全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)の芝田浩二社長は、2024年度末のグループ機材数が前年度末から3機増の279機になると発表した。品質問題などが多発しているボーイングに対しては、「困難を克服してくれると思っている」として、現時点で機材発注を見直す考えはないとの意向を示した。
—記事の概要—
・芝田社長「克服してくれると思う」
・スペースジェット代替やDash 8後継
芝田社長「克服してくれると思う」
4月26日の2024年3月期通期決算会見後に開かれたアナリスト向け説明会の資料によると、2024年度末となる2025年3月末には、ANAブランドが3機増え、グループのLCCであるピーチ・アビエーション(APJ/MM)は現在の35機を維持。今年3月末時点の機材数は、ANAが241機とピーチが35機の計276機となっており、2月9日から傘下のエアージャパン(AJX/NQ)が運航を始めた新ブランド「AirJapan」で使用しているボーイング787-8型機2機は、ANAの機材に含まれる。
長距離国際線機材777-300ERの後継で、ボーイングが開発中の次世代大型機777Xの旅客型777-9は、2025年度に受領開始を予定。2014年に20機を確定発注したが、うち2機を2022年に貨物型の777-8Fに発注変更している。777-8Fも開発中で、2028年以降の受領を予定している。
2022年に正式契約を結んだ小型機737 MAX 8(737-8)も、2025年度に初受領する見通し。確定発注20機、オプション10機の最大30機で、現行の国内線機材737-800の後継機として導入する。
一方、ボーイングでは品質問題などが幾度となく発生しており、航空会社やリース会社への引き渡しに遅延が生じている。ANAHDが2020年2月に追加発注した787のうち、超長胴型となる787-10の国内線仕様機も、2023年秋から導入する計画だったが、納入が遅れて現地時間3月17日に初号機(登録記号JA981A)を受領し、同月27日に就航した。4月に入り初期受領分4機の787-10は、すべて就航している。
芝田社長は「機材選定はこれまでの方針を変えるものではない。ボーイングなりに抱えている事情はあり、この困難を克服してくれると思っている」と述べ、当面は静観する構えを示した。
コロナ前2019年度のANAグループの機材数は、ANAが267機、ピーチが33機の計300機。ANAHDは、2023年2月15日に発表した2023-2025年度ANAグループ中期経営戦略で、機材数を2025年度にコロナ前とほぼ同水準、2030年度までにコロナ前を上回る規模に拡大する計画を示しており、2025年度はANAが250-255機、ピーチが35-40機で計290-295機となる見込み。
スペースジェット代替やDash 8後継
一方、三菱重工業(7011)が2023年2月7日に開発中止を正式発表したジェット旅客機「三菱スペースジェット(MSJ、旧MRJ)」に代わる機材は選定継続中で、新たな発表はなかった。MSJは持株会社化前のANA(現ANAHD)が、ローンチカスタマーとして2008年3月27日に確定15機とオプション10機の最大25機を発注した。
すでにANAHDは、2017年度にデ・ハビランド・カナダ(旧ボンバルディア)のターボプロップ(プロペラ)機Dash 8-400型機(旧称DHC-8-Q400、1クラス74席)を3機追加導入し、その後737-800(2クラス166席)をリースで4機追加導入するなど、数年前からスペースジェットの納入が計画通りに始まらないことを織り込んだ経営計画を立てている。
しかし、24機あるDash 8(旧Q400)も昨年2023年11月1日で就航20周年を迎え、地方間路線を運航するリージョナル機の後継機検討が続いている状況だ。
70席クラスのDash 8や、90席クラスのスペースジェットと同規模の機材となると、仏ATR製ターボプロップ機ATR72-600(1クラス70席程度)、ブラジルのエンブラエルの次世代リージョナルジェット機E190-E2(同106-114席程度)、エアバスがボンバルディアが開発した小型旅客機「Cシリーズ」を買収し名称変更したA220-100(旧CS100、100-130席)などがある。
一方、2023年6月に福澤一郎副社長(当時)は「発注当時と事業環境や市場環境も異なる。現有機材との親和性を考慮して選定を行っていく」と説明しており、MSJやDash 8と同規模の座席数や航続距離の機体に限定せず、前広に選定を進めていく方針だ。
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