全日本空輸(ANA/NH)は4月28日、航空機内装品大手のジャムコ(7408)と共同開発した非接触性を高めた機内用トイレ(ラバトリー)に改修したボーイング787-8型機(登録記号JA817A)を報道関係者に公開した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大が続く中、トイレで手を洗った後は、ドアのノブなどには触れずに外へ出たいという乗客の要望を実現した。両社によると、ひじで開けられるラバトリーのドアは世界初だという。ANAは国内線に順次導入していく。
ラバトリーは機内で設置面積が限られているなどの理由もあり、自動ドアを設置するのは難しいといった課題がある中、ANAとジャムコはひじで開けられるドアを昨年試作。ドアの内側に「ひじ」を使って開けるハンドルを追加し、ドアをロックするノブを大型化した。今回公開した787も、既存ラバトリーのドアにハンドルを追加してノブを変更した。
ハンドルは従来通り手で開けることも、ひじで開けることも可能にした。故障せず、乗客がけがをしない構造にし、ANAにとどまらず業界全体で活用できるものを目指しているという。
8月に羽田空港のラウンジ入口に試作品を設置し、乗客にアンケートをとったところ、約550件の回答があり、7割程度が「良い」という意見だったという。「ひじだけでなく、従来通り開けられるのが良い」などの評価があった一方で、「案内がわかりづらい」との意見が寄せられた。
このため、ラバトリーに貼ってあるプラカード(シール)の表現をわかりやすくするため、絵の位置や大きさ、色を見直し、補足説明を追加した。ハンドルやノブの位置も、小学校低学年の子供が一人でトイレを使える高さにした。
ANA CX推進室商品企画部の眞野知彦部長は、「トイレのドアを指で触れることへの不安があることがわかった」と、乗客が接触感染を不安視していることが、開発要因のひとつだと述べた。ジャムコ プロダクトイノベーション室の大栗強(つよし)室長によると、昨年5月から開発がスタートしたという。
改修初号機のJA817Aは30日に整備を終え、5月1日に国内線に就航する見通し。2機目は同じく787-8のJA816Aで、5月下旬に改修が完了する見込み。今後は13機の787と8機の777のラバトリーを、今回お披露目した非接触タイプに改修する計画で、767など他機種は検討中だという。
ひじ開け式トイレドアの動画(YouTube Aviation Wireチャンネル)
・世界初!ひじで開けられるANAの化粧室ドア(1分35秒)
担当者インタビュー
・ANAとジャムコ、ドア触れずに出られるトイレ試作 非接触で感染防止、羽田ラウンジに展示(20年8月20日)