日本航空(JAL/JL、9201)は1月4日、羽田空港で2日に起きた海上保安庁機(MA722、ボンバルディアDHC-8-Q300、登録記号JA722A)と札幌(新千歳)発羽田行きJL516便(エアバスA350-900型機、JA13XJ)が衝突炎上した事故を受け、A350の全損により約150億円の損害が生じる見込みだと発表した。営業損失として計上予定で、航空保険が適用される見込みだという。2024年3月期通期連結決算への影響は精査中としている。
*13号機の代替機は25年度下期受領へ。記事はこちら。
2日のJL516便は、新千歳空港を午後4時15分(定刻午後3時50分)に出発し、午後5時47分に羽田のC滑走路(RWY34R)へ着陸。直後に海保機と衝突し、機体が炎上した。乗客367人(幼児8人含む)と乗員12人(パイロット3人、客室乗務員9人)の計379人が搭乗していたが、全員が3カ所の出口から緊急脱出した。左右4カ所ずつ計8カ所あるドアのうち、前方2カ所(L1・R1)、後方1カ所(L4)を使って脱出した。残り5カ所は炎が見えるなどの理由で、客室乗務員が使用不可と判断した。
3カ所のうち、前方2カ所は機長による脱出指示で、後方は機内インターホン・アナウンスのシステムが使えなく、煙により前方とのやり取りが困難になったことから、L4ドアを担当する客室乗務員が周囲の状況を確認後、開放する判断を下して脱出に使用した。午後5時47分に着陸後、海保機と接触してから滑走路を約1キロほど移動したところで機体が止まり、午後6時5分には全員の脱出を確認した。
JALは3日、JL516便は貨物と郵便は積んでいなかったものの、乗客の手荷物が約200個、空調がきく貨物室でのペットの預かりが2件あったと明らかにした。手荷物は捜査や調査の終了後の対応となり、ペットは人命救助を最優先した結果、救出に至らなかった。
乗客2人が打撲などのけが、体調不良により病院で診察を受けた乗客が13人。パイロットに聞き取りしたところ、管制官からの着陸許可を得て復唱後、羽田のC滑走路に進入し、着陸操作を実施したという。機長をはじめ、3人のパイロットは海保機を視認できていなかったとしている。また、国土交通省が公表した管制との交信記録によると、JL516便に着陸許可は出ていたが、海保機に対してはC滑走路手前の「C5」停止位置までの地上走行は許可されていたものの、滑走路進入や離陸の許可は出ていなかった。
事故を受け、国の運輸安全委員会(JTSB)は調査官6人を現地へ派遣。事故から一夜明けた3日は、JTSBによる調査や警察の捜査、消防による検証などが行われた。4日もC滑走路の閉鎖は続き、残り3本の滑走路(A・B・D)で運用する。
炎上したA350-900はJALが保有する同型機の13号機で、座席数は3クラス369席(ファーストクラス12席、クラスJ 94席、普通席263席)。2021年11月10日にエアバスから引き渡され、羽田には同月13日午後3時30分に到着し、同月18日に就航した。
2024年3月期通期の連結業績予想は、売上収益が前期(23年3月期)比22.4%増の1兆6840億円、本業のもうけを示す「EBIT(財務・法人所得税前利益)」は2.0倍の1300億円、純利益は2.3倍の800億円を見込む。
*写真は14枚。
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