飛行機に乗ってためたマイルを、特典航空券以外にも使ってもらう取り組みが航空各社で進んでいる。日本航空(JAL/JL、9201)は、「JALマイルライフ構想」として自社の会員にマイルを活用してもらう取り組みを強化しており、客室乗務員(CA)の仕事を羽田空港にある訓練施設で体験してもらう会員向けイベントを初めて開催した。
—記事の概要—
・バンと膨らむライフベスト
・「へー」がうれしかった
バンと膨らむライフベスト
参加者はJALのマイル制度「JALマイレージバンク(JMB)」の会員限定で、必要なマイルは1人2万マイル。制服の一部を着用し、1組5人程度でライフベスト(救命胴衣)の着用体験や、ドリンクカートの操作、機内アナウンスを体験した。
人数は1回あたり20人まで、所要時間は3時間45分と、ゆとりを持って体験してもらえるようにし、初開催となった3月25日は午前と午後の2回のうち午前は親子向けとした。 これまでは学生向けの航空教室などで客室乗務員の仕事を体験してもらう機会はあったが、マイル会員向けは初開催となった。
ライフベストの着用体験は本物を使うだけでなく、実際にひもを引っ張り、バンと大きな破裂音とともに膨らませるところまで体験。参加者たちは、膨らんだライフベストで足もとが見えにくくなることを実感していた。
フライトで万が一の際、ライフベストは機体の出口で膨らませる。もし自分の席で膨らませてしまうと、場所を取って動きにくくなるだけでなく、避難する際に足もとを確認しにくくなり、危険になることを体験してもらうのも狙いの一つだった。
ドリンクカートの操作体験では、カートを安全に扱うポイントを客室乗務員が説明。カート上部にホットコーヒーや紙コップを積むと、重心の関係でカートが不安定になってしまう。カートを安定させるために下からドリンク類などを搭載して重心を低くすることや、カートを動かす際に手を添える位置、常に停止した場合は足もとのストッパーで車輪をロックするといった、機内サービスでの安全確保の重要性も参加者に理解してもらう内容になっていた。
保安とサービスの体験後は、ビジネスクラスの機内食を試食。質疑応答の際には、客室乗務員を目指す学生からの質問もあり、案内役を務めた客室乗務員たちは「英語と体力作りはした方がいいです」「どんな体験もかてになります」とアドバイスしていた。
「へー」がうれしかった
企画したJAL客室業務部創造戦略グループの松本有紗主任は、「ためたマイルを使っていただくものとして、客室乗務員のマナー講座などJALの強みを生かしたものはあったのですが、客室乗務員の仕事を体験いただくのは初めてです」と話す。
客室乗務員の仕事というと、一般的には機内サービスやアナウンスを思い浮かべる人が多いだろう。今回のイベントは、保安要員として常に安全を確保していることを随所にちりばめた内容にした。
以前は客室乗務員の採用に携わっていた松本さんは、「我々だからできることは何だろう、と考えました。普段は見えない裏側を見ていただいたり、ここに来ないと体験できないものにしました」と、本物の訓練施設を使う以上、安全にもフォーカスしたプログラムにしたという。
一方で、コロナ後の需要回復が本格化し、訓練施設のスケジュール調整も難しくなってきた。昨年秋に企画がキックオフし、社内の関係部門と調整して時間を確保した。
「参加された方の“へー”というリアクションがうれしかったです」と笑顔を見せる松本さんは、「訓練が本格化したので苦労しましたが、もっと事業領域を伸ばしていきたいです」と話していた。
*写真は15枚。
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