から女性の活躍推進に向け、行動計画の策定などが新たに義務づけられる。
こうした中、日本航空(JAL/JL、9201)は11月に「JALなでしこラボ」を設立。子育てと仕事の両立など、JALグループ全体で男女を問わず組織横断的に課題の共有や人材活用の可能性を探り、研究成果をグループで共有する。なでしこラボは、JAL初となる女性の常勤取締役で、客室乗務員出身の大川順子専務が担当役員として統括していく。
12月7日、東京・天王洲のJAL本社で、研究プロジェクトのキックオフイベントが開かれた。キックオフには、大川専務や所長を務める人財本部人事教育担当の植田英嗣執行役員、1チーム7人で構成される研究メンバー3チーム21人をはじめ、関係者が出席した。
結果として女性や外国人活躍へ
女性の活躍について、大川専務は「女性優遇ではないか、下駄を履かせて昇格させるのかという声がよく聞かれるが、そうではない。優遇するのではなく、育成して強化していく」と、メンバーに狙いを説明した。
JALグループは2015年3月末時点で連結58社3万1534人のうち、男性が53%、女性が47%と男女比は半々。しかし、管理職5023人のうち、女性は15%にとどまっている。
大川専務は「女性の数をどうするかという話になりがちだが、いろいろな感性や価値観、経験、能力を使い総力戦で望み、結果として女性や外国人が活躍しているのが理想だ」と述べ、女性の管理職登用ありきではない点を、メンバーに重ねて強調した。
「本気でやらないと、正体がばれてしまう」と大川専務は述べ、「ダイバーシティ(多様性)のリーディングカンパニー」(大川専務)を、名実ともに目指す考えを示した。
「周回遅れのところある」
研究メンバーで客室乗務員の川勝藍さんは、「出産などを経て辞める同期が多く、働き方を見直したい」とあいさつ。福岡空港でグランドハンドリング(地上支援)に従事する平野香さんは、同期の女性15人のうち、現在は3人になってしまったという。「力仕事を女性は続けられない」と現状を話し、継続して働ける職場環境を研究していくと語った。
「99.9%女性の中で働いている」と話す男性客室乗務員の廣野仁さんは、「輝いて働きながらも、出産などのライフイベントで会社を去る人を見てきた経験を研究に生かしたい」と抱負を述べた。
本店エリア販売推進室で働く三國由記さんは昨年1年間、社内で女性活躍推進に携わった。この時に感じたこととして、「JALは女性活躍推進が進んでいる企業と比べると、周回遅れのところがある」と指摘。「現状とのギャップを埋め、具体的に実施できるる施策の取り組みに参加できることが楽しみ」と話した。
また、メンター(サポート役)の浜井ゆり子WEBコンテンツ部部長は、「辞めていった女性が、なぜ続けられなかったのか、女性が管理職に占める割合がわずかなのか」と、自ら疑問に感じた点を述べた。「いろいろな原因があると思う。意識や仕組み、制度などを振り返りながら、施策の土台となるものをみんなで考えていきたい」と語った。
ラボのメンバーは約半年かけて、JALグループ内で多様な社員が活躍するために必要な施策を、チームごとに研究していく。2016年3月には、JALグループ内での実現に向けた提言の中間報告を、7月には最終報告を行う。
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日本航空
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