日本とベトナムが外交関係を樹立し、今年の9月21日で50周年を迎えた。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、日越間の旅客需要も大きく落ち込んだが、国営のベトナム航空(HVN/VN)は今夏の段階で2019年比8割以上の水準まで旅客数が回復しており、日本路線は定期便11路線のうちダナン-関西線以外の10路線は再開済みで、同路線も年末年始に臨時便を運航する。
首都ハノイからは成田、羽田、中部、関西、福岡の5路線、南部の商都ホーチミンからは成田、関西、名古屋、福岡の4路線が就航している。成田や羽田にはボーイング787-9型機(3クラス274席)やエアバスA350-900型機(3クラス305席)が乗り入れ、2022年からは787-10(2クラス367席)を投入している便もある。
今年9月には、737-8(737 MAX 8)を50機発注しており、航空会社としての規模拡大を着実に進めている。私はこれまでホーチミンには何度か取材で出向いていたが、ハノイはIATA(国際航空運送協会)が9月に開催した第1回WSOC(世界安全運航会議)で初めて訪れた。この際、ベトナム航空の787-9でハノイ入りし、帰路は航空券発券時は787-9だったがA350-900に変更となり、同じ路線で2機種に搭乗する機会を得た。ハノイ-羽田線は787-9による運航を基本としているが、時折A350-900が投入されている。
787もA350も低燃費・低騒音の機材で、商業運航を始めた時期も比較的近い。2機種を乗り比べた結論としては、機種の違いよりもシートの違いの方が大きいと感じた。もし、まったく同じシートで比較すると、また違った感想を抱くかもしれない。
—記事の概要—
・787-9とA350-900は15年初受領
・歩道を爆走するスクーター
787-9とA350-900は15年初受領
ベトナム航空は2015年6月30日にA350-900を初受領し、787-9は同年7月に受領を開始した。ビジネスクラスで比較した場合、座席数はA350-900が29席、787-9が28席とほぼ同じとなっており、個人用モニターはどちらも15.4インチで、フルフラットシートを採用している。
座席の配列はA350-900がスタッガード、787-9がヘリンボーンと違いはあるものの1-2-1席配列である点は共通しており、客室の雰囲気も似ている。2010年代に入り、上級クラスで採用する航空会社が増えている中央席上には手荷物収納棚を設けないレイアウトのため、空間が広々としている。
では、羽田からハノイのノイバイ国際空港へ向かうVN385便のサービスはどのようなものだろうか。ベトナム航空は航空連合のスカイチームに加盟しているが、羽田空港でチェックインすると全日本空輸(ANA/NH)のラウンジに入室できるバウチャーを係員から手渡された。ベトナム航空は全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)と2016年5月28日に資本・業務提携を締結しており、コードシェア(共同運航)も実施していることから、アライアンスよりも個別の提携関係のほうが強固ということだろう。
搭乗は左側最前方のL1ドアから。前述のように中央に手荷物収納棚がないため、機内で窮屈さを感じない。ベトナム航空というと民族衣装のアオザイを着た女性客室乗務員のイメージが強いが、白いワイシャツ姿の男性客室乗務員が多い印象を受けた。
接客は男女を問わずほどよい距離感のため、日本人でも旅慣れた人は過ごしやすいのではないだろうか。日系と欧州系の接客の中間といった感じで、約5時間のフライトだが起きているとドリンクを飲むか聞いてくれるので、自分から客室乗務員に声を掛けづらいと感じている人でも、飲みたいものを飲んで過ごせるだろう。機内食は洋食を選び、メインはビーフを頼んだが、柔らかくておいしく、キノコやクリームを用いたスープもおいしかった。
羽田からシンガポールが7時間30分ほどなので、約5時間のハノイはあっという間だ。搭乗のお礼を述べる機内アナウンスが終わると客室乗務員たちは一礼し、客室内の最終確認に入った。
歩道を爆走するスクーター
初のハノイには現地時間午後7時40分ごろ到着し、空港からホテルまでは配車アプリ「Grab(グラブ)」を使った。ハノイでの取材は翌日と翌々日の2日間、両日とも朝から晩まで取材なので、ほかの取材と同様にホテルと会場の往復しかできなかったが、夕方の帰宅ラッシュになると、バスや自家用車で渋滞する車道を避け、無数のスクーターが歩道を爆走するといった、街が成長していることをダイレクトに感じられる、活気ある光景を目にすることが多かった。
カタールのドーハやトルコのイスタンブール、タイのバンコク、ポルトガルのリスボンなど、コロナ後も各地を訪れているが、歩道をスクーターが大挙して走ってくる衝撃的な街はほかになかった。日ごろ停滞感を感じる東京都心部と比べ、東京もこうなって欲しいとは思わないものの、明らかに勢いを感じた光景だった。
ホテルで食べたフォーがとてもおいしかったことと、眼前に迫り来るスクーターに圧倒されたハノイだったが、ホテルを早朝に出発し、ノイバイ空港の第2ターミナルに着いた。国際線が乗り入れるターミナルだが、PBB(搭乗橋)のある搭乗口は14カ所と、そこまで大きくはない。保安検査場や搭乗口がある3階からエスカレーターで4階に上がると、ベトナム航空のロータスラウンジがある。木調で開放感があるが、そこまで大規模ではないので、出発便が重なる時間帯は早めに入室しないと混雑しそうだった。
そして、復路はA350-900での帰国となった。前述のように、787とA350は機体そのものが商業運航を開始した時期が近く、ベトナム航空で導入した時期もほぼ同じであることから、2機種の違いはシートの使い勝手の好みといったところだ。私個人としては、同世代のシートながら787のほうが使い勝手は良い印象だった。
唯一気になった機内インターネット接続サービスも、順次機体の改修が進んでいるとのことで、さらなる利便性向上が期待される。2024年3月にはハノイ-鹿児島間のチャーターが計画されており、将来的な定期便化を見据えている。コロナ後の需要回復に合わせ、日越間の往来もさらに活気づくだろう。
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