ユナイテッド航空(UAL/UA)に続き、アメリカン航空(AAL/AA)も導入を表明した米ブーム・スーパーソニック(Boom Supersonic、本社デンバー)が開発中の超音速旅客機「オーバーチュア(Overture)」。7月にロンドン近郊で開かれたファンボロー航空ショーでは最終生産設計のほか、ノースロップ・グラマンとの提携も発表された。
すでに米空軍とは、大統領専用機も含めた要人輸送機の可能性を検討を進めているが、今回のノースロップ・グラマンとの提携で、防衛分野での活用も前進した。オーバーチュアをベースとした軍用機を、ブームの創業者兼CEO(最高経営責任者)であるブレイク・ショール氏はどのように考えているのだろうか。
—記事の概要—
前編
・3発機から4発機に
・全席ビジネスクラスで29年就航へ
後編
・「基本的に平和的な用途」
・複数の客室ゾーン設定可能
「基本的に平和的な用途」
今回の発表では、ノースロップ・グラマン以外にもサプライヤーや提携先が明らかになった。着陸装置などをサフラン・ランディング・システムズ、すでに提携関係にあるコリンズ・エアロスペースとは防氷装置の評価にも協業を拡大し、SAFについてはイートン共同でシステム開発を進める。サプライヤーとの提携を複数発表することで、プロジェクトが生産に向けて前進していることをアピールする狙いもあるようだ。
ノースロップ・グラマンとの提携で注目される防衛分野でのオーバーチュアの活用について、ショールCEOは「基本的に平和的な用途だと考えている」と述べた。防衛や軍事への応用は、部隊の輸送、特殊任務や偵察、負傷兵の戦場からの離脱、救命医療など、さまざまな用途を検討しているというが、ノースロップ・グラマンとの提携は「大統領との移動に焦点を当てたものだ」という。
「すでにノースロップ・グラマンとは少しばかり協働している。軍隊がどのように活動し、どのような能力を必要としているのかを理解するために、膨大な量の作業を行う必要があり、軍に提供できるものを私たちが一緒に考え出す。性質上、進行すると民間側の話ほどは話せなくなる」と説明する。
ノースロップ・グラマンと言えば、全翼のステルス戦略爆撃機B-2「スピリット」を開発し、後継機B-21「レイダー」が今年後半のロールアウト、2023年の初飛行を計画している。提携先と軍事転用が直接関係するわけではないので、ブームはオーバーチュアを爆撃機などよりも、要人輸送機など旅客機に近い用途を想定しているようだ。
複数の客室ゾーン設定可能
すでに米空軍とは2020年9月に、将来空軍に応用される技術革新への資金援助を目的としたプログラムの契約を結んでいる。このプログラムはオーバーチュアを基にした要人輸送機を検討するもので、大統領専用機も視野に入れたものだ。
現在の大統領専用機VC-25Aは、ボーイング747-200B型機を基に開発。初号機(28000)は1990年8月23日に、2号機(29000)は同年12月23日に引き渡され、コールサイン「エアフォース・ワン」が最初に用いられた同年9月6日から32年が経過しており、後継機には747-8が選定されている。
任務の性質上、ベースとなる機体は一定の運航実績が求められることから、747-8を基にした新大統領専用機を運用しつつ、特定の用途に限定してオーバーチュアを投入する可能性を検討することになるだろう。
ブームは「乗客数、速度、必要なミッションシステムの要件に対応する十分なスペースとパワーを兼ね備えた機体を空軍に提供できる」としており、オーバーチュアについて「複数の客室ゾーンを設定することが可能で、必要なだけのプライバシーを確保したレイアウトを実現できる」としている。
VC-25Aの前に大統領専用機として使用されたVC-137Cは、単通路機のボーイング707型機をベースとする機体で、近年はVC-25Aの予備機として運用される事も多いC-32Aは757-200を母体としている。
このため、747のようにあらゆる装備を備えた専用機は難しいが、当初は米大陸横断といった用途で運用することは運航実績を積めば現実的だろう。
(おわり)
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