羽田空港国内線ターミナルを運営する日本空港ビルデング(9706)が7月31日に発表した、三越銀座店での空港型免税店の展開。国内の街中にある免税店は、消費税のみが免税。一方、空港型は消費税のみならず、関税や酒税、たばこ税も対象で、空港の制限エリア内にある免税店と同等の措置がとられる。
空港ビルが組むのは、三越伊勢丹ホールディングス(3099)と成田国際空港会社(NAA)の100%子会社で免税店運営を手掛けるNAAリテイリング。3社で合弁会社を9月に設立し、2015年秋に三越銀座店8階に出店する。
売場面積は約3300平方メートルで、品揃えは高級ブランドや宝飾品、時計、化粧品などを予定しており、初年度の目標売上高は100億円。翌年度は130億円を目指す。
新会社の資本金は1000万円で、出資比率は空港ビルが45%、三越伊勢丹HDとNAAリテが27.5%ずつ。空港ビルと三越伊勢丹HDは2012年4月から、羽田空港国内線ターミナル内に「イセタン羽田ストア」を展開。7月18日には、3店舗目となる女性向けの「イセタン 羽田 ストア(レディス)ターミナル1」をオープンしている。
日本で空港型免税店があるのは、沖縄のみ。これまで街中への出店がなかった理由を「空港免税店は空港会社が経営していることが多く、街中への展開を意識していなかった」と、空港ビルの鷹城勲社長は話す。韓国をはじめ海外では、空港外で運営する免税店収入が増加傾向にあるため、参入を決めた。
2020年開催の東京五輪を視野に、「訪日観光客をもてなすインフラのひとつ」と表現する鷹城社長。空港内では買物客の側は時間が、店舗側は展開できる商品がそれぞれ限られるため、広い売場面積と滞在時間の長さが見込める空港型免税店の街中展開は、新たな観光需要につながると期待を示す。
一方、三越伊勢丹HD側も、「世界のギンザ」に店舗を持つ強みを生かしたい考え。同社の大西洋社長は銀座店について「2000万人で700億円」と現状を説明。外国人客は7-8%で、客単価は7000円から8000円だが、8階に免税店を入れることで単価倍増を見込む。「将来は銀座4丁目の角(かど)である以上、1000億円をめざす」と、空港型免税店を取り込むことで三越銀座店の売上増にもつなげていく。
また、家電量販店などが運営する既存免税店が、同様の事業展開を始める可能性については、空港での受け渡し施設が必要になるため、当面は競合しないと3社では見る。
2店舗目以降は、1号店の実績から検討するという。空港ビルは羽田空港周辺に船着き場を整備しており、鷹城社長は「横浜やお台場との回遊も見込める」と話す。首都圏を訪れる外国人の購買需要の強さから、銀座店に次ぐ店舗展開にも意欲を示した。
関連リンク
日本空港ビルデング
三越伊勢丹ホールディングス
Fa-So-La(NAAリテイリング)
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