エアライン, 空港 — 2024年5月20日 16:28 JST

ANA、空港車両のエンジンはずしEV化 廃車対象「ベルトローダー」再生

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 全日本空輸(ANA/NH)などを傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)は5月20日、空港内で飛行機の貨物室に手荷物を搭載する際に使う「ベルトローダー」を、ディーゼルエンジン車からEV(電気自動車)に改修し、報道関係者に公開した。ANAグループの全日空モーターサービス(ANAMS)が、成田空港で1994年から29年間使われて廃車対象になった車両を2年がかりでEV化したもので、今夏をめどに羽田空港で運用を始める見通し。

全日空モーターサービスがディーゼル車からEV化したベルトローダー=24年5月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
国内初のEV化
エンジン車と変わらない操作感

国内初のEV化

 ベルトローダーは、空港内のグランドハンドリング(グラハン、地上支援)業務に使用する「GSE(航空機地上支援車両)」と呼ばれる空港用特殊車両のひとつ。全日空モーターサービスは、ANAグループが使用しているGSEやPBB(搭乗橋)の整備・管理などを担っており、2022年に廃車対象となったベルトローダーのEV化に着手し、構造設計や電気回路の組み上げ、EV化で必要となるモーターやバッテリーなどの搭載、経年劣化した部位の板金修理や塗装を施して仕上げた。ANAによると、GSEのEV化は日本で初めてだという。

ディーゼル車からEV化したベルトローダーをお披露目する全日空モーターサービスの小暮龍也さん(中央)ら=24年5月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港で使用されるベルトローダー=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 今回改修したベルトローダーは、シンフォニアテクノロジー(旧・神鋼電機、6507)製で、従来は軽油を燃料とするディーゼルエンジン車だった。EV化する際にエンジンや燃料タンクなどを取り外し、新たにリチウムイオンバッテリーや走行モーター、荷役モーター、減速機、ECU(上位コントロールシステム)などを搭載した。

 充電は最短1時間。1回の充電で、羽田空港の1日分の運航便に使用することを想定している。また、既存のベルトローダーは平均20年から25年程度で廃棄しているが、今回のEV化で15年程度は運用を延長できるという。

 塗装のデザインは、ANAの環境に配慮した活動を表現した「ANA Future Promise Jet(ANAフューチャープロミスジェット)」と同じ久世迅氏が担当。デザインに連続性を持たせた。

全日空モーターサービスがエンジンなどを取り外してEV化したベルトローダー=24年5月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

全日空モーターサービスがディーゼル車からEV化したベルトローダー=24年5月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ベルトローダーのEV化を説明する全日空モーターサービスの小暮龍也さん(左)と内野徹さん=24年5月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

エンジン車と変わらない操作感

 全日空モーターサービスの辻村和利社長は「1年目は試行錯誤だった。今年2月27日に通電に成功し、3月7日に敷地内の走行や荷役部分の稼働に成功した。今後は実使用に向けた実験をし、夏には空港で運用できるようにしたい」と語った。

全日空モーターサービスがディーゼル車からEV化したベルトローダー=24年5月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

ベルトローダーのEV化を説明する全日空モーターサービスの辻村和利社長=24年5月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 今回の改修は、一般社団法人電気自動車普及協会などの協力を得て、自社で設計や改修を実施。「車両のレストア作業や板金、塗装をすべて自社でできる。今後EVを整備する上で、どれだけEVを知ってメインテナンスができるかが重要だ」(辻村社長)と、EVのGSEが今後増えた際の整備能力向上にもつなげたいという。

 EV化に携わった小暮龍也アシスタントマネジャーは「仕様の数値や操作感もエンジン車と変わらないようにした」と話す。小暮さんとともに開発を担当した内野徹さんによると、充電器やBMS(バッテリーマネジメントシステム)の状態を監視するECU(上位コントロールシステム)は特注品を使用したが、モーターは市販品の中から選定したという。ECUはタジマモーターコーポレーション(東京・中野区)製、メインバッテリーは東芝製、モーターは米プレストライト製などを採用した。

 ANAグループが使うGSEは、全国で約1万4000台で、種類は40車種にのぼる。一方、GSEの多くは輸入車両で、世界的な航空需要の急回復で新車価格が高騰し始めているという。辻村社長は「1台改造して魅力あるビジネスだと感じたので、成長の可能性をしっかり育てていきたい。今年度は追加で2台改造したい」と話した。

*写真は24枚。

全日空モーターサービスがディーゼル車からEV化したベルトローダー=24年5月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

全日空モーターサービスがディーゼル車からEV化したベルトローダー=24年5月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

全日空モーターサービスがエンジンなどを取り外してEV化したベルトローダー=24年5月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

EV化したベルトローダーのメカニズム(ANA提供)

EV化したベルトローダーのメカニズム(ANA提供)

全日空モーターサービスがディーゼル車からEV化したベルトローダー=24年5月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

全日空モーターサービスがディーゼル車からEV化したベルトローダー=24年5月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

全日空モーターサービスがディーゼル車からEV化したベルトローダー=24年5月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

全日空モーターサービスがディーゼル車からEV化したベルトローダー=24年5月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

全日空モーターサービスがディーゼル車からEV化したベルトローダー=24年5月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

全日空モーターサービスがディーゼル車からEV化したベルトローダー=24年5月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

全日空モーターサービスがディーゼル車からEV化したベルトローダー=24年5月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

全日空モーターサービスがディーゼル車からEV化したベルトローダー=24年5月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

全日空モーターサービスがディーゼル車からEV化したベルトローダー=24年5月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

全日空モーターサービスがディーゼル車からEV化したベルトローダー=24年5月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

全日空モーターサービスがディーゼル車からEV化したベルトローダー=24年5月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

全日空モーターサービスがディーゼル車からEV化したベルトローダー=24年5月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

全日空モーターサービスがディーゼル車からEV化したベルトローダー用の充電器(中央)=24年5月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

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