「空飛ぶ眼科」と呼ばれる国際NGOオービス・インターナショナルのボーイングMD-10-30型機「Flying Eye Hospital(フライング・アイ・ホスピタル)」(登録記号N330AU)が5月5日午後1時50分すぎ、関西空港を出発して次の訪問先であるベトナムへ向かった。世界で1機しかない機内に眼科医院が設けられた機体で、日本での親善ツアーを終えた。
今回飛来したフライング・アイ・ホスピタルは3代目の機体で、米フェデックスの航空貨物子会社フェデックス エクスプレス(FDX/FX)が運航していたMD-10-30F貨物機(N301FE)を改修したもので、日本での公開は初めてだった。4月18日にフィリピンのクラーク国際空港から飛来し、21日から25日まで協賛企業の関係者らに公開された。
機内には手術室、研修室「クラスルーム」、手術前後のためのケアルームがあり、VR(仮想現実)をはじめとした最新のシミュレーショントレーニング技術をそろえた。日本人を含むオービスの医療専門家は全員がボランティアで、現地の眼科医らに知識やノウハウを伝えている。また、オービスの独自遠隔医療プラットフォーム「Cybersight」により、講義などを世界中の提携病院や研修室に配信する取り組みも進めている。
MD-10の外観の特徴は、エンジンが3基ある「3発機」。世界的に3発機は退役が進んでおり、関空でも目にする機会が減っている。マクドネル・ダグラス(現ボーイング)DC-10型機のコックピットを後継機MD-11の仕様に改修したもので、従来はパイロット2人と航空機関士1人による3人が必要だったが、MD-11と同じくパイロット2人で運航できるようになった。機材更新に伴い、フェデックスのMD-10Fは2022年末で全機が退役済みで、フライング・アイ・ホスピタルは世界で2機しかない現役のMD-10となっている。
オービスによると、手術室などで使う電源の発電機や空調など、地上支援設備は自前で運ぶことができ、十分な設備のない空港でも運用できるという。関空の後はベトナムに向かう。
オービスはニューヨークを拠点とする眼科医療の国際NGO。失明の予防や治療に取り組む眼科医療の専門家養成を必要とする地域に、トップレベルの研修を提供するため、40年以上にわたり世界95カ国以上で医療プログラムに参加している。
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Orbis International
フェデックス
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