国土交通省航空局(JCAB)と東京航空局は10月30日、アイベックスエアラインズ(IBX)に対して事業改善命令を通達した。整備ミスや整備記録の改ざん、局への虚偽報告が発覚したため。JCABとアイベックスによると、この問題による事故は起きていないという。12月4日までの報告を求めている。
JCABによると、アイベックスを所管する東京航空局が10月に立入検査を実施した際、機体の整備が適切に行われていないことを同社が把握しながらも、必要な措置をとらずに運航を優先していたことが明らかになったという。また、整備記録の改ざんや立入検査を担当する東京航空局に対して、虚偽報告を行い、整備ミスに対しても再発防止策を講じていなかった。
問題となっ整備ミスやた虚偽報告は4件で、5機で発覚。1件目は2013年1月、ボンバルディアCRJ-100型機(登録番号JA02RJ、15年9月退役済み)の前脚タイヤを伊丹空港で交換時に、左右両方のタイヤ交換が必要にもかかわらず、誤って片方のみ交換。しかし、整備記録上は両方のタイヤ交換が必要ないように修正した。
整備ミスに気づいた後も、2013年1月24日から2015年10月22日までの約2年8カ月間、タイヤ交換せずに運航を続けた。アイベックスによると、タイヤを同時に交換しない場合、バランスを維持するためにコントロールしにくくなるという。
2件目は2013年10月、乗降用ドアのヒンジ点検の期限超過が、3機のボンバルディアCRJ700型機(JA05RJ、JA06RJ、JA07RJ)で判明。整備の責任者である整備部長(66)が整備士に対して、点検を口頭で指示する一方、整備記録を期限内に実施済みと改ざんするよう指示を出していた。ヒンジ点検を怠ると、腐食などでドアが開いている時にトラブルが起きる可能性がある。
その後記録は改変されたものの、ヒンジ点検を実施せずに運航を継続。運航を続けた期間は、JA05RJが2013年5月1日から2013年11月16日まで、JA06RJが2013年5月17日から2014年4月22日まで、JA07RJが2013年12月15日から2015年6月3日まで。
3件目は2014年8月25日、仙台空港でボンバルディアCRJ200型機(JA04RJ)のエンジン・フェアリングにある点検パネルの欠損を整備士が発見したが、安全と判断。計6便を運航した後、当日中に整備措置を実施した。
4件目は2015年1月、ボンバルディアCRJ100型機(JA02RJ)の燃料供給停止用バルブを交換時に、ボンバルディア社の非推奨品で互換性のない部品を誤って装着。その後、同社から交換を指示されたものの直ちに交換せず、2015年1月27日から6月10日まで、正規部品を入手するまで運航を続けた。
また、4件以外にも当局への報告を怠ったものが12件あった。
アイベックスによると、4件については整備部長と整備士3人が関与したとしている。整備部長は全日本空輸(ANA/NH)出身で、アイベックスの安全監査室へ2010年4月1日から出向し、ANAを定年退職後の2012年4月1日に同社へ入社した。アイベックスでは、整備部長を自宅待機として、3人の整備士は資格停止処分にした。今後ヒアリングなどを実施していく方針。
国交省航空局幹部は行政処分に至った理由として、「整備ミスの内容の重大性以前に、会社全体で改ざんや虚偽報告を行っていた点を重く見た」という。
アイベックスの服部浩行社長は、「安全を前提に乗っている乗客の信頼を裏切り、誠に申し訳ない。再発防止策を確実に講じたい」と謝罪した。
アイベックスは1999年1月29日設立で、2000年8月7日に仙台-関西間を1日3往復で運航開始。現在は仙台空港と伊丹空港を拠点に、地方路線15路線を1日56往復運航している。機材はCRJ200(50席)が2機、CRJ700(70席)が7機の計9機。同社の筆頭株主は日本デジタル研究所(6935)で、ANAとはコードシェア(共同運航)を行っているが、資本関係はない。
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IBEXエアラインズ
国土交通省
国土交通省東京航空局