国土交通省は12月19日、エア・ドゥ(ADO/HD)に対し航空法に基づく事業改善命令を通達した。運航乗務員の訓練体制の不備などによるもので、2015年1月30日を期限として改善策の報告を求めている。
今年9月11日、午前6時50分羽田発、午前8時20分札幌着のHD11便(ボーイング767-300型機、登録番号JA8359)で発生。機長初期訓練中の運航乗務員(当時、副操縦士)が新千歳空港への着陸進入中、高揚力装置使用時の運用限界速度の超過、管制空域での速度制限超過、適切な着陸形態が整わないままの進入の継続、対地接近警報装置の作動など、不適切な操縦をした。
訓練を担当した教官は、訓練の評価を「良好」として記録。会社側は教官から運用限界速度の超過のみ報告を受け、副操縦士は訓練を修了し、9月26日に機長昇格した。
その後、11月に国交省の航空局(JCAB)から当該便の昇格プロセスについて、同社に照会があった。社内で飛行データの解析などの調査を進めたところ、教官の報告とは異なり副操縦士が適切に操縦しなかったことが、12月に入り発覚した。
社内調査が進む中で、乗員部や訓練審査部、安全推進室、安全統括管理者が十分に検証せず、副操縦士に対する追加訓練などの必要な措置を不要と判断。12月2日付けで昇格を取り消すまで、機長として運航を継続させていた。
これらの事象を調査するため、JCABでは12月3日から12日まで、同社への立ち入り検査を実施。訓練体制や安全管理体制の不備が見られた。社内での報告体制が機能していなかったことも合わせ、国交省では「安全管理体制が適切に機能していないことが認められる」との結論を出した。
国交省は同社に対し、運航乗務員の訓練体制の改善と、安全管理体制の確立を要求。期限内に報告しなければならない。同社によると、担当訓練教官と副操縦士は無期限の乗務停止処分とし、現在は自宅待機処分となっている。
同社は、2013年12月から今年12月までの路線訓練便の飛行データ解析を実施。9月11日の当該便以外では、不正な訓練評価はなかったことを確認した。同社によると、同様の事例はこれまでに発生していないという。また、整備部門や運航乗務員などへの処分が重なり、客室乗務員など他部門への伝播が懸念される中、そうした事象の発生もないとしている。
同社は9月、整備期限を守らなかった件に関して厳重注意を受けた。国交省ではこのような事案が立て続けに起きたことについて「極めて遺憾」と強い懸念を示している。これに対し、同社は「(厳重注意が重なったのは)社内体制や組織風土に問題があったと認識している。社内体制を整備し、再発防止策を策定。安全運航に全力を尽くす」としている。
関連リンク
株式会社AIRDOに対する事業改善命令について(国土交通省)
エア・ドゥ
・エア・ドゥ、国交省に再発防止策を提出 整備体制の不備で(14年10月11日)
・国交省、エア・ドゥを厳重注意 整備期限守らず(14年9月26日)
・国交省、ソラシドを厳重注意 航空日誌に機長署名忘れ(12年10月16日)
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・福岡空港の第2滑走路、早期着工へ 国交省小委員会(14年12月12日)
【お知らせ】
タイトル後半をYahoo!ニュース配信記事と揃えました。(2014年12月19日 21:28 JST)