関西空港の対岸にある航空保安大学校で3月14日、航空管制官の採用試験受験者向け説明会が開かれた。
対象は2015年の航空管制官採用試験の受験資格がある人で、午前と午後の2部制で予定を6人ずつ上回る各回36人、計72人が参加した。航空管制業務と学校の紹介、施設見学、教育・訓練概要の説明、研修生との懇談や質疑応答などが行われ、参加者は研修生にさまざまな疑問をぶつけていた。
航空保安大学校は一般の大学と異なり、国土交通省の航空管制官や航空管制運航情報官など、航空保安職員を養成する研修施設。1959年11月、羽田空港内に開設した「航空職員訓練所」が始まりで、2008年4月に現在の大阪府泉佐野市へ移転した。管制官として採用されると、同校で1年間研修を受けた後、全国各地の空港などへ配属される。
管制官の業務は3つに分かれる。主要空港の管制塔で業務に就く「飛行場管制業務」、主要空港の庁舎内にあるレーダー管制室で働く「ターミナルレーダー管制業務」、札幌と東京(埼玉県所沢)、福岡、那覇にある航空交通管制部でレーダーシステムを用いた管制業務に従事する「航空路管制業務」の3業務だ。
飛行場管制は、空港内と空港を中心に約9キロメートル圏内を担当し、航空機の離着陸の許可や空港内の移動などを指示する。ターミナルレーダー管制は、空港から約100キロメートル圏内を担当し、航空交通管制部から引き継いだ到着機をレーダーで把握しながら順序よく並べ、管制塔へ引き継ぐ。航空路管制は、巡航中の航空機に対して、レーダーを使って指示や許可を与える。
同校航空管制科の宮本利治科長によると、全国に管制官は約1800人おり、このうち3割が女性。管制官歴36年の宮本科長の3年下から女性管制官の採用が始まったという。参加者に「男女差が一切ない職場」と語り、半数近い女性参加者に受験を呼びかけた。また、「英語力よりも、まずはコミュニケーション能力が大事」と、パイロットと顔の見えない無線を通じてのやり取りになり、チームワークがカギとなる管制官に求められる資質を挙げた。
2014年はパイロット不足により、国内LCC(低コスト航空会社)で欠航が相次いだ。同校の永井隆一研修調整官は、管制官の現状について「人数を維持している状態」と話す。LCCの就航で便数が増え、中国や東南アジアからの便も増加傾向にあるものの、管制官を直ちに増員するのは難しい状況だという。
説明会は、午前と午後に各2時間半ずつ開催。参加者は管制業務の説明を受けた後、校内にある飛行場管制とターミナルレーダー管制、航空路管制の各業務の訓練施設を見学した。見学後の研修生との懇談会では、参加者から試験の受験対策や学生寮での生活などについて質問が出た。
2014年10月に入学した女性研修生は、「同じ目標に向かって、同期で支え合っている。授業では試験も多いが、管制官になるための勉強なので楽しい。定年まで働けるようがんばりたい」と、研修生活の楽しさや管制官の魅力を語りかけていた。
管制官採用試験の2014年度の応募者数は1315人。合格者は97人で87人が採用された。このうち、女性は42.5%にあたる37人だった。2015年度は、4月1日から13日まで人事院のウェブサイトで受験申し込みを受け付ける。1次試験は6月7日で合格発表が6月30日、2次試験が7月8日で合格発表は8月25日、3次試験が9月3日または4日で合格発表は10月6日となっている。採用予定数は約80人。3次試験では、今回から管制官に必要な記憶力や空間把握力を、航空管制業務のシミュレーションで試験する。
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