IATA(国際航空運送協会)は現地時間6月5日、世界の航空会社による今年の純利益予想は98億ドル(約1兆3757億円)、純利益率は1.2%になるとの見通しを示した。前回2022年12月発表の47億ドルを2倍以上上回り、売上高は前年比9.7%増の8030億ドルを見込む。
—記事の概要—
・アジア太平洋は純損失69億ドル
・旅客は19年の9割超
・24年はドバイ開催
アジア太平洋は純損失69億ドル
営業利益は224億ドルを見込み、前回発表の32億ドルを大幅に上回ると予想。2022年見込みの営業利益101億ドルの2倍以上となる見通し。2023年の年間旅客数は約43億5000万人と予測し、2019年に飛行機を利用した45億4000万人に迫る勢いを示した。
貨物量は5780万トンと予想。国際貿易量の急激な鈍化により、2019年の6150万トンを下回る見通し。
地域別でみると、アジア太平洋地域の航空会社は69億ドルの純損失を見込み、2022年の純損失135億ドルから損失幅を圧縮。有償旅客の輸送距離を示すRPK(有償旅客キロ)は前年比63.0%増、2019年比では29%減、座席供給量を示すASK(有効座席キロ)は48.5%増、2019年比は26%減を見込む。
好調な北米の純利益は115億ドル(22年は91億ドル)、欧州は51億ドル(同41億ドル)、中東は20億ドル(同14億ドル)を見込む。中南米とアフリカは純損失となる見通しで、中南米は14億ドルの損失、アフリカは5億ドルの損失と予測している。
旅客は19年の9割超
トルコのイスタンブールで4日から開かれている第79回AGM(年次総会)で、IATAのウィリー・ウォルシュ事務総長は5日、「ジェット燃料の価格は依然として高いものの、今年前半には緩やかになっている」と述べた。
航空業界が黒字転換した一方で、航空会社の乗客1人当たりの利益が平均2.25ドルにとどまる。ウォルシュ氏は「ニューヨークの地下鉄の切符を買うことさえできない。このレベルの収益性は、明らかに持続可能ではない」と語った。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響下にあった3年前との比較では「2020年に旅客1人当たり76ドルを失ったことを考えると、強い回復傾向にある」と説明。「最新のデータでは、旅客輸送量は2019年の90%以上の水準に達している」と、世界全体で見るとコロナ前の水準に近づいていることを指摘してきした。
ウォルシュ氏は一方で「課題は残っている。インフレは続き、コスト圧力は強く、一部の地域では労働力が不足している」と、航空業界での人手不足などの課題を懸念材料に挙げた。
24年はドバイ開催
AGMは年に1回開催され、世界各国の航空会社や機体メーカーなどの首脳陣が一堂に会し、航空業界の重要な指針が示される。2024年はアラブ首長国連邦のドバイででの開催が発表された。会期は2024年6月2日から4日まで。
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