全日本空輸(ANA/NH)は、国内線機材として唯一500席を超える大型機ボーイング777-300型機の運航を8月27日から再開する。6月から国内線に再投入している米プラット&ホイットニー製エンジン「PW4000」を搭載する777のうち、777-300は胴体が約10メートル長く、座席数が100席以上多い長胴型で、10月末までには全機の整備を終えて国内線に再投入する見込み。PW4000搭載の777は、米国で起きたエンジントラブルの影響で、6月まで運航停止となっていた。
*再開初便の記事はこちら。
777-300の再開初便は、27日の羽田午前7時発札幌(新千歳)行きNH51便を予定。この日は札幌午前9時30分発の羽田行きNH54便、羽田正午発の札幌行きNH63便、札幌午後2時30分発の羽田行きNH66便に投入する見通し。
10月30日開始の冬ダイヤでは、ANAの国内線はコロナ前の約9割まで回復。グループのLCC、ピーチ・アビエーション(APJ/MM)を含めると、夏ダイヤに続いてコロナ前並みの便数になる。9月の行楽シーズンや年末年始を前に、1便で大量輸送できる機材を復活させる。
—記事の概要—
・98年就航の500席級大型機
・3月に運航停止解除
*777-200の再開初便はこちら。
98年就航の500席級大型機
国内の航空会社で、PW4000を搭載する777を保有するのは現在ANAのみ。全15機が国内線機材で、10月末までには全機を国内線に再投入する計画を進めている。
内訳は777-200が2機、航続距離延長型の777-200ERが8機、長胴型の777-300が5機。777-300の座席数は2クラス514席(プレミアムクラス21席、普通席493席)で、すでに日本航空(JAL/JL、9201)の同型機(2クラス500席)が退役していることから、国内線を飛ぶ唯一の500席クラスの機材となる。
ANAの777-300国内線仕様機は、1998年7月10日に羽田-広島線に就航。7機導入したが、これまでに2機(JA756A、JA757A)が退役済み。残り5機は運航停止前、羽田-札幌線や福岡線、那覇線などの高需要路線に投入されていた。
国内の航空会社で500席を超える機材は、ANAの777-300国内線仕様機と、成田-ホノルル線の専用機材である総2階建ての超大型機エアバスA380型機「FLYING HONU(フライング・ホヌ)」のみ。
A380の座席数は4クラス520席で、ファーストクラスが8席、ビジネスクラスが56席、プレミアムエコノミーが73席、エコノミーが383席。2階席が上級クラス、1階席はすべてエコノミークラスとなっている。777-300は2階席がないものの、A380のように個室タイプのファーストクラスなどがなく、2クラス構成である分、座席数を多く設定できる。
6月に運航を再開した777-200/-200ERの座席数は、2クラス392席仕様(プレミアムクラス28席、普通席364席)と2クラス405席仕様(プレミアムクラス21席、普通席384席)で、777-300は100席以上多い。
3月に運航停止解除
国土交通省航空局(JCAB)は、米国で2021年2月20日(日本時間21日)に発生した米ユナイテッド航空(UAL/UA)の777-200(登録記号N772UA)のエンジントラブルを受け、同じエンジンを搭載する777の運航停止を、ANAと当時保有していた日本航空(JAL/JL、9201)に同日指示。海外の航空各社にも同型機の日本乗り入れ停止を指示していた。
JCABは今年3月18日付で、PW4000を搭載する777の商業運航停止を解除。再発防止策を策定し、エンジン内にあるファンブレードの非破壊検査の強化や、インレット・カウルの強化、火災防止向けの改修などを条件に、防止策を施した機体の運航再開を認めている。
ANA機ではPW4000関連で上述のトラブルは起きていないが、(1)ファンブレード破断防止のため非破壊検査の間隔短縮、(2)エンジンカウルの構造強化、(3)エンジンの防火機能強化などの対策を実施している。
JALはPW4000を搭載する777を、計画を前倒しして2020年度に全機退役済み。また、ANAとJALが国際線に投入している777-300ERや、JALが国内線に転用した777-200ERは米GE製エンジンGE90を採用しており、運航停止の対象外だった。
ユナイテッド航空は、PW4000を搭載する777-200を今年6月から国際線で運航を再開。トラブルが起きたN772UAも、今月21日のシカゴ発サンフランシスコ行きUA2242便で運航を再開している。
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全日本空輸
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