航空大学校の卒業生が起業したビジネスジェット(BJ)運航会社マイクロジェット(東京・新宿)は、12月にも2機目の双発ジェット機セスナC510「サイテーション ムスタング」を受領する。高橋良社長によると、2025年2月前後には就航できそうだという。また、11月25日に新オフィスへ移転した。
—記事の概要—
・“飛行機好きのおじさん”は西久保元社長だった
・試乗は1人5万円から
“飛行機好きのおじさん”は西久保元社長だった
現在はムスタングが1機(登録記号JA123F)で、パイロット2人と乗客4人が乗れる。2号機も同型機で12月8日に受領を予定しているといい、アビオニクスの一部が国土交通省航空局(JCAB)から承認を得る必要があるため、2月前後の就航になりそうだという。2号機の受領後は、やや大型の機体も含めて運航機材の拡充を検討している。
また、今年8月には海外の目的地へ運航する国際運航の認可をJCABから取得。パイロットの慣熟フライト後、台湾や韓国など近距離アジアへの運航を年明けから順次開始する見通し。
マイクロジェットは2023年1月設立で、同年10月から営業開始。航大を卒業した高橋社長と鬼澤健斗常務が、現会長の西久保愼一氏に「スカイマーク(SKY/BC、9204)の社長だったと知らず、“飛行機好きのおじさん”だと思ってTwitter(現X)でコンタクトした」(高橋社長)ところから始まった。西久保会長によると、2人はすぐにやってきたといい、短期決戦で会社を立ち上げた。
マンションの1室で起業した同社は、今回で4回目の引越。新オフィスは新宿住友ビル(西新宿2丁目)で、2023年夏から入居していた新宿4丁目の物件から移転し、会議室も設けた。現在は役員含めて16人、うち11人が訓練生も含むパイロットとなっており、2機運航できる陣容を整えたという。
試乗は1人5万円から
乗客が4人から20人程度乗れる小型ジェット機は、法人利用では「ビジネスジェット」、個人向けは「プライベートジェット」と呼ばれることが多く、どちらも同じサイズの機体を指しており、マイクロジェットも用途に応じて呼び名を使い分けているという。
プライベート需要では記念日の旅行やペットを連れた家族旅行などを、ビジネス需要では1日に多くの都市を移動する出張や、定期便のない時間帯の利用などのニーズに応じてきた。高橋社長によると、ペット同伴の旅行は人気商品になっている。
隠れた主力商品となっているのが、フェリーフライト(回航便)を活用した「トライアルフライト」。ビジネスジェットは乗客を目的地まで送り届けた後や、迎えに行く際など、片道は乗客乗せずに運航することが多い。
通常の運航では、羽田から新千歳までが片道約160万円、福岡だと170万円弱となるが、トライアルフライトの料金は1人5万円から8万円。西久保会長は「燃料代がまかなえている。お客さまを連れてきてくれる方もいる」と、運航コストの削減や新たな顧客獲得に役立っているという。
「InstagramなどのSNSに写真や動画を載せてくれるので、私たちが知らないところで機体が露出していて効果的だ」(西久保会長)と、認知度向上にもつながっている。
西久保会長は「飛んでこそ飛行機」と、運航会社の基本といえるフライト回数を増やすことが、ビジネスを軌道に乗せる上で重要だと強調した。
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