日本航空(JAL)は7月24日、「航空機による大気観測プロジェクト CONTRAIL」の特別塗装を施したボーイング777-200ER型機(登録番号JA707J)を報道関係者に公開した。25日から主に羽田とパリ、サンフランシスコ、香港を結ぶ路線で運航する。
同プロジェクトは1993年からJALと気象庁気象研究所が共同で、2機の747を使用して日本とオーストラリアを結ぶ定期便で大気を採取し観測を開始。2005年からは日航財団と独立行政法人国立環境研究所、ジャムコが加わり、共同研究プロジェクト「CONTRAIL」として活動している。05年の時点では、2機の747-400と3機の777の計5機が国際線定期便で大気の採取と測定を行っていたが、747の退役に伴い現在は4機の777-200ERが活動を引き継いでいる。
観測装置は777-200ERの前方と後方の貨物室に搭載。前方には二酸化炭素(CO2)の濃度を連続観測する「CO2濃度連続測定装置(CME)」が、後方には大気を自動採取する「ASE」と呼ばれる装置が搭載されている。ASEで採取した空気は、CO2やメタンなどの成分分析に使用される。
装置を開発したジャムコの清水裕久課長代理によると、747-400と777のどちらにも取付が可能なものとして、FAA(米国連邦航空局)とJCAB(国交省航空局)の承認を得ているという。
民間旅客機で上空のCO2濃度を連続して観測するプロジェクトは世界初で、国内外の研究者から高い評価を得ており、地球温暖化など気候変動メカニズムの基礎となる地球上の炭素循環を解明する研究に生かされている。
国立環境研究所地球環境研究センター大気・海洋モニタリング推進室長の町田敏暢氏はCMEのデータで発見できた事例として、CO2が3月から6月にかけて北半球から南半球へ赤道上空を越えて移動していることが確認できたと紹介。また、上空の空気をすべて持ち帰れるため、今後新たな観測装置が開発された場合に成分の再分析も行えるという。
また、JALでは通常は特別塗装機をデカールを機体に貼って仕上げているが、今回は長く積極的に取り組む気持ちを込め、機体後部にペイントで仕上げた。