政府による水際対策が9月7日から緩和され、10月11日からは入国時検査が原則撤廃される。1日最大5万人の入国者数制限もなくなり、インバウンド需要回復が期待されるが、日本から海外へ向かう際に重荷となるのが燃油サーチャージ(燃油特別付加運賃)の高騰だ。
本搭乗記は、緩和2日後の9月9日に乗ったZIPAIR(ジップエア、TZP/ZG)の成田発バンコク行きZG51便の様子をまとめたもので、前編で片道3万円の運賃がは国内線並みであることやサーチャージ高騰の現状、後編では機内食などZG51便の機内を取り上げた。
ZIPAIRの機材はボーイング787-8型機で、座席数は2クラス290席。フルフラットシートを採用し、ビジネスクラスにあたる上級クラスの「ZIP Full-Flat(ジップ・フルフラット)」が18席、エコノミークラス「Standard(スタンダード)」が272席だ。9日のバンコク行きの乗客数は144人(フルフラット8人、スタンダード136人)と、搭乗率としては約50%だった。このため、Standardに乗った私は、窓側から3席を1人で独占できたが、後編の最後で触れたように、今後乗客が増えれば混雑した機内になるだろう。
では、フルフラットシートのZIP Full-Flatは、どのようなシートなのだろうか。ZIPAIRにはバンコク行きの機内を取材することを伝えていたので、機内販売などが一段落した時間に、シートを撮影する時間の確保をお願いした。搭乗記は別の機会に譲るが、Standardとの違いをご覧いただきたい。
—記事の概要—
前編
・サーチャージなし片道3万円
・国内線787と同じシートピッチ
後編
・電源あり。ネット無料
・LCCイメージと異なるZIPAIR
番外編
・ビジネスクラスと同じシート
ビジネスクラスと同じシート
9月9日のバンコク行きZG51便のStandardは、8月31日の発券で支払総額は3万4864円だった。内訳は運賃が3万1000円で、空港使用料や税金3864円が加わる。一方、ZIP Full-Flatは今回自分が乗るわけではないので内訳までは確認しなかったが、オプションなしの総額は10万3864円だった。
Standardと比べて2.97倍、差額は6万9000円だ。現在のように隣に誰もいない状態であればStandardでも快適だが、混雑してくると上級クラスのFull-Flatも選択肢に入るのではないか。
個人用モニターは両クラスとも装備しないが、機内Wi-Fiサービスは衛星回線を使ったインターネット接続にも対応。電源コンセントや充電用USB端子も備えており、どちらのクラスでも不自由はない。
ZIP Full-Flatのシートは、1列あたり1-2-1席配列で18席。ジャムコ(7408)製ビジネスクラス用シート「Venture(ヴェンチュア)」で、KLMオランダ航空(KLM/KL)の787のビジネスクラスと同じシートだ。180度リクライニングするフルフラットシートを斜めに配置する「ヘリンボーン配列」で、全席から通路へアクセスできる。
中央席はディバイダーで仕切れるなど、プライバシーを考慮した設計。本革シートで、家庭のリビングでくつろぐような過ごし方をイメージした。シートピッチは42インチ(約107センチ)で、座席幅はひじ掛けの間で20インチ(約51センチ)となる。他社では個人用モニターを装備する場所に、小物が入るポケットが設けられているのが特徴だ。
つまり、FSC(フルサービス航空会社)と同じシートをLCC(低コスト航空会社)が採用しており、映画などの機内エンターテインメントを自分のスマートフォンやiPadなどで視聴するのであれば、インターネットにも接続できるので片道6時間を快適に過ごせるだろう。
一方、ビジネスクラスに乗る楽しみの一つである、機内食やワインなどは、エコノミークラスであるStandardと共通のメニューになる。「フルフラットシートで眠れて、ネットにつながればいい」という私のような考えの人にはうってつけだろう。
成田発バンコク行きは出発が夕方なので、搭乗後に仕事を軽く済ませた後は、現地まで寝ていくという人も多いのではないだろうか。Standardの自席付近を見回すと、出発して早々に寝入ってしまう人や、スマートフォンをシートに備え付けのスタンドに立てかけて動画を見ている人が多かった。
シートの素材はZIP Full-Flatが本革なのに対し、Standardは人工皮革を採用することで、本革よりも4割軽くしているが、座り心地はどちらもしっかりと身体を支えるタイプなので疲れにくいシートだと感じた。
ZIPAIRの親会社である日本航空(JAL/JL、9201)のエコノミークラスよりは高くなるが、ビジネスクラスと比べてれば割安なZIP Full-Flat。サーチャージ高騰が続く中、プライバシーを確保しながら安価に移動したい場合には良い選択肢になるだろう。
*写真は20枚。
関連リンク
ZIPAIR
ZIPAIR搭乗記・サーチャージなしで経費削減
前編 片道3万円でバンコクへ
後編 バンコクまでネット無料
機内の動画(YouTube Aviation Wireチャンネル)
・ZIPAIR 787-8 JA822J機内公開 フルフラットシートも
写真特集・ZIPAIR 787-8の機内
(1)フルフラット上級席ZIP Full-Flatは長時間も快適
(2)個人用モニターなし、タブレット置きと電源完備のレカロ製普通席
(3)LCC初のウォシュレット付きトイレ