ANAホールディングス(ANAHD、9202)傘下の全日本空輸(ANA/NH)が運航していたエアバスA320型機のうち、同じく傘下でLCCのバニラエア(ピーチ・アビエーションと統合)の3号機として運航していた機体(A320ceo、登録記号JA03VA)が1月14日午後に羽田空港からフェリーフライトのNH9432便として日本を離れ、ソウル(仁川)経由でロシア・シベリアのノボシビルスクへ向かった。ANAグループが運航するA320のうち、ANA本体のものはすべて新型エンジンを搭載するA320neoとなり、従来型のA320ceoはピーチ・アビエーション(APJ/MM)の機体のみとなった。
バニラは同じくANAHD傘下のLCCであるピーチと2019年11月に統合を完了。1クラス180席仕様のA320を15機運航していたが、このうち初期導入のJA01VAからJA03VAまでの3機はピーチへ移管されず、180席のまま「32G」と呼ばれる客室仕様で、ANAが2020年から主に単独路線で運航した。
3機はANAHDがリース導入し、バニラが運航。いずれもANAHDが合弁を解消したエアアジア・ジャパン用の機材として発注していたため、シートにロゴが入っていないことなどを除くとエアアジア仕様のままで、翼端に燃費を改善する「シャークレット」を装備していた。薄型シートが主流の中、肉厚なシートは異彩を放っていたが、シートピッチが狭いことがFSC(フルサービス航空会社)の機材としては難点とも言えた。
JA01VAは発注途中でバニラ機になったため、塗装が間に合わず2013年11月14日に白い塗装で成田空港へ飛来。国内で黄色と白のツートンカラーに塗装された。一方、JA02VAとJA03VAはツートンには塗装されず、白地にロゴなどを描くだけのデザインになった。バニラはJA04VAから自社で選定したシートや内装の機材になった。
ANAの国内線用A320は2クラス166席仕様だったが、座席数を統一するためには配線などを変更する必要があり、改修には2年程度かかることから、3機とも180席仕様のまま運航を続けた。
JA03VAは2014年1月に引き渡された機体で、航空機の位置情報を提供するウェブサイト「フライトレーダー24(Flightradar24)」によると、バニラ時代の最終便は2019年10月23日の台北(桃園)発成田行きJW100便。ANAでは2020年2月6日の羽田発徳島行きNH285便が初便となり、2021年5月30日の八丈島発羽田行きNH1892便が最終便となった。バニラでは、単独路線だった成田-奄美大島線の同社運航最終便となった2019年8月31日の成田行きJW824便にも使用された。
2013年11月に引き渡されたJA01VAの最終便は、2021年3月18日の八丈島発羽田行きNH1892便、2013年12月引き渡しのJA02VAは同月8日の同じ便で退役しており、日本を離れたのはJA01VAが同年11月13日、JA02VAは12月23日だった。
JA01VAは羽田からソウル、ノボシビルスク、ロシア・モスクワのドモジェドボ国際空港経由でフランスのタルブ・ルルド。ピレネー空港へフェリー(回航)された。JA02VAは、米LCCのアレジアント航空(AAY/G4)の塗装で羽田からアンカレッジ経由で米フロリダ州のメルボルン国際空港へ向かった。
ANA本体が運航するA320ファミリーは、国際線機材のA320neo(2クラス146席)と、国内線機材のA321ceoとA321neo(ともに2クラス194席)となる。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、A320neoは国内線に投入する機会が増えている。
*写真は10枚。
関連リンク
全日本空輸
・バニラのA320、ANAが180席仕様で国内線投入 20年1月から(19年10月28日)
・バニラ、成田-奄美の運航終了 独自路線、10月からピーチ(19年8月31日)
・バニラエア、A320初号機公開 塗装後初めて(13年12月3日)
・バニラ・エア、白装束のA320初号機が成田到着(13年11月14日)