アモイ編からの続き。全日本空輸(ANA/NH)が長距離国際線で運航してるボーイング777-300ER型機は、現在19機。このうち、13機が新サービスブランド「Inspiration of Japan(IOJ、インスピレーション・オブ・ジャパン)」に基づく新仕様に改修された。
最初の改修機(登録番号JA733A)は、2011年4月25日から約2カ月かけ、羽田の格納庫で改修した。その後は羽田で2機、成田で4機改修し、国内では計7機を担当した。3月17日に成田空港へ戻った機体(JA782A)は改修の最終号機で、中国・福建省南部のアモイにある「HAECO XIAMEN(ヘコ・シーメン、旧称TAECO、テコ)」で作業が行われた。
機体が成田に戻った翌18日、記者が格納庫を訪ねると19日の初便投入に向けて、最終整備が行われていた。万一、18日の便に使われる777-300ERに不具合が発生すれば、前倒しで就航する可能性もあるため、整備士たちは粛々と作業を進めていく。
新仕様機の一番の特徴は、日本で初めてビジネスクラスに全席通路アクセスを実現した「スタッガード配列」のフルフラットシートを導入したことだ。すでにこのレイアウトは一般的になったが、2010年4月19日に新仕様最初の機体(JA784A)が就航した当時は、まだ珍しかった。
開発から携わってきた、ANAのCS&プロダクトサービス室商品戦略部の茅順一朗・主席部員は「乗客からも好評で、今でも競争力がある。自信を持っているので、ファンを増やしていきたい」と、時代に先駆けたビジネスクラスは自慢のプロダクトだ。
最終改修が施されたJA782Aの座席数は、ファースト8席(1-2-1配列)、ビジネス52席(1-2-1配列)、プレミアムエコノミー24席(2-4-2配列)、エコノミー180席(3-4-3配列)の計264席。本写真特集では、もっとも注目されるビジネスクラスだけではなく、ファーストからエコノミーまで、全クラスのシートを紹介していく。
ファーストクラス
23インチの大型液晶ワイドスクリーンを備え、シアタールームのように過ごせる。フルフラットシートの長さは77インチ(約195.6cm)で、幅は32.9インチ(約83.6cm)と、フルフラットになったビジネスクラスと比べてもゆったりしている。
角度を変えられるLEDの読書灯が2つ、ピアノのように鏡面仕上げの大型ダイニングテーブル、可動式のカクテルテーブルなどを備える。
個室ユニットの壁面には、ジャケットや靴の収納スペースを用意した。シートメーカーはゾディアック・シート・フランスで、周囲のシェルはジャムコ(7408)。
ビジネスクラス
液晶ワイドスクリーンは17インチのタッチパネル式。日本の航空会社では初めて「スタッガード配列」を採用し、全席通路アクセスを実現した。ファーストクラスと同様に大型サイドテーブルを設けた。
隣席を作らず、個室感と開放感のバランス良い空間を生み出したことで、客室乗務員も各席の様子を伺える。
フルフラットシートの長さは74.5インチ(約189.2cm)、幅は25.3インチ(約64.3cm)。シート下には靴を収納できる専用スペースを設けてある。シートメーカーはゾディアック・シート・フランス。
プレミアムエコノミー
個人液晶モニターは10.6インチのタッチパネル式(最前列は12.1インチ)。大型テーブルやレッグレスト、フットレスト、パソコン電源を備える。
シートピッチは38インチ(約96.5cm)で、幅は19.3インチ(約49cm)。シートメーカーはゾディアック・US。
エコノミークラス
個人液晶モニターは9インチのタッチパネル式。モニターが薄型になったことで、各席の空間が広がった。足もともIFE(機内エンターテインメント装置)の機器類の配置を工夫したことで、広くなっている。
シートピッチは34インチ(約86.4cm)で、幅は17.2インチ(約43.7cm)。シートメーカーはゾディアック・US。
◆ ◆ ◆
長距離国際線を担う777-300ERは、今年の3月から5月にかけて、毎月1機ずつ新造機が引き渡される予定で、計22機になる。ANAは2021年度から777の後継機777-9Xを導入するが、当面は現在のシートが同社の顔。今回の改修で生まれ変わったJA782Aも、長く活躍して欲しいものだ。
*写真は計48枚(ログインすると、すべてご覧いただけます)。
*本写真特集はアモイ編と機体編の2本です。
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