エアバスは5月9日、小型機のA220-300型機を羽田空港で報道関係者などに公開した。アジア太平洋地域でのデモンストレーションツアーの一環で、ラトビアのエア・バルティック(BTI/BT)の機体(A220-300、登録記号YL-ABH)が飛来した。大きな窓や手荷物収納棚を備える快適性や、環境性能の高さをアピールしている。
—記事の概要—
・離島路線から東南アジアまでカバー
・最大月産14機
・エア・バルティックは737とQ400置き換え
離島路線から東南アジアまでカバー
A220は、カナダのボンバルディアが開発した小型旅客機「Cシリーズ」の事業会社をエアバスが2018年7月に買収し、名称を変更したもの。すべてが新設計の機体で、部品を9割以上共通化したA220-100(旧CS100)とA220-300(CS300)の2機種で構成され、メーカー標準座席数はA220-100が100-130席、中胴が3.7メートル長いA220-300は130-160席となる。エアバスはA220をラインナップに加えたことで、100席から240席までの単通路機をそろえた。
ビジネスクラス8席の2クラス仕様の場合、A220-100は116席(ビジネス8席、エコノミー108席)、A220-300は141席(ビジネス8席、エコノミー133席)に設定可能。LCCなどモノクラス高密度仕様の場合はA220-100が135席、A220-300は160席にできる。
客室はキャリーバッグを4つ収納できる大型のオーバーヘッドビン(手荷物収納棚)や、A320と比べて15%大きい窓など、居住性の高さもアピールポイントだ。
1列あたりの座席数はエコノミークラスの場合、2席-3席の5席配列を採用しており、リージョナル機(1列4席)とA320(同6席)の中間となる。3席の中央席はシート幅をほかの席より1インチ(約2.5センチ)広い19インチ(約48.3センチ)とし、窓側席と通路側席の間になる分、広くした。
エンジンは低燃費・低騒音が売りとなる米プラット&ホイットニー(PW)社製PW1500Gを採用。最長6300キロ(3400海里)をノンストップで飛行できる。東京を起点とした場合、香港やベトナムのホーチミン、ハノイ、タイのバンコク、シンガポールなどを結ぶことができる。
エアバスのマルコム・マクスウェル単通路機担当マーケット・ディベロップメント・ディレクターは、「急角度進入や短い滑走路での運用、120分と180分のETOPSも取得している」とA220の特徴を説明。「急角度進入となるロンドン・シティ空港には、スイス インターナショナルエアラインズ(SWR/LX)がA220-100を就航させている。滑走路が短い丘珠や屋久島、利尻などにも就航できる」と語り、離島などに乗り入れる地域路線や、東京から東南アジアの主要都市にも乗り入れられる柔軟性を示した。
エアバスによると、A220-100であれば1500メートル級の滑走路でも運航できるという。
また、従来の同クラス機と比べて1席当たりの燃費を25%改善し、二酸化炭素(CO2)排出量を25%、窒素酸化物(NOx)排出量は50%削減できる環境性能もアピールしている。マクスウェル氏は「ノーズやテールは空気抵抗を減らすよう設計しており、エンジンナセルや主翼も最適化している」とA220が空力特性に優れている点を説明した。
最大月産14機
従来100-150席クラスの機体は、エアバスがA318(最大1クラス132席)、ボーイングが737-600(同132席)を製造していた。しかし、低燃費の新型エンジンを採用した発展型のA320neoや737 MAXのラインナップでは後継機がなく、世界2強が不在の市場となった。
エアバス機の中で、A220をラインナップに加える前に座席数が最少だった機体は、A320neoファミリーでもっとも小さいA319neoで、2クラス140席。ボーイングでは、737 MAX 7(2クラス138-153席)が同じサイズとなる。エアバスが製造していない100席未満のリージョナル機と、A320neoファミリーの隙間を埋めるのがA220だ。
A220の生産レートは月産6機で、カナダのミラベル工場と米アラバマ州のモビール工場で最終組立を行っている。マクスウェル氏は「コロナ後は2020年代半ばに月産14機まで増やしたい」と語った。
エア・バルティックは737とQ400置き換え
エア・バルティックはA220-300のローンチカスタマーで、50機を発注し34機を運航中。座席数は145席で、ボーイング737型機とボンバルディアQ400(現デ・ハビランド・カナダDash 8-400)型機の2機種をA220-300で置き換えた。
エアバスは3月末時点でA220を740機受注し、210機を引き渡している。マクスウェル氏は「受注のうち150機が追加発注だ」と航空会社から支持を得ていることを強調した。アジア太平洋地域では、大韓航空(KAL/KE)がA220-300を10機導入しており、豪州のカンタス航空(QFA/QF)が5月2日にA220-300を20機確定発注した。
今回のツアーは豪シドニーを皮切りにシンガポール、ベトナムのハノイを訪れ、羽田には5月8日午後6時20分にB滑走路(RWY22)へ着陸し、同24分すぎに到着した。ボンバルディア時代には、2016年11月3日と2017年9月28日に羽田へCS300(C-FFDO)が飛来しているが、A220としては今回が初めて。また、エアバスが日本でA220の見学会を開くのは、2019年8月に中部空港で開催して以来3年ぶりとなった。
*写真は14枚。
関連リンク
Airbus
Air Baltic
A220解説
・なぜA220は中部でデモフライトを実施したのか 特集・日本の100-150席市場を考える(19年8月14日)
・A220ってどんな機体? 特集・エアバス機になったCシリーズ(18年7月11日)
セントレアでのデモフライト動画(YouTube Aviation Wireチャンネル)
・A220セントレア着陸(3:53)
・A220の機内(0:32)
・A220セントレア離陸(2:24)
A220
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