全日本空輸(ANA/NH)は4月23日、大型貨物機ボーイング777Fを成田-ロサンゼルス線に臨時便として投入した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で世界的に旅客便の運航停止や海運で使う貨物コンテナ不足が続いていることから、貨物搭載量が旅客機と比べて約3.4倍となる777Fを投入し、半導体関連や自動車部品などを運んだ。ANAがロサンゼルスに貨物機を運航するのは初めてで、777Fの就航地としては5都市目となった。
日本やアジアから北米へ向かう積荷は、半導体製造装置や医療機器、自動車部品、パソコン関連、携帯電話など約75トンで、貨物機内に貨物コンテナを搭載する「ポジション」はすべて埋まった。ロサンゼルスからは、自動車部品やパソコン関連、生鮮食料品など約100トンを積む。
23日のロサンゼルス行きNH9646便(777F、登録記号JA771F)は、成田の16番スポットを午後1時43分に出発し、現地時間23日午前7時35分に到着予定。復路の成田行きNH9645便は23日午前9時35分にロサンゼルスを出発し、24日午後1時30分に到着するスケジュールになっている。次のロサンゼルス線への投入は、5月28日に予定しているが、定期便化は現時点で計画していない。
ANAは、4月の旅客便として羽田-ロサンゼルス線を週7往復(1日1往復)、成田-ロサンゼルス線を週4往復運航するほか、乗客を乗せずに旅客機で貨物のみ運ぶ貨物専用便を同数運航する計画。旅客便と貨物専用便を合わせると、羽田-ロサンゼルス線は週14往復分、成田-ロサンゼルス線は週8往復分の貨物スペースを供給できる。
しかし、世界的な旅客便の大量運休や海運用貨物コンテナ不足の影響が続いていることから、777Fを投入。ANAによると、4月は777Fをロサンゼルス線のほか、成田-シカゴ線に週7往復、成田-上海(浦東)線に週3往復、成田-フランクフルト線に週2往復、成田-バンコク線に月4往復投入する。
羽田-ロサンゼルス線に投入している大型旅客機777-300ERの貨物室は搭載量29トンだが、777Fは最大102トンまで積める。また、777Fは高さ3メートルまでの積荷を搭載できる。
ANAと同じくANAホールディングス(ANAHD、9202)傘下の貨物事業会社ANAカーゴ(ANA Cargo)の貨物機は11機で、2019年7月2日に就航した777Fが2機、51トン積める中型貨物機767Fは新造機の767-300FとANAの旅客機から転用した767-300BCFを合わせて9機となる。
ANAカーゴ成田ウェアハウスオペレーションセンターの浦野敏央副センター長によると、海運用貨物コンテナ不足の影響は、今年いっぱいは続きそうだという。単価は「かなり高い」(浦野氏)状態が続いており、当面は高止まりしそうだとの見方を示した。一方、777Fは現在2機がフル稼働していることから、新たな就航地は今のところ考えていないという。
*写真は10枚。
運航スケジュール
NH9646 成田(13:45)→ロサンゼルス(07:35)運航日:4/23、5/28
NH9645 ロサンゼルス(09:35)→成田(翌日13:30)運航日:4/23、5/28
ANAの貨物
・新型コロナワクチン、ANAの777-300ERで成田到着 機材大型化(21年4月5日)
・新型コロナワクチン、第3便が成田到着 ANAの787で最大52万回分(21年3月1日)
・新型コロナ用ワクチン、ANAの787で成田到着 ブリュッセルから貨物便(21年2月12日)
・ANA、成田に貨物便集約 アジア-欧米間の取込強化、収益向上へ(21年2月5日)
・ANA、沖縄貨物ハブ見直し 貨物機は運休継続(21年1月29日)
777F
・ANA、成田-バンコク線に大型貨物機777F投入 自動車部品好調、東南アジアから北米へ(20年12月11日)
・ANA、フランクフルト貨物便を定期化 777Fで週2往復(20年10月28日)
・ANA、成田-フランクフルト貨物臨時便 777F大型貨物機で(20年6月10日)
・ANAカーゴ、777F就航 日本初導入、大型貨物も輸送可に(19年7月2日)
・ANA、777F貨物機お披露目 日本初導入、北米への輸送強化(19年6月13日)
写真特集・ANA 777Fお披露目
機内編 荷主席にコンセント完備の大型貨物機
外観編 “アオカケス”北米へ大型貨物