今年1月に韓国で出発前のエアプサン(ABL/BX)の釜山発香港行きBX391便(エアバスA321型機、登録記号HL7763)で火災が発生した際、乗客のモバイルバッテリーが火元となった可能性が指摘されていることから、航空各社は飛行中のモバイルバッテリーの使用や充電を禁止する動きが出ている。
こうした中、国際線を運航する日本の大手2社はどう対応していくのか。

乗客のモバイルバッテリーが火元とみられる火災が起きたエアプサンの釜山発香港行きBX391便のA321 HL7763(BEA提供)
—記事の概要—
・大手2社は現状維持
・規制強まる海外勢
大手2社は現状維持
日本航空(JAL/JL、9201)では、機内でのモバイルバッテリーの使用や充電を禁止する予定は今のところないという。一方、トラブルが起きた際に客室乗務員が使う耐熱手袋と耐熱袋を、8年前の2017年から導入済みだ。

モバイルバッテリーの機内使用規制が海外で強まる中、日本の大手2社は現状維持も耐熱袋などで対応=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
JALによると、韓国当局はエアプサンの事故を受けて、韓国を出発するすべての便に対し、乗客が機内に持ち込むモバイルバッテリーについては、充電端子などがほかのものに触れてショートしたり、誤動作を防ぐため、ジッパー付きポリ袋に入れるよう求めているという。韓国当局は3月1日から31日までポリ袋を配布するが、在庫がなくなり次第終了する見込み。JALグループではJAL便のほか、LCCのZIPAIR(ジップエア、TZP/ZG)もソウル(仁川)へ乗り入れており、2社が対象になっているという。
また、JALは乗客に対してモバイルバッテリーの使用・充電を禁止していないが、機内でリチウム電池やリチウムイオン電池を搭載したスマートフォンやモバイルバッテリーなどが発火・発煙・異常発熱した際、客室乗務員が対処する際に使う耐熱手袋と耐熱袋を2017年から導入している。
全日本空輸(ANA/NH)も、乗客に対して機内でのモバイルバッテリーの使用や充電を禁止するといった手荷物のルール見直しは、現時点で予定していないという。

ANA・菊地シート工業・TOPPANが共同開発したFire Resistant Bag(TOPPANのサイトから)
ANAでは、菊地シート工業(大阪市鶴見区)、TOPPANの3社で、機内で異常発熱した電子機器を客室乗務員が扱う際に使う「Fire Resistant Bag(耐火バッグ)」を共同開発し、2024年4月からANAの運航便、エアージャパン(AJX/NQ)が運航するANA便とAirJapan便、ANAウイングス(AKX/EH)の運航便の全機材に搭載している。
今年1月からは、航空業界やその他業界向けに最低50セットから外販を始めている。TOPPANが開発した火災の熱に反応し、消火効果のあるエアロゾルを放出する消火フィルム「FSfilm」と、菊地シートが提供する「耐火袋」を組み合わせたもので、ANAの客室乗務員のアイデアから生まれたという。
規制強まる海外勢
海外の航空会社では、3月1日から台湾の主要航空会社が飛行中にモバイルバッテリーを使ったスマートフォンなどの充電や、モバイルバッテリー自体の充電を禁止。リチウム電池やリチウムイオン電池を使ったモバイルバッテリーなどは、機内持ち込み手荷物として適切に梱包するよう求めている。

乗客のモバイルバッテリーが火元とみられる火災が起きたエアプサンの釜山発香港行きBX391便のA321 HL7763(BEA提供)
3月15日からは、タイ国際航空(THA/TG)も航空機内でのモバイルバッテリーの使用・充電を禁止。シンガポール航空(SIA/SQ)は、4月1日から禁止する。
コロナ前の一時期は、航空会社の記念品として選ばれることも多かったモバイルバッテリー。海外を中心に粗悪品が流通し、火災などの事故も発生していることから、今後も機内での使用や充電を規制する航空会社が増える可能性がある。
関連リンク
日本航空
全日本空輸
CAのアイディアから生まれた「Fire Resistant Bag」を販売開始(ANA)
モバイルバッテリー
・シンガポール航空、モバイルバッテリー使用・充電4/1から禁止(25年3月12日)
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・エアプサン香港行きBX391便、釜山出発前に火災 乗客3人けが(25年1月29日)