日本航空(JAL/JL、9201)とヤマトホールディングス(9064)が、2024年4月から運航を開始する貨物専用機の路線や便数、運航会社を11月22日に発表した。東京(成田・羽田)-北九州間など4路線で1日21便を、エアバスA321ceo P2F型貨物機で運航する。
運航会社はこれまでJALが50%出資し、A320とA321LRを運航するジェットスター・ジャパン(JJP/GK)としていたが、2021年6月に連結子会社化したスプリング・ジャパン(旧春秋航空日本、SJO/IJ)に変更。初めてJALの連結対象グループ会社がA320ファミリーを運航することになる。
しかし民間機の場合、1人のパイロットが同時に運航できるのは原則1機種で、他メーカーの機材を混乗することはできない。このため、パイロットは一定期間運航から離れ、機種移行訓練を受けなければならない。スプリング・ジャパンは6機の737を運航しているが、JALの狙いはどこにあるのだろうか。
—記事の概要—
・元カタールのA321
・A320ライセンス保持者活用
元カタールのA321
両社が運航を始めるA321P2Fは、ヤマトHDが3機リース導入する。中古のA321ceo(従来型A321)旅客機を貨物専用機に改修するもので、10トン車約5-6台分に相当する1機当たり28トンの貨物を搭載できる。これまでに2機受領済みで、残りの1機は2023年2月の受領を予定する。
ベースになった機体は、当紙の調べによるとカタール航空(QTR/QR)のA321ceo。エンジンがジェットスター・ジャパンが運航するA320と同じIAE製V2500であることや、同社の機材は整備状態が良好で不具合改修などをメーカーが指示するSB(サービスブリテン)の大半が適用されていることなどが選定の決め手になったようだ。
改修作業は、エアバスとシンガポールのSTエンジニアリングとの合弁会社である独エルベ・フルクツォイヴェルケ(EFW)社が担う。
*機体詳細はこちら。
A320ライセンス保持者活用
運航会社はA320系の機体を運航するジェットスター・ジャパンから、737-800のみのスプリング・ジャパンに変わった。
スプリング・ジャパンのパイロットは737を操縦しているが、一部の人はA320のライセンスも保持しており、2024年4月の運航開始までに機種移行を済ませる。3機のA321P2Fを運航するには、2人1組で乗務することから約20人いるライセンス保持者と新規養成40人程度の計60-70人ほどのパイロットが必要になるとみられる。
中国最大のLCCである春秋航空(CQH/9C)の子会社として、10年前の2012年10月に発足したスプリング・ジャパンは、本体がA320で運航しているのに対し、6機の737-800を運航しており、A320系の機体は運航していない。会社を立ち上げた10年前は、日本国内でエアバス機を運航する会社が少なく、ボーイング機のほうがパイロットを確保しやすかったことも機種選定の背景にあった。
A321P2Fを運航するにあたり、現在のA320ライセンス保持者だけでは足りないことから、春秋航空と連携してパイロット養成を進める。
ジェットスター・ジャパンは豪カンタス航空(QFA/QF)と50%ずつの出資だが、スプリング・ジャパンは議決権比率を66.7%まで高め、2021年6月29日に連結子会社化。このため、JALの連結対象では初めてA320系の機体を運航することになる。
ジェットスター・ジャパンとスプリング・ジャパンは、整備をJALグループの整備会社JALエンジニアリング(JALEC)に委託しており、JALECではA320系の整備体制がすでに整っている。
世界的に航空需要が回復してきていることから、今後の課題は他社と同じくA320ライセンスを持つパイロットの安定的な確保といえそうだ。
関連リンク
ヤマトホールディングス
日本航空
スプリング・ジャパン
カタール航空のA321改修
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