仏ATRのステファノ・ボルテリCEO(最高経営責任者)は9月7日、ターボプロップ(プロペラ)機ATR42-600型機の改良型で、短い滑走路で離着陸できるSTOL(短距離離着陸)型「ATR42-600S」について、初飛行は2023年、納入開始は2025年初頭になるとの見通しを示した。
—記事の概要—
・世界需要150機
・離島も飛べる
・日本市場の動向
*インタビュー詳報はこちら。
世界需要150機
7日に日本の報道関係者向けに開いた説明会で、ボルテリCEOは「ATR42-600Sは量産開始を意味する『成熟度ゲート7』と呼ばれる設計の最終段階に到達した」と述べ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、従来は2022年に初納入を目指すとしていたスケジュールは見直したものの、順調に進んでいるとの見方を示した。
ボルテリCEOは2020年2月に来日した際、ATR42-600Sは世界全体で150機程度の需要が見込めるとし、エア・タヒチ(VTA/VT)などから20機の発注コミットメントを獲得していると説明していた。
7日にオンラインでAviation Wireの単独インタビューに応じたボルテリCEOは、「市場規模の見通しと4社から獲得している発注コミットメントは、今のところ変わっていない」と述べ、コロナ影響による顧客側の見直しなどは生じていないとした。
離島も飛べる
ATR42-600Sは、800-1000メートルの短い滑走路で離着陸できるATR42-600のSTOL(短距離離着陸)型。座席数1クラス30-50席の市場をターゲットにしており、日本でも離島路線を持つ航空会社などに売り込んでいく。
2017年6月に開発発表し、2019年10月にローンチ。エンジンの改良で離陸推力が増加し、フラップ25度での離陸により離陸揚力も増えた。ラダー改修による横方向制御の向上、スポイラーを使用した揚力制御、自動ブレーキを組み合わせることで、STOL性を実現した。
800メートル級の滑走路を離着陸する場合、既存のATR42-600では乗客数を約半分の22人に抑えなければならないが、ATR42-600Sであれば、定員48人を乗せて運航できるという。
日本市場の動向
日本市場では、天草エアライン(AHX/MZ)がATR機を初導入し、2016年2月20日にATR42-600(1クラス48席)を就航させた。その後、日本航空(JAL/JL、9201)グループで鹿児島空港を拠点とする日本エアコミューター(JAC/JC)がATR42-600(同48席)とATR72-600(同70席)を導入。2020年4月には、JALグループで札幌の丘珠空港を拠点とする北海道エアシステム(HAC、NTH/JL)が、ATR42-600(同48席)を就航させた。1998年就航のHACにとって初の機材更新で、22年ぶりの新機材となった。
現在は天草エアがATR42-600を1機、JACが8機のATR42-600と2機のATR72-600の計10機、HACが2機のATR42-600を運航中。HACの3号機(ATR42-600、登録記号JA13HC)が今月引き渡され、11月に就航する見通しで、3社が14機運航することになる。今年はJACの10号機(ATR42-600、JA10JC)が4月に引き渡されており、HACの3号機と合わせると2機を納入することになる。
ATRは、新潟空港を拠点に就航を目指す低コストの地域航空会社の「TOKI AIR(トキエア)」や空港建設の議論が進む小笠原諸島など、ATR42-600Sによる日本での新規需要の取り込みを目指す。
また、ターボプロップ機の置き換え需要は、官公庁の機体も合わせると40機程度あると見込んでおり、ATR42-600やATR72-600などで、デハビランドDHC-8-400(旧ボンバルディアQ400)の機材更新需要などを取り込みたい考えだ。
*ステファノCEOのインタビュー記事はこちら。
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