コックピット内でパイロットが写真撮影し、乗務停止処分を受けるケースが相次いでいる。ジェットスター・ジャパン(JJP/GK)は8月5日から1週間、2人のパイロットを乗務停止処分とした。
6月には、日本航空(JAL/JL、9201)の機長(47)も、コックピット内で客室乗務員(CA)と記念撮影して乗務停止処分となり、8月21日には国土交通省航空局(JCAB)も処分を下した。
駐機中に計器撮影のジェットスター
ジェットスター・ジャパンによると、同社の男性副操縦士(49)が出会い系アプリで知り合った女性とみられる人物から、航空機に関する資料写真を求められたという。
写真を求めた人物は、現在は空港旅客係員として働いており、ディスパッチャー(運航管理者)を目指している女性だと自己紹介。副操縦士は、駐機中の機内で撮った計器類や、機外で撮影したマニュアル類の写真を、スマートフォンアプリ「LINE(ライン)」で送っていた。
送付した写真の中には、この副操縦士がコックピットの右席に座り、運航中に機内アナウンスをしているものもあった。このため、同社では左席から撮影した機長(64)についても、副操縦士乗務停止処分とした。
ジェットスター・ジャパンの社内規定では、計器類などの写真を社外に公開することを禁じており、これに基づいて2人を乗務停止処分とした。同社はJCABに対し、事実関係を報告している。
運航中にCA撮影のJAL
一方、6月に発覚したJALの男性機長による写真撮影問題については、航空法が定めるパイロットの見張り義務を怠ったとして、JCABは8月21日に同日から45日間の業務停止処分を下した。JALでは6月の発覚直後から、すでに機長を乗務停止にしている。
この問題は6月7日午前8時ごろ、札幌発伊丹行きJL2000便(ボーイング737-800型機、乗客42人、パイロット2人、客室乗務員4人)が函館上空付近を上昇中に起きた。同便が高度1万フィート(3048メートル)を通過し、シートベルトサインが消え、副操縦士がトイレに行くため、3分程度離席した。その際、コックピット内に最低2人の乗員が常駐する規定に基づき、CAが入室。機長がCAと並んで記念撮影した。
機長はCAを副操縦士が座っていたコックピットの右席に座らせ、私物のスマートフォンで撮影。この状態では機長が外部監視を十分行えないため、航空法が定める見張り義務を果たしていなかった。
JALでは、コックピット内は会社が認めた電子機器を除き、社内規定で使用を禁じている。私物スマートフォンの使用は、この規定にも反していた。右席への着席行為も、緊急時や運航の安全上必要な場合を除き、パイロット以外の着席を禁じている内規に違反していた。
CAは当日夜、所属部署に相談。会社へは翌8日午後に報告があった。JALは報告を受け、機長を8日から乗務停止にしており、現在も乗務から外れている。
JALでは、国の処分期間を終えた後の機長の処遇を検討する。
2人常駐だけで安全守れるか
ジェットスター・ジャパンのケースでは、副操縦士が計器類を撮影したのは駐機中の機内、マニュアルを撮影したのは機外だった。しかし、機長がこの副操縦士の姿を撮影したのは、運航中だった。同社が乗務停止処分とした理由は、社内規定で禁じられている計器類などの写真を、社外に公開したためだ。
一方、JALのケースは、コックピットを離席した副操縦士に代わって入室したCAを、運航中に撮影。見張り義務を怠っていた。このケースでは、航空法と社内規定双方に違反している。
JCABでは、今年3月に起きたルフトハンザ・グループのLCC、ジャーマンウイングス(GWI/4U)の4U9525便墜落事故を受け、4月に国内の航空会社に対し、コックピットへの乗員2人以上の常駐を義務付けた。同便の副操縦士がコックピットで1人になった際、故意に墜落させたとみられるためだ。
コックピットの乗員2人以上の常駐義務化は、乗員が運航中に相互監視し、安全を確保するためのもの。しかし、JALやジェットスター・ジャパンの問題を見る限り、複数の乗員が常駐するだけで、コックピット内で起こりうる問題を防げるとは言いがたい。一方、やみくもな規制強化も、問題の隠ぺいなどにつながる可能性がある。
ささいな行為が、空の安全を脅かすことにつながりかねない。日本航空123便墜落事故から30年。国や各航空会社には、コックピット内に常駐する人数以外に、倫理面で実効性がある再発防止策が求められるだろう。
関連リンク
国土交通省
日本航空
ジェットスター・ジャパン
・JAL、運航中の操縦室で機長とCA記念撮影 見張り怠る(15年6月13日)
・国交省、操縦室の2人常駐義務化(15年4月29日)
・操縦室の常駐人数見直しも ジャーマンウイングス墜落で(15年3月27日)