国際線ファーストクラス、初の国内線F扱い 特集・JAL 777-300ER羽田-福岡投入の狙い

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 日本航空(JAL/JL、9201)の次世代国際線フラッグシップ、エアバスA350-1000型機の全容がまもなく明らかになる。現行のボーイング777-300ER型機の後継で、同数の13機を順次導入していく。

777-300ERのファーストクラスを紹介するJALの客室乗務員=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 JALが長距離国際線機材を刷新するのは19年ぶり。1路線目の羽田-ニューヨーク線には11月下旬に就航する見通しで、正式な就航日や機内インテリア、機内サービスなどは10月2日に発表を予定している。

羽田-福岡線のサービスは通常の国内線ファーストクラスと同じだが国際線機分を味わえそうだ。写真は国際線ファーストクラス=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 これに合わせて、JALは羽田-福岡線に777-300ERを冬ダイヤ初日10月29日から投入する。国際線機材が国内線を飛ぶことは珍しくないが、今回はファーストクラス席を国内線ファーストクラスとして販売するのがポイント。JALによると、2007年12月1日にサービスを開始して以来、国際線のファーストクラス席を国内線ファーストとして販売するのは、16年間で初めてだという。

 JALはなぜこのタイミングで、777-300ERを福岡線に投入するのだろうか。

—記事の概要—
住み心地視点のファーストクラス
28年度ごろに全機そろうA350-1000

住み心地視点のファーストクラス

 JALによると、A350-1000が就航することで、777-300ERの運用に若干余裕が出るといい、国内線の混雑時間帯の運航品質向上が主な目的。冬ダイヤの羽田-福岡線は1日17往復で、777-300ERを投入するのは羽田午前7時5分発JL305便と、福岡午前10時10分発のJL308便の1日1往復となる。サービス面に目が行きがちだが、運航品質の向上を考えた結果だという。

JALの777-300ER ファーストクラス=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 座席数は4クラス244席で、ファースト8席、ビジネス49席、プレミアムエコノミー40席、エコノミー147席。今回の国内線投入では、ファーストを国内線ファーストクラス、ビジネスをクラスJ、プレエコとエコノミーを普通席として3クラスで販売する。A350-900など国内線機材による運航便と異なるのはシートのみで、機内サービスは同じだ。

 ファーストクラスのシート名は「JALスイート」。配列は1-2-1で、ベッド長は約199.4センチ、ベッド幅は最大約84センチ。木目調のデザインで、個人用モニターは23インチと大型のものを採用している。

 センターコンソールやテーブルは家具のような質感で、書斎や寝室のような空間を目指した。JALではシートの居住性を超え、“住み心地”という視点で開発を進めた。

JAL 777-300ERのファーストクラス=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JAL 777-300ERのファーストクラス=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 777-300ERは、ジャンボの愛称で親しまれた747-400の後継機として、2004年7月1日に就航。エンジンが2基の「双発機」が初めて長距離国際線にも進出した。現在の客室仕様「スカイスイート」は2013年1月9日に改修初号機(登録記号JA731J)が就航し、13機目となる改修最終号機(JA741J)は2014年7月26日に就航した。

 これまでも777-300ERは、国内線の成田-伊丹線や羽田-中部線などに入っていたが、ファーストクラス席はクラスJとして扱われることはあっても、国内線ファーストとしての販売はなかった。

28年度ごろに全機そろうA350-1000

 JALがA350の発注を発表したのは2013年10月7日。標準型のA350-900を18機、長胴型のA350-1000を13機の計31機を確定発注し、オプション(仮発注)で25機購入する契約を結んだ。国内線機材のA350-900は、4年前の2019年9月1日に就航し、16号機(JA16XJ)まで受領している。

A350-900の国内線ファーストクラス=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JAL A350-900のファーストクラス=PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 A350-1000の初号機(JA01WJ)が17機目となり、今年度は2機受領する予定。2025年度末までに9機を導入後、5年後の2028年度ごろまでに残り4機を受領する見通しで、777-300ERを順次退役させる。

 JALが国際線に投入していた777は777-200ERと777-300ERの2機種で、中距離路線用の777-200ERはマクドネル・ダグラス(現ボーイング)MD-11型機の後継機として、2002年から11機導入。2021年からは5機を国内線に転用し、ビジネスクラスのフルフラットシートはそのままクラスJとして販売している。弊紙が2021年2月にスクープした際は、大きな反響を呼んだ(関連記事)。

 777-200ERのうち、最後に残った3号機(JA703J)は、当初は9月に退役予定だったが、11月上旬を予定。777-200ERが退役すると、JALが保有する777は777-300ERのみになる。運航品質の向上と合わせて、パイロットの資格審査などにも羽田-福岡線のフライトを活用していく。

石垣発羽田行きJL974便の777-200ER JA703JのクラスJ 2K席=23年4月2日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 今回の777-300ERの福岡線投入は、777-200ERのような国内線転用ではない。一般的に国際線機材の国内線投入は、機材のフェリー(回航)などによる間合い運用のような位置づけだが、幹線投入とあってファーストクラス席を国内線ファーストクラスとして販売する。

 わずか1時間30分ほどのフライトではあるが、ゆとりあるフルフラットのシートで、国内線ファーストクラスのサービスを味わえることから、777-200ERのフルフラット・クラスJに続いて人気を集めそうだ。

運航スケジュール
JL305 羽田(07:05)→福岡(09:00)
JL308 福岡(10:10)→羽田(11:40)

関連リンク
日本航空

写真特集・JAL 777-300ER機内デザイン刷新
(1)黒を基調としたビジネスクラス
(2)ワインレッドと黒のプレエコ
(3)エコノミーはA350と同じグレー系
(4)シックな壁面やウォシュレット完備の化粧室

機内の動画(YouTube Aviation Wireチャンネル
JAL 777-300ER 新インテリア初号機の機内(JA738J)

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