日本航空(JAL/JL、9201)の赤坂祐二社長は5月7日、カンタス航空(QFA/QF)とJALによる共同事業(JV)の申請に対し、豪州競争・消費者委員会(ACCC)が認可しない方針を示したことについて、「状況はかなり厳しいと感じている」と述べ、カンタスや同社傘下のLCCであるジェットスターグループとの関係を強化していく姿勢を示した。JALは同日発表した2021-25年度中期経営計画で、JV拡大による販売強化を収益性改善に向けた施策のひとつと位置づけている。
—記事の概要—
・マレーシアは承認、ハワイは却下
・国内線8割、国際線4割回復で黒字化
マレーシアは承認、ハワイは却下
JALは中計で、2023年度には新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響前の利益水準を超えるEBIT(財務・法人所得税前利益)1700億円を達成し、最終年度には約1850億円を目指す。現在は売上の7割を超えるJALによるFSC(フルサービス航空会社)事業の割合を、ZIPAIR(ジップエア、TZP/ZG)と春秋航空日本(SJO/IJ)、ジェットスター・ジャパン(JJP/GK)の3社によるLCC(低コスト航空会社)事業や非航空系事業を成長させて、2025年度には1割程度引き下げ、リスク分散を図る。
こうした中、FSC事業ではJVやコードシェア(共同運航)といった他の航空会社との連携強化が不可欠になっおり、JALはアメリカン航空(AAL/AA)、ブリティッシュ・エアウェイズ(BAW/BA)、フィンエアー(FIN/AY)、イベリア航空(IBE/IB)、マレーシア航空(MAS/MH)とJVを実施している。
カンタスとJALは、豪州・ニュージーランドと日本を結ぶ路線のJV認可を2020年12月にACCCへ申請。両社は1986年4月から日豪間でコードシェアを実施しているが、JVが認められると運賃や運航スケジュールを両社間で調整できるようになり、サービスの歩調を合わせられるようになるが、ACCCは認可しない方針を6日に示した。今後両社を含めた関係者から意見を受け付けるが、ACCCは両社のJVを認めると日豪間路線の競争力が低下する可能性があるとしている。
赤坂社長は、「最後まで諦めずにがんばりたい。FSC事業でパートナー連携は非常に重要」と述べ、JVが認められない場合もカンタスやジェットスターとの連携強化を目指す。
JALが近年申請したJVのうち、ハワイアン航空(HAL/HA)とのJVは、前提条件となる独占禁止法適用除外(ATI)の申請が昨年3月に米国運輸省(DOT)に却下された。一方、マレーシア航空とのJVは、2019年12月に日本とマレーシア当局に認められ、2020年7月にスタートしている。赤坂社長は「コードシェアは拡大していきたい」と述べ、JV以外の形でも提携先拡大を目指す。
国内線8割、国際線4割回復で黒字化
中計と同時発表した2021年3月期通期連結決算(IFRS)は、最終損益が2866億9300万円の赤字(20年3月期は480億5700万円の黒字)。売上収益は4812億2500万円(65.3%減)、EBITは3983億600万円の赤字(888億700万円の黒字)だった。
今期(22年3月期)の業績予想は、合理的な数値の算出が困難として開示を見送ったが、財務・経理本部長の菊山英樹専務執行役員は、「2023年度にコロナの影響が深刻に残っているとは思っていない」と今後の見通しを述べ、コロナ前と比べて国内線の旅客需要が8割、国際線が4割程度まで戻れば、EBITは黒字化できるとの見方を示した。
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日本航空
21年3月期決算と黒字化見通し
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