日本航空(JAL/JL、9201)は4月25日、3月末で全機が退役したボーイング777型機の国内線仕様機をテーマにした「ありがとう、ボーイング777-200型機&777-300型機!オンラインイベント」を開催した。ビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」を使った約2時間のイベントで、301人が参加した。4月の退役発表後、利用者から惜しむ声がJALのSNSに多く寄せられたことから、急遽企画した。
—記事の概要—
・機内安全ビデオは8ミリテープ
・一度に500人「やりがいある」
・赤坂社長「過酷な運航耐えてくれた」
機内安全ビデオは8ミリテープ
JALはエアバスA350-900型機の導入により、777の退役を進めている。国内線機材の777-200と777-300は、トラブルが起きた米プラット&ホイットニー(PW)製エンジンPW4000シリーズを搭載しているため運航停止が続いており、当初は2021年度だった退役予定を前倒し。3月31日をもって国内線仕様機はすべて退役した。
イベントでは、777のパイロットでチェッカーを務める加藤京二機長、客室乗務員の熊谷幸子さん、JALエンジニアリング(JALEC)の整備士の吉田達央さん(羽田)と麻谷啓介さん(伊丹)さんが、機体の特徴を紹介したり、思い出話を披露した。
羽田では、777-300(2クラス500席、登録記号JA8944)を吉田さんが案内。コックピットや客室だけではなく、貨物室や機内の配管が左右で異なる点などを紹介した。標準型の777-200より約10メートル長い外観を映した際は「翼の下から見た全景が個人的に好きです」と、カメラを手に案内していた。吉田さんによると、JA8944は昨年塗装し直したばかりだったという。
伊丹では、麻谷さんが777-200(3クラス375席、JA009D)を案内。合併前の日本エアシステム(JAS)が導入した機体で、参加者からは「レインボーシート」などJAS機にまつわる思い出も寄せられた。また、ドアやシート、ラバトリー(化粧室)、ギャレー(厨房)など、日本企業が製造した内装品も紹介していた。
JA009Dは1998年に引き渡された機体とあって、機内安全ビデオの上映に8ミリビデオのテープが使われていたり、機内エンターテインメントシステムを動かすシステムのOSがWindows 98(記者注:スタンドアローンで外部ネットワークとはつながっていない)だったりと、時代を感じさせた。また、かつてのAMラジオによるサービスで使っていたチューナーなどが紹介された。
AMラジオは到着地でNHKの放送を受信するもので、甲子園の時期などは乗客の要望も多かったという。
一度に500人「やりがいある」
パイロットの加藤さんは24年以上777に乗務。参加者からの質問に「飛行時間1万2000時間のうち、1万時間が777です」と答えていた。加藤さんは教官やチェッカー歴が長く、2016年の元日に行われた羽田発着の初日の出フライトでは、JA009Dの操縦桿を握った。「下地島で訓練した際、新人訓練生が操縦してもそれなりに飛んでくれる安定性に驚きました」と、普段のフライトも含めて安定感を高く評価していた。
777-200と777-300の違いを参加者から尋ねられると、「777-300のほうが内輪差が大きいので、モニターも見ながら地上走行していました」と話し、水平尾翼に取り付けられたカメラが主脚を映す「GMCS(グランド・マニューバリング・カメラ・システム)」がコックピットに映し出す映像も紹介された。
熊谷さんは、「羽田-伊丹線はサービス時間が限られるので、キッチンを担当する客室乗務員と一度にトレーを何枚出すかなどを事前に打ち合わせていました」と、フライト時間が短いながらも食事を提供するファーストクラスの様子を振り返っていた。また、777-300は、修学旅行生が乗ることも多かったという。
「一度に500人が乗れるのでやりがいがありました。後方の修学旅行生が着陸して拍手が沸き起こると、前方のお客様も笑顔になり、明るい雰囲気でした」と話していた。
赤坂社長「過酷な運航耐えてくれた」
イベントの最後には、整備出身の赤坂祐二社長がビデオで登場。日本の航空会社ではJALと全日本空輸(ANA/NH)が機体開発時から関わっていたことから、両社で整備を協力してスタートさせ、後にJASも加わったことなどを振り返っていた。赤坂社長にとっても、大手2社の整備協力体制の構築は大きな仕事だったという。
ジャンボで親しまれた747を中心に整備部門でキャリアを積んだ赤坂社長は、「777は747と比べると手が掛からず、本当に優秀な飛行機です。話し出すといくらでもあるのですが、CO2排出量がクローズアップされ、燃費が良く騒音の小さい飛行機が求められる時代になり、そろそろ引退の時期。国内線の過酷な運航環境に耐えてくれて、ありがとうと言いたいです」と、海外と比べて大型機ながら離着陸回数が格段に多い国内線運航を無事終えたことへの感謝の言葉で結んだ。
イベントを企画した広報部WEBコミュニケーショングループの久富悠介さんは、「777の退役が発表され、SNSで多くのコメントを頂き、4月1週目にやろうという話になり、急いで準備しました。最初は5月にできればと考えていたのですが、社内からなるべく早いほうがいいとアドバイスを受け、今日の開催になりました」と話す。今後の整備作業などで機体を使うことが難しくなることも想定し、早めに開いたという。
久富さんはイベント終了後、「暖かい言葉が多く、励みになりました。飛行機がいろんな人の思い出を乗せて飛んでいるんだと、改めて感じました」と喜んでいた。今後については「今回はお客様の声がきっかけでした。これからも少しでも実現していきたいです」と述べ、同グループで運営しているコミュニティサイト「trico(トリコ)」などで、企画を実現していきたいという。
関連リンク
「ありがとう、ボーイング777-200型機&777-300型機!オンラインイベント」を開催いたします!
trico
日本航空
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