エアライン, 空港, 解説・コラム — 2024年5月14日 14:50 JST

ANAとJAL、グラハン7資格を相互承認 地方10空港でマーシャリングや牽引など

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 全日本空輸(ANA/NH)と日本航空(JAL/JL、9201)は5月14日、空港でのグランドハンドリング(グラハン、地上支援)業務の資格を相互承認する取り組みを、仙台空港で報道関係者に公開した。両社の業務委託先が同じ地方10空港を対象に今年4月からスタートした制度で、全国的に人手不足が課題となっているグラハン業務の資格を相互承認することで、有資格者の早期養成や業務効率化などにつなげ、グループの垣根を越えた協力を深める。

仙台空港でJALのビブスを着用してANA便をスポットへ誘導する日通の千葉晃史さん。グラハン資格の相互承認でJALのマーシャリング資格を取得した=24年5月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
基本7資格が対象
OJTなど短縮
業界団体「空ハン協」発足

基本7資格が対象

 ANAとJALが資格を相互承認する業務は、機体の牽引や誘導、貨物・手荷物の搭降載・搬送など「ランプハンドリング」と呼ばれる業務。およそ100あるグラハンの資格のうち、基礎的なものを中心に7資格「1. トーイングトラクター」「2. ベルトローダー」「3. 旅客搭乗橋(PBB)」「4. 安全監視・駐機」「5. 航空機誘導(マーシャリング)」「6. プッシュバック/7.トーイング」を対象とした。

仙台空港でANAのビブスを着用してJAL便をスポットへ誘導する日通の千葉晃史さん=24年5月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 トーイングカー(牽引車)で機体を動かすプッシュバックとトーイング、PBB以外は、グラハン業務を始めたばかりの人も資格を取得することから、早期育成が期待される。ANAによると、今後は対象資格の拡大を検討していきたいという。

 相互承認により、ANAとJALで1年ずつ計2年かかっていた作業資格の取得期間を1年に短縮できるなど、早期に両社のグラハン業務に従事できるようになる。相互承認する空港は、利尻、根室中標津、函館、秋田、仙台、新潟、岡山、徳島、高知、鹿児島の地方10空港。両社の委託先が同じであることから選ばれた。

 ランプハンドリングの作業資格は航空会社ごとに定められており、同じ作業内容でも各社の資格が必要。両社の運航便を取り扱うグラハン事業者は、訓練日数の大幅な削減につながる。

仙台空港でマーシャリングを報道関係者に実演する日通の千葉晃史さん=24年5月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

OJTなど短縮

 仙台空港で、ANAとJALのグラハン業務を担っているのは日本通運。日通の仙台空港総代理事業所営業2課の鈴木浩司課長によると、仙台空港のグラハン業務では30資格が必要になるといい、このうち7資格の相互承認が始まった。

仙台空港初のANAとJALのグラハン資格相互承認でJALのマーシャリング資格を取得した日通の千葉晃史さん=24年5月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

仙台空港でANAとJALのグラハン業務を受託している日通仙台空港総代理事業所の鈴木浩司課長=24年5月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 14日は、前日にJALのマーシャリング資格を取得したばかりの日通の千葉晃史さんが、仙台空港で初となる相互承認による有資格者として、JAL傘下のジェイエア(JAR/XM)が運航する伊丹発仙台行きJL2203便(エンブラエル190型機、登録記号JA250J)と、ANAの伊丹発仙台行きNH735便(ボーイング767-300ER型機、JA615J)をスポット(駐機場)へ誘導した。

 入社8年目の千葉さんは、相互承認制度が始まる前にトーイングトラクター、ベルトローダー、安全監視・駐機の3資格は、ANAとJALのものを取得済みで、マーシャリングはANAのみ保有。仙台空港で初となる相互承認制度を用いて、JALのマーシャリング資格を取得した。

 千葉さんは「効率的に資格が取れ、仕事の幅広がる」と話しており、今後はプッシュバックの資格を取得したいという。マーシャリングの場合、細かな誘導のサインが両社で少し違うという。

仙台空港に到着し手荷物を降ろすジェイエアの伊丹発JL2203便=24年5月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

仙台空港に到着し貨物コンテナを後方貨物室から降ろすANAの伊丹発NH735便=24年5月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 これまで日通では、ANAとJAL両方のハンドリング業務を担当する人は、重複する内容なども含めて資格を1社ずつ取得していたが、相互承認により一部を省略できるようになった。日通では、ANAの資格を取得後にJALの資格を取るようにしており、マーシャリングの場合は座学を受講後、JALの規程で定めている実技3時間とOJT(実地訓練)15便分を短縮できたという。

 鈴木課長は「7つの資格以外に、両社の初期教育も相互承認が進んで欲しい」と話していた。

業界団体「空ハン協」発足

 国土交通省は2023年6月に「空港業務の持続的発展に向けたビジョン」を公表。地方空港でグラハン事業者の効率的な人員体制の構築を進めており、ANAとJALの相互承認もその一環で、同年11月24日に相互承認の検討を始めたと発表した。

 また、同年8月25日には業界団体「空港グランドハンドリング協会(AGHA、空ハン協)」を設立。人手不足が課題となる中、系列の垣根を越えて空港業務を安定的に発展させていくことを目的に立ち上げた。

関連リンク
全日本空輸
日本航空
空港業務の持続的発展に向けたビジョン(国交省)

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