三菱重工業(7011)は12月18日、CTO(最高技術責任者)を務める伊藤栄作常務執行役員(61)が4月1日付で新社長に昇格する人事を発表した。泉澤清次社長(67)は代表権のない会長に退く。
伊藤新社長は1963年生まれで、東京大学工学部を1987年に卒業後、三菱重工に同年入社。その後、九州大学で工学博士を2007年に取得している。入社後は主にガスタービンを中心とした流体技術の研究開発に携わり、2015年4月に技術統括本部の総合研究所で流体研究部長、2020年4月に常務昇格後はCTO(最高技術責任者)などを歴任してきた。
また、デジタルイノベーション本部の立ち上げや、デジタル化、AI化など、今後重要視される分野をリードしてきた実績がある。
泉澤社長は「社長としての要件を議論してきた。三菱重工グループの社長が担うべき役割、重視すべき点として、ポートフォリオ経営の深化、成長戦略の推進と実現、長期にわたる課題へのコミットメントを挙げた。幅広い事業から構成される事業体なので、特定事業に偏らない公平性、責任感の強さ、将来に向けてチャレンジする前向きな決断力、幅広い技術と知見が必要」と選任理由を述べた。泉澤社長によると、今年4月から2025年度の体制を検討し始め、9月に組織変更した「役員指名・報酬委員会」で10月ごろから後継指名が本格化したという。
急速に導入が進むAIなど、技術的な幅の広さがこれまで以上に求められる中、CTOとしての伊藤氏の経験を重視したかを泉澤社長に問うと「私も前任の宮永(俊一会長)も事務系。彼(伊藤氏)は研究者であり、海外の研究者とも直接対話できる」と、CTOの経験よりも研究者として国際的な実績や交流経験、部下からの信頼の厚さ、正しいことを論理的に正しいと説明できる能力を評価していた。
伊藤氏は「技術では他社に負けない。とても多様な人材や製品分野を持っており、コングロマリットのデメリットとしておっしゃる方も多いが、変化の大きい時代、社会に、たくさんのピースを持っていることは大きな価値。短い時間で実現できるポテンシャルがある」と自社の強みを挙げた。
航空・防衛分野へ貢献できる点としては「高度なシミュレーションや解析、設計や製造技術のノウハウがある。エアラインや(機体メーカーなど)OEMがどういう開発をするか、ニーズを受け止めていきたい」と抱負を述べた。
三菱重工の2024年4-9月期(25年3月期第2四半期)連結決算(IFRS)は、売上収益が前年同期比11.1%増の2兆2981億1300万円、事業利益が86.7%増の1884億3500万円、純利益が16.5%増の1071億2000万円だった。2025年3月期通期の業績予想は、売上収益が前期(24年3月期比)5.2%増の4兆9000億円、事業利益が23.9%増の3500億円、純利益は3.6%増の2300億円を見込む。
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