クリスマスに日本へ飛来したエアバスの大型輸送機A300-600ST「ベルーガST」が、現地時間12月28日昼(日本時間同日夜)に、エアバスの最終組立工場がある仏トゥールーズへ戻った。22年ぶりとなった今回は、エアバス・ヘリコプターズの大型ヘリコプターを神戸空港へ運び、韓国のソウル(仁川)、ロシア・シベリアのノボシビルスク、ポーランドのワルシャワを経由してトゥールーズに帰着した。
愛称の「ベルーガ」はシロイルカを意味し、ユーモラスな外観が特徴。普段は欧州各地で製造されるエアバス機のパーツを、トゥールーズや独ハンブルクの最終組立工場など欧州の11都市へ輸送している。ベルーガが日本を訪れたのは1999年以来22年ぶりで、この時はドラクロワの絵画「民衆を導く自由の女神」を輸送するため、パリから成田へ飛来した。
ベルーガSTは中型旅客機A300-600Rをベースにしており、1996年1月に就航。全5機がエアバスの子会社「Airbus Transport International(ATI、BGA/4Y)」によって運航されてきたが、初号機(登録記号F-GSTA)と2号機(F-GSTB)は運航から離脱しており、今回は3号機(F-GSTC)が使用された。製造中のエアバス機の主翼など長尺の積荷も運ぶため、イルカが口を開けるように機体前方が大きく開く。
航空機の位置情報を提供するウェブサイト「フライトレーダー24(Flightradar24)」によると、ベルーガは現地時間19日にトゥールーズ・ブラニャック空港からエアバス・ヘリコプターズの工場があるマルセイユへ4Y8001便としてフェリー。積荷を搭載後、21日に最初の経由地であるワルシャワへ向けて4Y8002便として出発し、22日に第2経由地のノボシビルスクへ4Y8003便として、23日に第3経由地の仁川へ4Y8004便として向かった。
24日午後0時50分すぎに4Y8005便として仁川を出発し、関西空港のB滑走路(RWY24R)に午後2時29分ごろ着陸した。神戸空港には税関職員が常駐していないため、関空で積荷の通関を行ったとみられる(関連記事)。
そして、25日に関空のA滑走路(RWY24L)を4Y8006便として午前10時16分ごろ離陸。淡路島の南側から回り込むように約30分飛行し、神戸空港の滑走路(RWY27)に午前10時45分ごろ着陸した。関空と神戸ともにベルーガの飛来は初めてだった。
大型ヘリを降ろした後は、4Y8007便として神戸を午後5時12分ごろ離陸し、日本を離れた。その後は現地時間26日に4Y8008便として仁川からノボシビルスク、27日に4Y8009便としてノボシビルスクからワルシャワ、28日は最終区間の4Y8010便としてワルシャワ・ショパン空港を午前9時25分ごろ離陸し、トゥールーズへ同日午後0時15分ごろ着陸した。
すでに後継機となる中型貨物機A330-200Fがベースの「Beluga XL(ベルーガXL)」が2020年1月9日に就航しており、2023年末までに6機体制にする計画。今回飛来したベルーガSTは順次交代して全機退役するため、日本では貴重なフライトとなった。
*写真は16枚。
関連リンク
BelugaST (Airbus)
Airbus
神戸に飛来
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ベルーガST
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