エアライン, 解説・コラム — 2023年9月25日 11:55 JST

JALはなぜ使用済みコーヒー粉でジンを作ったのか 羽田で年1.8トン、香り付けに

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 日本航空(JAL/JL、9201)と傘下のJALUX(ジャルックス)は、コーヒー粉を再利用したクラフトジン「Re FLY(リフライ)」を11月から販売する。羽田空港の国内線ラウンジから出るコーヒー抽出後のコーヒー粉を、蒸留酒の風味付けに使用する素材「ボタニカル」の一つとして用いたもので、販売に先駆けて機内やラウンジでも9月から順次提供を始めた。

使用済みコーヒー粉を香り付けに再利用したクラフトジン「Re FLY」を手掛けるJALの吉田さん=23年9月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 コロナ影響後、JALは非航空系事業に力を入れているが、なぜコーヒー粉を再利用したジンなのか。担当するJALの吉田結アシスタントマネジャーに聞いた。

—記事の概要—
どうする?使用済みコーヒー粉
地域の課題解決に応用も

どうする?使用済みコーヒー粉

 JALの羽田空港のラウンジでは、年間1.8トン近くの使用済みコーヒー粉が出るという。吉田さんはJALで非航空系事業を手掛けるマイレージ・ライフスタイル事業本部のライフ・コマース事業部に所属し、2022年度から自社が出す廃棄物を見直していく中で、コーヒー粉の活用法としてジンにたどり着いたという。

JALが11月から販売するクラフトジン「Re FLY」。ラベルは暫定版だという=23年9月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 「ESG(環境・社会・企業統治)の観点で、JALが提供するサービスからどのような廃棄物が出ているかを見直したところ、改めて気づいたことがありました」と、廃棄物を精査していく中で、大量に出るコーヒー粉を再利用できないかを考え始めた。

 いくつかの再利用案が採用され、具体的な取り組みを進める中、酒粕を使ったクラフトジンなどを手掛ける蒸留ベンチャー企業、エシカル・スピリッツ(東京・台東区)と知り合う。アイデアの中で一番早く具現化できたのが今回のジンで、コーヒー粉を再利用した商品の第1弾になった。

 ジンのテーマは「洗練された和」で、名称はラウンジで抽出後のコーヒー粉の再利用という意味を込めた「Re」と、改めて大きく空へ羽ばたいていく意味で「Re FLY」と名づけた。アルコール度数は47%で、原酒には秋田県の地酒「飛良泉」が酒粕を蒸留して作った「粕取り焼酎」を使用。CO2(二酸化炭素)排出量の削減率「デカボスコア」で、28%削減した商品になったという。

 今後はジン以外にも、コーヒー粉を再利用した取り組みを進めていく。

地域の課題解決に応用も

 Re FLYは11月から販売するが、先行して9月にビジネスクラスやラウンジで期間限定提供された。JALはニューヨークの国連本部で、4年に一度のSDGサミットが18日と19日の2日間開催されるのに合わせ、14日から20日までの羽田発ニューヨーク行きJL6便で「サステナブル・チャレンジフライト」を実施。代替航空燃料「SAF(サフ)」やカーボンクレジットの利用などでCO2(二酸化炭素)排出量実質ゼロを実現した。このフライトのビジネスクラスが、Re FLY初の機内提供となった。

羽田空港を出発するJALのサステナブル・チャレンジフライト初便となったニューヨーク行きJL6便=23年9月14日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 11月1日からは、羽田と成田のファーストクラスラウンジ内のJAL’s SALONと、羽田-ニューヨーク線のビジネスクラスでRe FLYを提供するほか、JALの通販サイト「JALショッピング JAL MALL店」などでも販売を始める。容量は375ミリリットル瓶で、税込価格は3900円(送料別)となる。

 現在のラベルは暫定的なもので、11月の発売に合わせて正式なデザインを取り入れるという。機内やラウンジでの提供はなくなり次第終了するが、吉田さんは「定番商品化していきたいです」と話していた。

 Re FLYはまだ始まったばかりのプロジェクトだが、蒸留酒の風味付けに使用する「ボタニカル」としてコーヒー粉を再利用したことを、今後は地域活性化にも役立てられないかと、吉田さんは考えている。廃棄される使用済みコーヒー粉の活用手段として、まず自分たちがジンを作ってみた経験を生かし、廃棄される果物や野菜などをボタニカルに使えないかを検討していく。

 農産品は検品などの過程で廃棄が出てしまうことから、地域の課題解決を進めていく上で、Re FLYを商品化したプロセスやノウハウを地域活性化に役立てる、ということだ。

 非航空系事業を強化するのは、実際にはさまざまなハードルを超えていかなければならない。今回のRe FLYは、ラウンジで発生した使用済みコーヒー粉の活用にとどまらず、地域が廃棄物削減に取り組む際、新たなアイデアの出発点にもなりそうだ。

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JALショッピング(11月から販売)
日本航空
エシカル・スピリッツ

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