エアライン, ボーイング, 機体, 解説・コラム — 2024年10月31日 19:58 JST

ANAHD芝田社長、777Xは客室仕様変えず ボーイング遅延で26年受領へ

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 全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)の芝田浩二社長は10月31日、国際線の次世代フラッグシップであるボーイング777-9(777X)型機について、客室仕様は発注当初のまま受領する考えを示した。発注時は2021年度から受領予定だったが、ボーイングの品質問題や不具合で納入開始が5年程度遅れる見通しで、競合他社と比べて「手を付けられるところは怠らないようにしたい」と述べた。

ANAホールディングスが発注した777-9Xのイメージイラスト(同社提供)

—記事の概要—
21年度受領が26年に
「根こそぎ変える計画ない」

21年度受領が26年に

 777Xは、ボーイングが開発を進めている次世代大型機で、ANAも長距離国際線を中心に投入している777-300ERの後継機。メーカー標準座席数が2クラス395席の777-8と426席の777-9の旅客型2機種、最大積載量(ペイロード)118トンの貨物型777-8Fの計3機種で構成され、開発は777-9から進められている。

前回2022年のファンボロー航空ショーで飛行展示を終えて着陸し主翼端を折りたたんだ777-9の飛行試験初号機=22年7月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

パリ航空ショーで飛行展示を披露するボーイング777Xの飛行試験機=23年6月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 ANAHDは10年前の2014年に777-9を20機発注し、2021年度から2027年度に受領する計画だった。このうち2機は、2022年に777-8F貨物機へ発注変更。受領開始は777-9がボーイングの納入遅延で2026年、777-8Fは2028年以降を予定している。777-9は、当初の計画通りであれば機体がほぼ揃う時期から受領が始まることになる。

 芝田社長は、ボーイングの品質問題や16年ぶりとなるストライキの影響により、「2025年度のデリバリー機材は、777-9が2機、737-8(737 MAX 8)が2機、787が787-10と787-9合わせて7機。2025年度中のできるだけ早い時期にという思いで待っている」と説明。このうち、777-9の初納入は2026年に遅れることをボーイングのケリー・オルトバーグ社長兼CEO(最高経営責任者)が10月11日に明らかにしており、ANAHDの発注分も最短で2026年前半になる見通し。

「根こそぎ変える計画ない」

 ANAの777Xは、当初2021年度に就航する計画だったことから、シートは現在777-300ERに搭載している個室ファーストクラス「THE Suite」や初の個室ビジネスクラス「THE Room」相当になるとみられる。これらのシートは2019年7月に登場しており、777-9が2026年に就航した場合、7年が経過し、多くの航空会社がモデルチェンジの目安としている8年から10年といった時期に差し掛かってくる。

ANAの777-300ER個室ファーストクラス「THE Suite」=19年7月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ANAの777-300ER個室ビジネスクラス「THE Room」=19年7月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 一方、航空機のシートは耐空証明の取得など、設計を見直すとあらゆる認証を再取得する作業が生じるほか、シートメーカーではコロナの影響による人手不足の影響が残っている。このため、機体の受領が遅れても、航空会社がシートの仕様を大幅に見直すことは容易ではないが、競争環境が激化した場合、何らかの対応を迫られることになる。

 芝田社長は「機内の仕様も固まっているので、現時点でプロダクトを根こそぎ変える計画はない。しかし、他社の動向などをしっかり見ながら、手を付けられるところは怠らないような備えはしていきたい」との意向を示した。

 個室ビジネスクラスで先行するカタール航空(QTR/QR)も、777Xを発注済み。今年7月にロンドン近郊で開かれたファンボロー航空ショーで、現行シート「Qsuite(Qスイート)」の発展型「Qsuite Next Gen(Qスイート・ネクストジェン)」を発表している。



【4K】Boeing 777X 試験機の機内【パリ航空ショー】

 ボーイングの受注履歴によると、777Xの受注残は9月末時点で481機。エミレーツ航空(UAE/EK)が最多の205機を発注しており、ANAHDのほかカタール航空、シンガポール航空(SIA/SQ)、ルフトハンザ ドイツ航空(DLH/LH)、エティハド航空(ETD/EY)、キャセイパシフィック航空(CPA/CX)、ブリティッシュ・エアウェイズ(BAW/BA)、エア・インディア(AIC/AI)、カーゴルックス航空(CLX/CV)、エチオピア航空(ETH/ET)、シルクウェイ・ウエスト・エアラインズ(AZG/7L)が発注済みで、発注者が明かされていない機体が12機ある。

 また、31日にANAHDが発表した2024年4-9月期(25年3月期第2四半期)連結決算(日本基準)は、純利益が前年同期比13.3%減の807億7800万円。売上高が9.7%増の1兆995億8700万円、営業利益は16.5%減の1083億7400万円、経常利益は11.7%減の1123億8300万円となった。

 通期見通しは、補償獲得による営業外収益の増加で、経常益と純利益を4月26日の発表から100億円ずつ上方修正。売上高が前期(2
4年3月期通期)比8.0%増の2兆2200億円、営業益が18.2%減の1700億円、経常益が18.1%減の1700億円(見直し前は1600億円)、純利益は23.6%減の1200億円(同1100億円)を見込む。

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