日本航空(JAL/JL、9201)は、LCC(低コスト航空会社)の春秋航空日本(SJO/IJ)を連結子会社化すると5月7日に正式発表した。数十億円を出資し、6月にも過半数を取得する。新型コロナ後はJALが得意とする出張需要よりも、観光需要やVFR(友人・親族訪問)の回復が先行するとして、中国市場の取り込みを目指す。
JALは7日に発表した2021-25年度中期経営計画で、LCC事業の売上をコロナ前の2019年度比で2025年度は約2倍に成長させる方針を示した。春秋航空日本のほか、JALが100%出資する中長距離LCCのZIPAIR(ジップエア、TZP/ZG)、50%出資するカンタス航空(QFA/QF)系のジェットスター・ジャパン(JJP/GK)の3社合計の売上で、成田空港を拠点に異なるマーケットを取り込んでいく。
春秋航空日本は、中国最大のLCCである春秋航空(CQH/9C)の子会社で、2014年8月1日に成田を拠点に就航した。今年の夏ダイヤ期間は国内線と国際線を3路線ずつ計6路線運航しており、国内線は成田-札幌(新千歳)、広島、佐賀、国際線は成田-ハルビン、天津、南京の各線を運航しているが、国内線は週1-2往復ずつ、国際線は毎週1往復または隔週1往復と大幅に減便している。
2018年3月には、JALのパイロット出身の樫原利幸氏が社長に就任。同年6月からはJALと整備子会社JALエンジニアリング(JALEC)へ航空機の管理を含めて整備業務を委託している。一方で、出資は少額にとどめていた。
ZIPAIRはアジアと米国西海岸、ハワイなどの中距離国際線を、ジェットスター・ジャパンは国内線と近距離国際線を展開し、春秋航空日本は中国市場に特化させる。人口1000万人超の中国都市がターゲットで、直行便が就航していないホワイトスポット(空白地帯)を開拓していく。
JALは、2020年11月に公募増資で最大約1826億円を調達。このうち150億円をLCC事業に投資しており、ZIPAIRが今後JALからリース導入するボーイング787-8型機の改修費用に50億円を充当する。残りの100億円は、ジェットスター・ジャパンと春秋航空日本に対する投融資の資金で、今回の子会社化はこの資金を充てる。
7日に発表した中計では、2023年度には新型コロナ前の利益水準を超えるEBIT(財務・法人所得税前利益)1700億円を達成し、最終年度には約1850億円を目指す。現在は売上の7割を超えるJALによるFSC(フルサービス航空会社)事業の割合を、3社によるLCC(低コスト航空会社)事業などを成長させて2025年度には1割程度引き下げ、リスク分散を図る。
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決算と中期経営計画
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