人は必ずミスを犯す。パイロットとて例外ではない。それを認め、対策を具体的かつ技術的に規定した訓練がCRM(Crew Resource Management:クルー・リソース・マネジメント)であることは前回述べた。アシアナ機(ボーイング777-200ER型機、登録番号HL7742)の事故は、その時コックピットにいた3人のパイロット間でCRMが機能していなかった、あるいはCRMそのものに対する認識が低かったことに原因がありそうだ。
このアシアナ機事故は、今後ヒューマンファクターの教科書に載るくらい、こう言っては不謹慎かもしれないが「典型的かつ示唆に満ちた」事例になると想像される。
乗務員全員が生還しており、米国家運輸安全委員会(NTSB)による事故に至る人的要因、つまりヒューマンファクターについての有意な調査結果を期待したい。
最終回では、このヒューマンファクターの観点から事故原因を探る。そして、航空会社に求められ、またその構築に努力している「安全文化(Safety Culture)」についても紹介しよう。
スイスチーズ・モデル
前回、事故に至る事象のチェーン(連鎖)について解説したが、この考え方をより多角的かつ汎用的に扱える概念図がある。英心理学者James Reason(ジェームズ・リーズン)氏が提唱したスイスチーズ・モデルである(図1)。
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