全日本空輸(ANA/NH)は6月26日、通常はホノルル線に投入しているものの、新型コロナの影響で成田空港に駐機中のエアバスA380型機「FLYING HONU(フライング・ホヌ)」を活用し、総2階建ての機内をレストランにするイベント「レストラン FLYING HONU」を開き、209人がファーストクラスやビジネスクラスなどで機内食を堪能した。成田の駐機場にはブルーとエメラルドグリーンの2機のA380が並び、機内見学会や撮影会も開かれた。
ANAのA380による「レストランFLYING HONU」のファーストクラスで提供された洋食のメインディッシュ=21年6月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
ANAは「空飛ぶウミガメ」の意味を持つFLYING HONUを、2019年5月24日から成田-ホノルル線に投入。座席数は4クラス520席で、アッパーデッキ(2階席)にファーストクラス8席と、全席通路アクセス可能なフルフラットシートのビジネスクラスを56席、プレミアムエコノミーを73席を配した。メインデッキ(1階席)はすべてエコノミーで383席あり、後方6列60席は日本初のカウチシート「ANA COUCHii(ANAカウチ)」とし、家族旅行などの需要を狙った。
A380をレストランにする企画は2020年9月に立ち上がり、市中の飲食店と同じく保健所の許可を1カ月半ほど掛けて取得。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染再拡大などで予定よりも開催までに時間がかかった。5月22日に初開催し、29日と30日の3日間で5月は計920人が参加した。6月は26日と27日に開き、7月は3日と18日の実施が決まっている。
料金はファーストクラスが5万9800円、ビジネスが2万9800円、プレミアムエコノミーが1万3800円、エコノミーが9800円。26日の場合、2号機が食事会場、初号機が機内見学の場とした。機内はファーストクラスからエコノミークラスまで全4クラスを見学し、ファーストとビジネスのフルフラットシートや、エコノミーのうち隣席を使ってベッドにできるカウチシートは横になって寝心地も体験できるようにした。また、運航中は通ることができない1階席と2階席をつなぐ階段も通れるようにし、ホノルル線に乗っても体験できない場も設けた。
機外では2機のA380が並んで写真を撮れるようにしたほか、食事会場となる2号機に搭乗する際はパイロットや客室乗務員、機内食を担当するシェフ、整備士らが参加者を出迎え、記念撮影にも応じていた。
ANAのA380による「レストランFLYING HONU」の機内見学会が開かれた初号機でファーストクラスを体験する参加者=21年6月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
成田空港でANAの「レストランFLYING HONU」の食事会場となったA380の2号機に機内食を積み込むフードローダー車=21年6月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
機内食を実機で食べる雰囲気を盛り上げようと、便名はNH2029便と名付けた。ファーストクラス洋食の場合、アミューズ、3種類から選べるアペタイザー、ブレッドセレクション、4種類から選べるメイン、3種類から選べるデザートをコースで提供。和食はアミューズ、先附、前菜、お椀、お造り、炊き合わせ、小鉢、主菜、御飯、デザートを用意した。
ビジネスも和洋を選択できコースで提供し、プレミアムエコノミーは和食と洋食のいずれかをワンプレートで用意した。エコノミーは、「ビーフハンバーグステーキ ロコモコ風」をメインとするメニューを提供した。また、成田市は「まん延防止等重点措置」などの対象外であることから、飲み物はワインやビールなどのアルコール類も選べるようにし、国際線の機内食を楽しめるようにした。
ANAのA380による「レストランFLYING HONU」の機内見学会が開かれた初号機(手前)と食事会場になった2号機=21年6月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
ANAのA380による「レストランFLYING HONU」の機内見学会が開かれた初号機=21年6月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
ANAのA380による「レストランFLYING HONU」を企画した成田空港支店の小林恵美子さん=21年6月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
企画を担当したANA成田空港支店総務部の小林恵美子さんは、「飛ばない飛行機でどれだけ楽しんでもらえるかを考え、テーマパークのようなものを目指したが、期待していた以上に楽しかったという声をいただき、リピーターの方もいるのがうれしい」と話した。
ANAの成田発着便は国際線が主力のため、新型コロナの影響により、多くの便が運休となっている。「飛行機が飛んでいる時はチームワークで1便を飛ばしているが、イベントもいろんなチームで運営しており、私たちも楽しめている」(小林さん)と、空港で働く人たちも、A380のレストラン企画により、フライトのような充実感を得ているという。
機内食を堪能した参加者が降機後、連絡バスでターミナルへ戻ると、A380とウミガメをモチーフにしたANAのオリジナルキャラクター、ブルーの「ラニ(lani)」、グリーンの「カイ(kai)」、オレンジの「ラー(la)」が出迎え、記念撮影の場を設けていた。ANAによると、これらの名前はキャラクターのもので、3機のA380の愛称ではない。
ANAは、8月に運航する成田-ホノルル線にA380を再投入する。運航日は成田発が9日と13日、ホノルル発は10日と14日で、ANAがホノルル線にA380を投入するのは、2020年3月25日に成田へ到着したホノルル発NH181便以来1年4カ月ぶりとなる。
親会社のANAホールディングス(ANAHD、9202)は3機のA380を発注しており、全機にハワイの空と海、夕陽をイメージした特別塗装を施した。初号機(登録記号JA381A)が青(ANAブルー)、2号機(JA382A)が深緑(エメラルドグリーン)、3号機(JA383A)がオレンジ(サンセットオレンジ)と1機ごとに色が異なる。機首の表情も、正面を見る初号機、ほほ笑む2号機、まつげを描いた3号機と違いがある。2020年10月30日に書類上ANAHDへ引き渡された3号機は現在、エアバスの最終組立工場がある仏トゥールーズに駐機されており、今秋にも正式に受領する見込み。
また、ANAは羽田空港でもレストラン企画「翼のレストランHANEDA」を3月から開催。長距離国際線用機材ボーイング777-300ER型機のうち、6月までに早期退役する機材を活用して開いた。
*写真は30枚。
ANAのA380による「レストランFLYING HONU」の食事会場となった2号機と記念撮影する参加者=21年6月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
ANAのA380による「レストランFLYING HONU」の食事会場となった2号機の前で参加者を出迎えるパイロットやシェフら=21年6月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
ANAのA380による「レストランFLYING HONU」のファーストクラスで提供された洋食の前菜=21年6月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
ANAのA380による「レストランFLYING HONU」のファーストクラスで提供された洋食のメインディッシュ=21年6月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
ANAのA380による「レストランFLYING HONU」のファーストクラスで提供されたデザート=21年6月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
ANAのA380による「レストランFLYING HONU」のビジネスクラスで提供された和食の前菜=21年6月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
ANAのA380による「レストランFLYING HONU」のビジネスクラスで提供された和食の主菜=21年6月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
ANAのA380による「レストランFLYING HONU」のプレミアムエコノミーで提供された機内食=21年6月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
ANAのA380による「レストランFLYING HONU」のプレミアムエコノミーで提供された機内食=21年6月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
ANAのA380による「レストランFLYING HONU」のエコノミークラスで提供された機内食=21年6月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
ANAのA380による「レストランFLYING HONU」のエコノミークラスで提供された機内食=21年6月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
ANAのA380による「レストランFLYING HONU」のエコノミークラスで機内サービスする客室乗務員(ANA提供)
成田空港でANAの「レストランFLYING HONU」の食事会場となったA380の2号機に機内食を積み込むフードローダー車=21年6月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
ANAのA380による「レストランFLYING HONU」の機内見学会が開かれた初号機(手前)と食事会場になった2号機=21年6月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
ANAのA380による「レストランFLYING HONU」の機内見学会が開かれた初号機でカウチシートを体験する男の子=21年6月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
ANAのA380による「レストランFLYING HONU」の機内見学会が開かれた初号機で1階席から2階席へ向かう階段を通る参加者=21年6月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
ANAのA380による「レストランFLYING HONU」の機内見学会が開かれた初号機でプレミアムエコノミーを体験する参加者=21年6月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
ANAのA380による「レストランFLYING HONU」の機内見学会が開かれた初号機でファーストクラスを体験する参加者=21年6月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
ANAのA380による「レストランFLYING HONU」の機内見学会が開かれた初号機のファーストクラスバーカウンターで記念撮影する参加者=21年6月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
A380で機内食を堪能し連絡バスで成田空港のターミナルへ戻る「レストランFLYING HONU」の参加者を出迎えるANAの社員=21年6月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
成田空港のターミナルへ戻った「レストランFLYING HONU」の参加者におみやげを手渡すANAの社員=21年6月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
成田空港のターミナルで「レストランFLYING HONU」の参加者を出迎えるオリジナルキャラクター(左から)ラー、ラニ、カイ=21年6月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
成田空港のターミナルへ戻りANAのオリジナルキャラクターのラーやラニ、カイと記念撮影する「レストランFLYING HONU」の参加者=21年6月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
成田空港のターミナルでANAのオリジナルキャラクターのラーらに見送られる「レストランFLYING HONU」の参加者=21年6月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
関連リンク
ANA国内チャーターイベント特集
全日本空輸
8月からホノルル線再投入
・ANA、成田-ホノルルA380再投入 1年4カ月ぶり、8月に2往復(21年6月1日)
就航2周年
・初の重整備迎えた空飛ぶウミガメ 特集・ANA A380就航2周年(21年5月24日)
・ANAのA380、ほほ笑みの2号機も成田帰着 初の重整備終えアモイから(21年4月28日)
・ANAのA380、2号機も重整備でアモイへ 深夜の成田から(21年3月31日)
・ANAのA380、初の重整備終え成田帰着(21年3月27日)
3号機
・ANA、A380の3号機受領へ 10月内納入も日本飛来は未定(20年10月22日)
・ANA、オレンジのA380お披露目 空飛ぶウミガメ3号機、ハンブルクでロールアウト(20年1月24日)
ホノルル空撮 初号機と2号機の2機並び
・【空撮】空飛ぶウミガメ、ホノルルに2機揃い踏み ANAのA380、週10往復に(19年7月3日)
写真特集・ANA A380 FLYING HONUの機内
(1)個室ファーストクラスでプライバシー確保(19年5月21日)
(2)ペアシートもあるビジネスクラス(19年5月22日)
(3)2階後方にゆったりプレエコ(19年5月23日)
(4)カウチシートもあるエコノミー(19年5月24日)
翼のレストランHANEDA
・パスポートなしでもファーストクラス堪能 ANA、羽田駐機777で「翼のレストラン」初開催(21年4月1日)