企業, 機体, 解説・コラム — 2024年12月19日 13:20 JST

三菱重工、新社長に伊藤常務CTO「たくさんのピースは大きな価値」

By
  • 共有する:
  • Print This Post

 三菱重工業(7011)は12月18日、CTO(最高技術責任者)を務める伊藤栄作常務執行役員(61)が4月1日付で新社長に昇格する人事を発表した。泉澤清次社長(67)は代表権のない会長に退く。

三菱重工の新社長に就任する伊藤栄作常務(左)と会長に就く泉澤清次社長=24年12月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 伊藤新社長は1963年生まれで、東京大学工学部を1987年に卒業後、三菱重工に同年入社。その後、九州大学で工学博士を2007年に取得している。入社後は主にガスタービンを中心とした流体技術の研究開発に携わり、2015年4月に技術統括本部の総合研究所で流体研究部長、2020年4月に常務昇格後はCTO(最高技術責任者)などを歴任してきた。

 また、デジタルイノベーション本部の立ち上げや、デジタル化、AI化など、今後重要視される分野をリードしてきた実績がある。

三菱重工の新社長に就任する伊藤栄作常務(左)と会長に就く泉澤清次社長=24年12月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 泉澤社長は「社長としての要件を議論してきた。三菱重工グループの社長が担うべき役割、重視すべき点として、ポートフォリオ経営の深化、成長戦略の推進と実現、長期にわたる課題へのコミットメントを挙げた。幅広い事業から構成される事業体なので、特定事業に偏らない公平性、責任感の強さ、将来に向けてチャレンジする前向きな決断力、幅広い技術と知見が必要」と選任理由を述べた。泉澤社長によると、今年4月から2025年度の体制を検討し始め、9月に組織変更した「役員指名・報酬委員会」で10月ごろから後継指名が本格化したという。

伊藤栄作常務を新社長に選任した経緯を説明する三菱重工の泉澤清次社長=24年12月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 急速に導入が進むAIなど、技術的な幅の広さがこれまで以上に求められる中、CTOとしての伊藤氏の経験を重視したかを泉澤社長に問うと「私も前任の宮永(俊一会長)も事務系。彼(伊藤氏)は研究者であり、海外の研究者とも直接対話できる」と、CTOの経験よりも研究者として国際的な実績や交流経験、部下からの信頼の厚さ、正しいことを論理的に正しいと説明できる能力を評価していた。

 伊藤氏は「技術では他社に負けない。とても多様な人材や製品分野を持っており、コングロマリットのデメリットとしておっしゃる方も多いが、変化の大きい時代、社会に、たくさんのピースを持っていることは大きな価値。短い時間で実現できるポテンシャルがある」と自社の強みを挙げた。

新社長としての抱負を語る三菱重工の伊藤栄作常務=24年12月18日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 航空・防衛分野へ貢献できる点としては「高度なシミュレーションや解析、設計や製造技術のノウハウがある。エアラインや(機体メーカーなど)OEMがどういう開発をするか、ニーズを受け止めていきたい」と抱負を述べた。

 三菱重工の2024年4-9月期(25年3月期第2四半期)連結決算(IFRS)は、売上収益が前年同期比11.1%増の2兆2981億1300万円、事業利益が86.7%増の1884億3500万円、純利益が16.5%増の1071億2000万円だった。2025年3月期通期の業績予想は、売上収益が前期(24年3月期比)5.2%増の4兆9000億円、事業利益が23.9%増の3500億円、純利益は3.6%増の2300億円を見込む。

関連リンク
三菱重工業

三菱重工航空エンジン、防衛省向け事業を本体移管 25年4月(24年10月23日)
スペースジェット、三菱重工が旧三菱航空機の債権放棄 3月末に清算終了へ(24年9月27日)
日英伊の次期戦闘機、ファンボローで新モックアップお披露目「2025年は非常に重要な節目」(24年7月28日)
次期戦闘機の新会社「日本航空機産業振興」事業開始 SJAC・三菱重工出資(24年7月10日)
経産省の次世代国産機構想、三菱重工泉澤社長「次期戦闘機でリソースがタイト」(24年5月8日)
三菱重工「MSJ資産管理」解散 米試験機4機は解体済み(24年4月2日)
三菱重工、スペースジェット開発中止を正式発表(23年2月7日)
【独自】スペースジェット、開発中止決定 次期戦闘機に知見生かす(23年2月6日)
次期戦闘機、日英伊3カ国共同開発 F-2後継35年配備へ、米とは無人機開発(22年12月9日)
三菱重工、新社長に泉澤常務が昇格 宮永社長は会長に、MRJ当面主導(19年2月7日)

  • 共有する:
  • Facebook
  • Twitter
  • Print This Post
キーワード: