お年寄りは身体の不自由な人の立場に立って接客しよう──。日本航空(JAL/JL、9201)は6月29日、高齢者や身体障害者が安心して空の旅に出掛けられるよう、新人の空港旅客係員(グランドスタッフ)を対象とした、「プライオリティ・ゲストサポート訓練」を報道関係者に初公開した。
訓練は羽田の新整備場地区にある、空港旅客係員用の訓練施設「空港サービスモックアップ」で実施。今春入社の空港旅客係員500人が受講しており、29日の訓練には6月入社の14人が参加した。
「あと少しです」はダメ
今回の訓練では、2人の教官が高齢者や車いすを利用する人、目の不自由な人、妊娠している人への応対例を約1時間半かけて実演し、新人たちも係員役と乗客役双方を体験した。JALによると、ここ数年で高齢者や身障者の利用が増えていることから、座学だけではなく、実技を通じて、係員全員が応対方法を身につけられるようにしたという。
高齢者の応対訓練では、視力や聴力などが低下する装具を着用し、航空券の文字が見えにくさや、財布から小銭を取るだけでも時間がかかってしまうことなどを体験した。
車いすで搭乗する場合、幅の狭い保安検査場や搭乗口を通過したり、車いすの車輪を外すといった応対が必要になる。教官は、段差や坂道、狭い通路を通る際、係員自身が気をつけることだけではなく、ひじを車いすから張り出さないなど、乗客にも注意してもらうポイントがあると説明していた。
目の不自由な人を案内する際は、教官から「あっち、こっち、あと少し、といった言葉ではなく、あと3歩歩くと段差があります、というように、わかりやすい声がけを」と指導があった。
また、妊娠している人の場合、病気ではないため妊婦自身が係員に声を掛けづらい場合があると説明。新人係員たちは、2キロのおもりが入ったジャケットを着用して、妊娠中は身動きが取りにくいことを体験していた。
車いす「予想以上に重かった」
車いす訓練を体験した伊丹空港配属の田中絵梨さんは、「車いすが予想以上に重かったです。前後に押したことはありましたが、段差を通るのは初めてでした」と振り返った。立ち位置や話し方、車いすを動かすコツなど、気をつけなければならない点が多くあると話した。
目の不自由な人を案内する訓練をした福岡空港配属の近藤さつきさんは、「目の不自由な人を案内する言葉を普段は使っていないので、戸惑いました。案内しなければ、という気持ちが先に出てしまいました」と、自ら体験しなければわからない応対の難しさを実感していた。
空港旅客係員の施設での訓練は、国内線は16日間。チェックイン手続きや搭乗口の案内などの訓練を受けた後、今回のプライオリティ・ゲストサポート訓練を受ける。JALには同訓練のインストラクターが167人いるという。新人教育や訓練のカリキュラム作成を担う専任教官は、全員がインストラクター資格を保有。インストラクターは、羽田空港では国内線と国際線合わせて50人、福岡や伊丹では10人弱、小規模空港でも最低1人は配置しているという。
JALの空港企画部教育・サポート室の志知茜専任教官は、「自分自身が考えて、型にはまらない案内ができるようになってもらうのが狙いです。人だからこそ出来るサービスを提供していきたいです」と、目的を語った。
*訓練の様子は、写真特集で紹介します。
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