羽田空港のターミナルを運営する日本空港ビルデング(9706)は6月10日、現在第1ターミナル南ウイングで運用している1人乗りの自動運転パーソナルモビリティ(自動運転車いす)の運行範囲を14日から順次拡充し、7月中旬から第1・第2ターミナルの出発階全域で利用できるようにすると発表した。これにより、第1ターミナルに乗り入れる日本航空(JAL/JL、9201)とスカイマーク(SKY/BC)、スターフライヤー(SFJ/7G、9206)、第2発着の全日本空輸(ANA/NH)とエア・ドゥ(ADO/HD)、ソラシドエア(SNJ/6J)の国内線全6社の乗客がサービスを無料で利用できる。
使用する自動運転パーソナルモビリティは、WHILL(ウィル)が開発した次世代型電動車いす。2020年7月1日に第1ターミナルでサービスが始まり、空港での自動運転パーソナルモビリティの自動化は世界初となった。
誰でも利用できる無料のサービスで、利用者が電動車いすの待機場所で乗車すると、搭乗便の搭乗口まで自動運転で案内する。利用が終わると待機場所まで自動で返却される。運用時間は午前8時から午後8時まで。
6月14日からは第1ターミナルは全域に拡充し、新たに第2ターミナルの北エリアでも利用可能になる。7月中旬からは第2も全域に拡充し、すべての羽田国内線出発エリアで利用できる。
2019年11月から空ビルとJAL、WHILLの3社で実証実験を実施し、2020年7月から初期導入。当初はJALグループ便の乗客のうち、車いすを利用していたり、長距離を歩くことに不安を感じている人を主な利用者層として想定していた。空港内で車いすを使いたいというニーズが多い一方で、地上係員の負担軽減や省力化、新型コロナウイルスの感染リスク低減の観点から、車いすを自動運転のものに置き換え、人がやるべきサービスに特化させている。
今回のサービスを担当する空ビル事業開発課の倉富裕課長は、「コロナの影響で、係員が運転するカートは利用する方も係員も、どこか申し訳なさそうな気持ちになってしまいがち。日本人の心情として、歩くのがつらくて乗りたくても頼みにくい、という方もいらっしゃる。自動運転なので、老若男女を問わず、どんどん使っていただきたい」と話す。
実証実験を含めると2年間運用してきたことで、国内外の空港から問い合わせがあったり、病院への導入にもつながったという。また、航空や鉄道、バス、タクシーなど、マイカー以外の異なる交通手段を1つの移動手段として捉える概念「MaaS(マース:Mobility as a Service)」では、「自動運転の電動車いすが空港内の移動手段を担える」という。「羽田は国の顔なので、新しいサービスを考えるきっかけになれば」(倉富課長)と語った。
・JAL、羽田空港で自動運転車いすサービス開始 世界初、誰でも利用可(20年7月5日)
・JALとWHILL、羽田1タミで電動車いす自動運転の実証実験 20年度実用化へ(19年11月3日)