ANAホールディングス(ANAHD、9202)傘下のエアージャパン(AJX/NQ)は2月6日、新ブランド「AirJapan」で運航するボーイング787-8型機の初号機(登録記号JA803A)を成田空港で報道関係者に公開した。1路線目の成田-バンコク(スワンナプーム)線に、9日から投入する。
—記事の概要—
・シートピッチ広めの全席エコノミー
・7割が訪日客
シートピッチ広めの全席エコノミー
AirJapanは、FSC(フルサービス航空会社)のANA、LCC(低コスト航空会社)のピーチ・アビエーション(APJ/MM)に続くANAグループ第3のブランド。アジア・リゾート路線をグループ内で担う現在のエアージャパンを、FSCとLCCの長所を併せ持つ“いいとこ取り”の航空会社に衣替えし、アジアからのインバウンド(訪日客)をメインターゲットに据えた。
1路線目のバンコク線を週6往復で2月9日に開設後、2路線目の成田-ソウル(仁川)線を週5往復で22日に、3路線目の成田-シンガポール線を週5往復で4月26日に就航させる。4月29日からはソウル線を、30日からバンコク線をそれぞれ週7往復(1日1往復)のデイリー運航に増便する。
座席数は1クラス324席でエコノミークラスのみ。シートピッチは海外のFSCのエコノミークラスと同等となる32インチ(約81センチ)で、東南アジアのLCCで主流の28-29インチより広くした。ANAの国際線用787は34インチ、国内線用は31インチで、グループ内では中間のピッチとなる。
リクライニングは深めにし、充電用USB端子はType-Aに加えて最新のType-Cにも対応した。個人用モニターを設置せずタブレットホルダーを設け、乗客が自分のスマートフォンやタブレットを置いて、映画などを鑑賞できるようにした。
AirJapan仕様に改修前のJA803Aは、2クラス240席(ビジネス42席、エコノミー198席)仕様だった。L2-R2ドア付近にあったバーコーナー、L3-R3ドア付近の中央ギャレーを撤去し、座席を設置するスペースに充てた。
L2-R2ドア付近にはパーティションがあり、最前方「Aコンパートメント」と、L2-R2ドアからL3-R3ドアまでの「Bコンパートメント」を区切っているが、L3-R3ドア付近は何もなく、「Cコンパートメント」最前方30列目の座席は足もとがかなり広い。
ブランドコンセプトは「Fly Thoughtful」。気遣いや思いやり、やさしさといった意味を込めた。日本のエアラインであることや、日本品質を伝えるためこのブランド名にしたという。ブランドカラーは「藍色」と「曙色」の組み合わせで、藍色は藍染めから「丁寧な技法」、曙色は春の日の出の色として「心地よい暖かさ」を表現した。
7割が訪日客
エアージャパンの峯口秀喜社長は「初便は満席で、2月の予約率はバンコクが約90%、ソウルが約80%で好調だ。バンコク線は7割がインバウンドで、我々の目標を達成した。ソウル線は日本からの利用が便利な時間だ」と現状を説明。「シートピッチが広く、FSCのエコノミーと比べて遜色ない。ANAブランドの便を運航している客室乗務員が乗務する」と、これまでANA便に乗務してきた同社の客室乗務員が、新たなAirJapan便と双方に乗務することから、シートピッチの広さだけでなく、FSCのサービスが身についた客室乗務員による、LCCの上をゆく“おもてなし”を訪日客に提供できるという。
一方、東京-バンコク間は東南アジアのFSCやLCCも多くの便を運航しており、特にLCCとは今後価格勝負になる可能性がある。峯口社長は「短い距離だとお客さまは安いところを使おうとすると思うが、中距離は片道5-7時間かかるので少々高くても広い席を選ぶだろう」と、低価格競争ではなく快適性で勝負していく姿勢を示した。
初の就航地バンコクでは、SNSやイベントを通じて就航前からPR。同社が運営するSNSがFacebookなのは、タイで利用者が多いためだという。また、客室乗務員が従来からのANA便乗務でバンコクを訪れた際、現地の流行などの情報を収集し、マーケティングに生かしているという。
AirJapanの運賃は、有料オプションを含まない「シンプル」、1500円までの事前座席指定と預入手荷物23キロまでが1個のオプション2種類が含まれる「スタンダード」、3000円までの事前座席指定と預入手荷物23キロまでが2個、一部を除く機内食のオプション3種類が含まれる「セレクテッド」の3種類を設定した。
成田-バンコク線の場合、夏ダイヤの片道運賃は、シンプルが1万7000円から、スタンダードが2万700円から、セレクテッドが2万5300円から。2歳以上6歳以下の小児運賃は、シンプルが8000円、スタンダードが10590円、セレクテッドが1万5300円で、2歳未満はいずれも5000円。燃油サーチャージは徴収しない。
オプションとなる機内食は、日本の良さや地域の魅力が伝わるものを目指し、事前予約が必要なメニューと予約不要のものを用意。エアージャパンによると、訪日客の味の好みに寄せるのではなく、日本の航空会社が出す機内食としての味付けにこだわったという。峯口社長によると、バンコク線は約2割の乗客が機内食を注文しているという。
機内販売は19種類用意。AirJapanのブランドカラーをイメージしたオリジナルのアロマエアミストや純植物性石けん、AirJapanと川越氷川神社が共同制作した機内限定販売のオリジナル御朱印帳などをそろえ、1-9列目の前方座席の乗客には、川越の本格焼酎を限定販売する。
また、エアージャパンはANAの国際線のうち、アジア・リゾート路線を担っており、今後はANAブランド便とAirJapanブランド便の両方を運航することになる。このため、客室乗務員もANAとAirJapanの制服を乗務に応じて着用する。
AirJapan仕様の787-8は、2025年度までに6機体制とする計画で、すべてANAが運航していた機体を改修。2機目(JA801A)は4月に受領する見込み。
*写真は19枚。(運航スケジュールは写真下に掲載)。
運航スケジュール(24年2月9日から24年3月30日)
NQ1 成田(17:55)→バンコク(23:15)運航日:月水木金土日
NQ2 バンコク(00:15)→成田(08:10)運航日:月火木金土日
関連リンク
AirJapan
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機内食やサービス
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・AirJapan、2路線目は成田-ソウル 24年2月就航、ANA新ブランドで週5往復(23年11月15日)
・AirJapan、成田-バンコク4/30増便 1日1往復に(23年12月13日)
・ANA新ブランドAirJapan、成田-バンコク24年2月就航 最安片道1.5万円(23年8月2日)
シートや制服発表
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