JALはA320を導入するのか 特集・就航15周年737-800の後継機を占う

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 日本航空(JAL/JL、9201)は、ヤマトホールディングス(9064)が3機リース導入するエアバスA321ceo P2F型貨物機の運航会社を、当初予定していた50%出資のジェットスター・ジャパン(JJP/GK)から、6割超を出資する連結子会社のスプリング・ジャパン(旧春秋航空日本、SJO/IJ)に変更した。11月22日にこのニュースを報じると、「JALがA320を導入する前触れではないか」という指摘が各所から聞かれた。

就航15周年を迎えたJALの737-800。後継機選びはどうなるのか=22年8月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 A321P2Fは旅客機のA321ceo(従来型A321)を貨物機に改修するもので、ヤマトHDの機体はカタール航空(QTR/QR)が運航していた機体だ(関連記事)。3機の平均機齢12年は貨物機として運航するには十分なもので、整備もしっかりされてきた機体のようだ。

 JALの主力小型機は737-800。就航から15年が過ぎ、後継機をどうするかが話題になり始める時期だ。JALはA320の最新型であるA320neoファミリーと、737の発展型である737 MAXのどちらを選ぶのか、あるいは両方なのか──。答えが出るのはもう少し先だが、これまでの機材選定などから後継機を占ってみよう。

—記事の概要—
就航15年の737-800
分散発注でリスク回避が主流

就航15年の737-800

 国内線の多頻度小型化が進む中、小型機の重要性は増している。JALが運航する737-800は2007年3月1日就航で、すでに15年が過ぎた。一般的に旅客機は就航から20年程度で後継機に置き換えられるので、仮に新機材が5年後の2027年ごろ就航するのであれば、発注から引き渡しまでに2-3年程度かかることを考えると、遅くとも2025年ごろには後継機が選定されることになりそうだ。

17年に就航10周年を迎えたJALの737-800=17年3月1日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

 では、現行の737-800は、どのような時間軸で2007年の就航を迎えたのだろうか。まず、2005年2月4日にJALは737-800を含む737NG(Next-Generation、次世代737)の導入を発表。2006年11月14日に初号機(登録記号JA301J)を受領し、2007年3月1日に羽田-山口宇部、宮崎の2路線に就航させた。現在の座席数は国内線機材が2クラス165席(クラスJ 20席、普通席145席)、国際線は2クラス144席(ビジネス12席、エコノミー132席)だ。

 当時の737-800の確定発注は30機、オプションが10機。ボーイングの受注履歴によると、JALへ引き渡されたのは46機で、リース機も含めると今年9月末時点で56機を運航している。すでに退役機も出ているが、うち1機はグループの日本トランスオーシャン航空(JTA/NU)が運航している。

 JALが2005年に737NGの導入を表明した際、運航中の小型機は65機。内訳は737-400が23機、マクドネル・ダグラス(現ボーイング)MD-81型機が18機、MD-87が8機、MD-90が16機だった。このうち、マクドネル・ダグラスの機体は2004年に統合した旧日本エアシステム(JAS)が導入し、JALが引き継いだものだ。

JALのMDシリーズで最後まで残ったMD-90=13年3月30日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALグループの737-800(Aviation Wire作成)

 スプリング・ジャパンを連結子会社化する前に、JALグループでJAL本体以外に737-800を導入したのは、沖縄の日本トランスオーシャン航空だ。737-400の後継機として、JTAは2014年5月30日に737-800を12機確定発注し、初号機(JA01RK)が2016年1月24日に那覇空港へ到着。機材変更による臨時投入を除くと、翌月2月10日から運航を正式に開始した。

 そして、2021年6月29日にJALがスプリング・ジャパンを連結子会社化。同社は現在6機の737-800を運航しているが、2021年7月時点で最大9機体制にするとしていた。

JALグループ入りから1年が過ぎたスプリング・ジャパン=22年7月1日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 今年9月末時点でJALグループが運航する737-800は、JALが56機、JTAが12機、スプリング・ジャパンが6機で、計74機。このうちJTAは自社で機材を調達しているので、62機がJALが機材管理する737-800と言える。

 今後スプリング・ジャパンの機材をJALがサブリースなどで貸し出すと仮定すると、60機から65機程度が後継機選定の対象になりそうだ。

分散発注でリスク回避が主流

 JALは737-800の後継機をどうするのか。過去のJALの機材に対する考え方や、他社の動向、機体メーカーの状態などから考えてみたい。

ユナイテッド航空塗装で初飛行する737-10の3号機。A321XLRなどエアバス機も発注している(ボーイング提供)

 JALが737-800の後継機を現時点で選ぶ場合、737 MAXかA320neoのいずれかの系列になる。東南アジアのLCC大手、エアアジア(AXM/AK)のようにエアバス機で統一し、100機単位で調達する方法もある。しかし、メーカーを決め打ちにすると、運航面では当局が特定の機種を飛行停止にした場合、全便運休のような事態が起きかねない。機材調達では、ボーイングの工場で起きた製造不具合による787の納入中断のようなリスクもある。

 このため、欧米の主要航空会社では、ボーイングとエアバスに分散発注するケースが多い。

 国内でA320ファミリーを導入済みのANAグループは、全日本空輸(ANA/NH)本体でA321neoを22機、A321ceoを4機、A320neoを11機の計37機、同じくANAホールディングス(ANAHD、9202)傘下のピーチ・アビエーション(APJ/MM)はA320ceoを23機、A320neoを8機、A321LRを2機の計33機を運航しており、グループ全体では70機になる。ANA本体の737-800とA320系の比率を見ると、39機:37機でほぼ同数だ。

 ANAHDは今年7月11日に737-800の後継機として、737-8(737 MAX 8)を2025年度から導入すると発表。確定発注が20機、オプションが10機の最大30機だ。9月末時点の737-800は39機、うち購入機は24機で、現有機数と発注機数はイコールではない。

国内線で活躍するANAのA321neo=21年2月 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

国内初導入となったピーチのA321LR=22年11月9日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

福岡空港に着陸するジェットスター・ジャパンのA321LR初便となった成田発GK503便=22年7月1日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

 JALグループでは、ジェットスター・ジャパンがA320ceoとA321neoの航続距離延長型であるA321LRを導入しており、運航受託の形でスプリング・ジャパンがA321P2Fを運航する。すでに両社の整備はJALグループの整備会社JALエンジニアリング(JALEC)が受託しており、A320系の整備体制は構築されている。

 JALの経営意思決定は、連結子会社のスプリング・ジャパンのほうが、豪カンタス航空(QFA/QF)と50%ずつ出資のジェットスター・ジャパンより反映されやすい。すなわち、JAL本体とより連動して事業計画を進めていくことが期待できる。この点を考えると、今回のスプリング・ジャパンによるA321P2F運航決定が、JAL本体のA320系導入に向けた布石では、と業界内での見方を強める一因になっている。

ヤマトが受領済みのA321ceo(JAL提供)

 前述のように、JAL本体とスプリング・ジャパンの737-800を合計すると62機。一般的に1機種で20機から30機程度を運航していれば、シミュレーターなどを含めた機材全体の投資効果は十分発揮できると言われている。

 このため、62機のうちJAL本体の56機をそのまま後継の小型機に置き換える場合、ボーイング機とエアバス機を半々の28機ずつか、あるいは36機と20機のようにどちらかを少し多くするような発注は現実的と言える。これにスプリング・ジャパンが運航する機材を上乗せして発注することも可能だ。過去の737-800の発注と同じく、1機種あたりの確定発注は多くても30機程度になるのではないだろうか。

 JALの737-800の後継機はどうなるのか。答えはあと2年程度で見えてきそうだ。

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