ボーイングは8月2日、eVTOL(電動垂直離着陸機)の合弁会社ウィスクエアロ(Wisk Aero)の事業説明会を開いた。Wiskは4人乗りのeVTOLを開発中で、将来は配車サービス「Uber(ウーバー)」並みの1マイル当たり3ドル(1.6キロ当たり約395円)程度で利用できるサービスの実現を目指す。
—記事の概要—
・電動化と自律飛行で低コスト化
・ヘリより安く、低騒音
電動化と自律飛行で低コスト化
Wiskは、ボーイングとeVTOLを手掛ける米キティホークがカリフォルニア州に設立した合弁会社。2017年に米国で初めて旅客用に設計された自律飛行型のeVTOLの飛行に成功した。ボーイングのバイス・プレジデント兼チーフ・エンジニアのブライアン・ユトゥコ博士によると、現時点で第5世代機まで開発して飛行試験を進めており、FAA(米国連邦航空局)の型式証明を取得して実用化し、販売する第6世代機に関する情報を秋ごろ明らかにするという。
ユトゥコ博士は「お金持ちだけが使えるものではなく、誰もが使える航空機を提供することがWiskの目標。料金は最終的にはウーバーに乗るように、1マイル当たり3ドル程度にしたい。そのためには、電動化と自律飛行による価格の引き下げが必要だ」と述べた。
Wiskが開発しているeVTOLはバッテリー駆動。第6世代機の航続距離は明らかにしていないが、一般論として「バッテリー駆動の電動航空機は、500キロ以下の較的短い距離に限られるだろう」との見解を示した。
ヘリより安く、低騒音
当初の用途は、空港から都市部への移動などを想定しているといい、将来的には通勤など都市内の移動などに広がることを念頭に置いている。また、都心部のビルなどに設置されているヘリパッドへ離着陸できるように設計したという。
機体価格は、4人乗りクラスのヘリコプターと比べて、「ずっと安価になる」という。「私たちのeVTOLは、可動部品が12個しかない。ヘリコプターは何千もの可動部品がある。バッテリー駆動システムのシンプルさにより、整備コストを劇的に下げることが出来る。このようなプラットフォームを皆で作れば、さらにコストを下げられる。騒音を抑えられるので、ヘリの飛行を禁止している地域でも飛ぶことが出来る。これは非常に重要なことだ」と語った。
「空飛ぶクルマ」などと言われるeVTOLだが、それに先んじて実用化が進むドローンは、機体によってはハエのように耳障りな飛行音を抑えることが、特に市街地を飛ぶ上では課題になる。
ユトゥコ博士は「小型ドローンの飛行音が耳障りなのは、高周波を持つ非常に小さなローターのせいで、ヘリコプターの騒音とは違うタイプのものだ。騒音に対する認識は、騒音そのものの周波数と、それをどう認識するかに依存する。小型ドローンやヘリコプターなどと比べて飛行音が小さく、周波数も好ましいと思われる飛行機を設計した」と語った。
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