日本航空(JAL/JL、9201)は8月31日、現役社員が講師を務める「JALエアラインスクール」のうち、客室乗務員コースを報道関係者に公開した。航空会社をはじめ航空業界を目指す大学生などが対象で、31日は30人が受講した。
—記事の概要—
・現役社員が講師
・面接官経験者がアドバイス
・川瀬CA「学生の時にやっておけばよかった」生かす
現役社員が講師
JALは2021年4月に、客室乗務員が講師を務める企業や自治体向けのサービス講座やコンサルタント事業をスタート。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響による大量減便を受け、新たな事業領域を開拓する一環で、同年夏には大学生や専門学校生を対象にした「『自分を知る』5日間」と題した夏季講座を開いた。今年3月には教育事業や市場調査など、客室乗務員のスキルを生かした新事業を展開していくと発表し、本格的な事業展開が始まった。
エアラインスクールは8月に開校。9月までは最大4日間の短期集中講座を開く。10月からは、大学や専門学校などに通いながら受講できるダブルスクール形式の「レギュラー講座」を開講し、3カ月間単位で毎週1回開く。
両講座とも、客室乗務員と地上係員の2職種のコースを用意し、現役社員が講師を務めるのが売り。仕事内容のほか、航空業界の現状やJALの取り組みを講義で取り上げる。また自己分析や面接対策など、就職活動に必要なスキルの習得に加え、開催会場により実際の研修施設などの見学・体験もできる。
2コースとも応募できるのは18歳以上で、客室乗務員や地上係員を目指している人。短期講座の定員は15-20人程度で、参加費(税込)は東京会場が22万円、大阪など東京以外の会場は16万5000円とした。
面接官経験者がアドバイス
31日の短期講座の客室乗務員コースで、講師を務めたJALの総合政策センター産学連携部事業開発グループに所属する客室乗務員、川瀬飛香さんは「面接はチャンス」と受講する学生たちに語りかけ、緊張せずに自分の思いを伝えたり、企業の雰囲気を知って欲しいという。
30人の受講生は15人ずつ2つのクラスに分かれた上、7-8人で1組のグループディスカッションや、3人1組の模擬面接に挑んだ。グループディスカッションでは、日本の魅力や訪日客を増やす方法などをテーマに議論し、模擬面接は実際に面接官経験のある社員が面接官役を務め、学生たちは本番さながらの雰囲気を体験していた。
子供のころから客室乗務員に憧れているという、受講した大学3年生の志賀雅(しが・みやび)さんは、「現役社員の方とお話できるのが決め手で、面接官(経験者)の方にフィードバックを頂けるのが大きな機会だと思いました」という。「どういった観点で自分を掘り下げていけばいいのか、志望動機にどういう要素を盛り込めばいいのかといったところまで学ぶことができました」(志賀さん)と話していた。
川瀬CA「学生の時にやっておけばよかった」生かす
講師を務めた川瀬さんは、志賀さんの受け答えを見て「立派!」と笑顔を見せた。「昨年度開いた学生向け講座を開いた際、客室乗務員(志望者向け)の講座を開いて欲しいという要望がかなり多くありました」(川瀬さん)と話す。
「学生の皆様は、本当に熱い気持ちを持ってきてくださる方が多く、私たちも経験しているところなので、私たちが学生の時に、客室乗務員になる前にやってておけばよかったな、というものを生かして講座を作りました」(川瀬さん)と、学生たちの先輩として、自らの経験を踏まえて内容を考えたという。
川瀬さんが学生たちに一番伝えたかったこととして、「自分の思いをしっかりと相手に届ける、というところを大切にしてもらいたいと思います。どうしてもこう言わなきゃいけないんじゃないかなとか、模範解答を探してしまいがちな方が多いんですが、自分が思っている熱い思いを相手にしっかりと届けることが大切だよ、というふうに面接の講座の中でもお伝えしています」と話していた。
現役社員が講師という点に注目が集まりがちだが、川瀬さんはそれ以外のメリットとして、「日本航空が提供するという意味では、本物を提供できるところ、そして本物を体験できる、学べるというところだと思います」と、実際にJALの客室乗務員として働くシーンに近い講義を受けられる点を挙げた。
JALは今後5年程度かけて、非航空系事業を1000億円程度まで成長させる。中でも力を入れているのが、客室乗務員が活躍する分野だ。赤坂祐二社長は「うちの客室乗務員は非常に優秀」と明言し、結婚や子育てで乗務から離れる客室乗務員が活躍できる場としても乗務以外の職場を整備する。「客室乗務員に限らず、定年まで働ける環境を作りたい」(赤坂社長)と、長く働ける職場環境を作ることで、社員のスキルを生かせる企業風土の醸成につなげる。
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