日本航空(JAL/JL、9201)は12月16日、今年3月末で退役したボーイング777-200型機のうち、那覇空港に駐機していた機体(登録記号JA773J)を中部空港経由で売却先の米国へ向けて出発させた。日米でファンブレードに不具合が起きた米プラット&ホイットニー(PW)製エンジンPW4000を搭載した777は、国土交通省航空局(JCAB)の指示により、2月から運航停止措置が取られているが、乗客を乗せないフェリーフライト(回航便)に限り同省が14日に認めたことによるもの。米国ではすでにユナイテッド航空(UAL/UA)が実施している。
777に搭載されたPW4000は、日米で2020年12月から今年2月にかけてファンブレードに不具合が発生。日本では2020年12月4日にJALの那覇発羽田行きJL904便(777-200、JA8978)の左エンジンで、米国では現地時間今年2月20日(日本時間21日)にユナイテッド航空(UAL/UA)のデンバー発ホノルル行きUA328便(777-200、N772UA)の右エンジンでトラブルが起きた。これを受け、国交省は2月21日に日本国内で同型機を運航するJALと全日本空輸(ANA/NH)に対し、PW4000を搭載する777-200と長胴型である777-300の運航停止を指示した。
国交省によると、今回の運航停止の一部解除は、乗客を乗せないフェリーフライトに限ったもので、整備拠点や売却先へのフライトが対象。乗客を乗せる商業フライトを許可できる時期は未定だという。
JALによると、ファンブレード破断防止の追加措置として、従来から実施している内部の亀裂を調べる熱音響振動検査に加え、さらに小さな亀裂を発見できる超音波探傷検査を新たに実施。破断前に交換できるようにした。
JALの再開初便となったのは、東京オリンピック・パラリンピックのキャラクターをデザインした退役済みの特別塗装機「みんなのJAL2020ジェット」初号機(JA773J)の売却先へのフェリーフライト。同機は運航停止が決まった今年2月21日の羽田発那覇行きJL915便が、最後の商業フライトになった。その後、JALが3月31日付でPW4000を搭載した777-200と777-300を全機退役させたことから、そのまま那覇空港に駐機されており、約9カ月ぶりに飛行した。
JA773Jは、那覇空港を16日午後1時23分にJL4102便として出発し、最初の経由地である中部空港には午後3時24分に到着。中部を午後7時16分ごろJL8132便として出発し、2カ所目の経由地となるホノルルへ向かった。那覇から中部、中部からホノルルへは、海上を飛行するルートが選ばれている。ホノルルはJALの海外拠点の中でも整備体制が整っていることなどから、経由地に選んだとみられる。ホノルルを出発後は、現地時間17日に米国本土の売却先へ到着する見通し。
JALによると、今後のフェリーフライトは未定だという。ANAでも売却先へのフェリーフライト待ちの777が羽田などに駐機されている。
両社が国際線に投入している777-300ERや、JALが国内線に転用した777-200ERは米GE製エンジンGE90を採用しており、運航停止の対象外となっている。
2月に運航停止指示
・国交省、ANA/JALに777運航停止指示 ユナイテッド機事故でPWエンジン機(21年2月22日)
3月末で対象全機退役
・8ミリビデオやAMラジオも JAL、国内線777退役イベントで裏側紹介(21年4月26日)
・1便500席時代の終焉 特集・なぜJAL国内線777-300は後継不在なのか(21年4月5日)
・JAL、国内線777の退役完了 PWエンジン機運航停止で前倒し(21年4月5日)
N772UA関連
・ユナイテッドの777、ファンブレード2枚破断も機体損傷は軽微 NTSB調査(21年2月23日)
・FAA、777に緊急耐空性改善命令 ユナイテッド機不具合でPWエンジン機(21年2月22日)
・ユナイテッド航空の777,デンバー離陸後にエンジントラブル 部品落下も(21年2月21日)
PW4000搭載機
・エンジン不具合のJAL 777、那覇で修理終え羽田帰還 2カ月半ぶり(21年2月16日)
・JALの777ファンブレード損傷、1枚は疲労破壊か 運輸安全委(20年12月30日)
・JALの777、ファンブレード2枚損傷 同型エンジン点検、問題なし(20年12月7日)
・JALの777、那覇空港へ緊急着陸 左エンジン不具合で(20年12月4日)
・大韓航空の777、タービンディスク破断で火災か 16年5月、羽田の航空事故(18年7月27日)