海上保安庁が2機発注したエアバス・ヘリコプターズ製大型双発ヘリ「H225 スーパーピューマ」が5月10日、神戸空港に到着した。エアバスの大型輸送機A300-600ST「ベルーガST(Beluga ST)」の2号機(登録記号F-GSTB)に搭載され、工場がある仏マルセイユから5日がかりで運ばれてきた。
—記事の概要—
・日本最多の運用者
・ベルーガで特大貨物
日本最多の運用者
今回到着した2機はMH698(登録記号JA698A)とMH699(JA699A)。海保ではH225を「MHスーパーピューマ225」と呼んでおり、MHは「Medium Helicopter」の略で中型回転翼航空機を意味し、最大離陸重量が2500キログラム(2.5トン)を超え1万5000キログラム(15トン)以下の分類になる。
海保のスーパーピューマ・ファミリーは、今回到着した機体を含む15機のH225と2機のAS332を合わせて17機。2021年2月には10機目のH225が引き渡されており、捜索救難救助や領海警備などの任務にあたる。
スーパーピューマは11トンクラスの大型ヘリで、定員は操縦士を除き最大19人。海保は国内最大のスーパーピューマの運用者で、国内では海保のほか防衛省や警察庁など官民合わせて34機が運用されている。
今回の2機は、エアバス・ヘリコプターズの工場があるマルセイユで積み込まれ、現地時間6日に出発。エジプトのカイロ、アラブ首長国連邦のドバイ、インドのムンバイとコルカタ(旧カルカッタ)、ベトナムのダナン、台湾の台北(桃園)の6都市を経由して日本へ向かった。
神戸空港には税関職員が常駐していないため、10日早朝に関西空港で通関を行ったとみられ、神戸には午前9時34分ごろ着陸し、同39分ごろ到着した。ベルーガSTが関空と神戸へ飛来したのは、2021年12月25日以来約1年4カ月ぶりで、神戸にはエアバス・ヘリコプターズの格納庫などの施設がある。
ベルーガで特大貨物
エアバスは、27年前の1996年1月に初号機が就航した中型旅客機A300-600RがベースのベルーガSTを、2020年1月9日に就航したA330-200F貨物機がベースの「ベルーガXL(Beluga XL)」へ置き換えを進めている。ベルーガSTは大型機A350の主翼を1枚運んでいるのに対し、2枚同時に運べるようになった。
ベルーガSTは5万回のフライトを想定して開発されたものの、2022年1月時点で平均1万5000回とまだ運航できることから、ヘリや航空機用エンジン、人工衛星、船外実験装置、精密機器などの特大貨物を運ぶ新規事業「エアバス・ベルーガ・トランスポート(ABT: Airbus Beluga Transport)」を立ち上げた。
エアバスはABTで使用する支援設備も開発。多目的パレット(Multi-Purpose Pallet)は長さが調節でき、最小限の組み替えでさまざまな積荷に対応できるモジュラー構造を採用した。自動で展開できる搭降載用屋外設備や、20トン未満・長さ12メートル未満の積荷に対応するオンボードカーゴローダー(Onboard Cargo Loader)も利用できるようにした。
これらの支援設備を前回2021年12月25日にベルーガSTが初飛来した際、警察庁向けのH225とともに神戸へ運び込んでいる。
関連リンク
海上保安庁
BelugaST (Airbus)
Airbus
Airbus Helicopters
エアバス・ヘリコプターズ・ジャパン
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