「飛ぶ飛行機を作ることはそれほど大変ではないと思うが、レギュレーションにミート(合致)させながら作っていくのは大変」。三菱航空機の川井昭陽前社長はかつて、記者(私)がMRJの進捗を尋ねた際、こう応じた。(本特集の第1回はこちら)
MRJを製造する三菱重工業(7011)は、ボーイング767や777、787など旅客機の主要部位を手掛けてきた。787の複合材主翼など、高い技術力を誇ることは、改めて言うまでもないだろう。
旅客機だけではなく、自衛隊機として旧マクドネル・ダグラス(現ボーイング)の戦闘機F-4EJファントムIIやF-15Jイーグルなど戦闘機のライセンス生産や、国産ジェット練習機T-2や支援戦闘機F-1の製造、双発ビジネスジェット機MU-300の開発と、“飛行機作り”としてみれば、世界的にもかなりの経験を有した企業だ。
一方、民間の旅客機を世に出す上で難関となるのが、機体の安全性を証明する型式証明の取得だ。冒頭の川井前社長の言葉は、この旅客機のレギュレーションに沿った機体作りの難しさを表わしたものだ。しかも、審査をする国土交通省航空局(JCAB)も、日本航空機製造(日航製)が開発した戦後初の旅客機YS-11型機以来の製造国としての審査になる。民間航空機の安全性は、製造国が安全性を保証しなければならないからだ。
記者は弊紙や日経ビジネスオンラインの連載「天空万華鏡」で、MRJのプロジェクトを進める難しさは、初飛行以上にこの型式証明取得にあると指摘してきた。
—記事の概要—
・年々厳しくなる審査基準
・ソフトウェアをどう検証するか
では、実際に審査する側は、どのようにMRJを捉えているのだろうか。三菱航空機が本社を置く県営名古屋空港には、JCABの航空機技術審査センターがある。審査する立場である川上光男所長に聞いた。
年々厳しくなる審査基準
航空機技術審査センターが発足したのは、2004年4月。国産旅客機開発の話が業界内で持ち上がったころ、国もこの動きに呼応して設置された。当初は6人体制だったが、航空会社や防衛省から人材を集めたり、人事院の官民交流制度を利用することで、現在は73人体制で審査に臨んでいる。
航空機の開発から運航までの流れは、まず機体の設計ごとに安全性や環境基準に適合しているかを航空当局が確認し、型式証明書を発行する。米国であればFAA(米国連邦航空局)、欧州ではEASA(欧州航空安全局)が発行する。この役割をJCABが担うわけだ。
そして当局が品質管理体制を認めた「認定事業所」となった工場で
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