航空自衛隊入間基地で3月26日、飛行点検機YS-11FC(機体番号52-1151)の退役に伴う機種更新記念式典が開かれた。機体の扱いについては、現時点で決まっていないという。
空自の飛行点検隊は、陸海空3自衛隊の42基地にある163の航空保安施設が、正常で必要な機能を有しているかを調べる「飛行点検」を受け持つ。YS-11FCのほか、U-125を2機、YSの後継となるU-680Aを3機運用しており、飛行点検回数は年間約300回にのぼる。
YS-11FCは、3機のうち飛行点検機として唯一新造された160号機(12-1160)が1971年2月25日に引き渡され、同年6月から飛行点検を始めた。残り2機は、要人(VIP)輸送仕様で製造された人員輸送機YS-11Pからの改造で、1965年3月30日に空自機として初めて納入された151号機が1992年3月から、1966年3月28日納入の154号機(62-1154)が一足先の1991年4月から飛行点検機として任務を果たしてきた。
151号機の納入日は、運輸省(現国交省)航空局に引き渡された量産初号機(JA8610)と同じ日。自衛官の定年とほぼ同じ55年にわたり飛び続けた。
カナダ製自動飛行点検装置「AFIS-1」(160号機のみドイツ製「AFIS-300」)や、自動飛行点検時に自機の位置を補正するためのカメラなどを搭載。搭乗員は飛行点検操縦士(機長)と副操縦士、機上整備員が1人ずつ、機上無線員(パネルオペレーター)が2人の計5人が基本編成だった。
最後の任務飛行は、3月4日に海上自衛隊の下総航空基地で行った飛行点検で、当初は2日の予定が荒天で延期となった。17日には、飛行点検隊のある入間基地上空での8の字飛行やタッチ・アンド・ゴーなどを披露し、ラストフライトを終えた。空自が運用する日本航空機製造(日航製)YS-11型機のうち、オリジナルの英ロールス・ロイス製ターボプロップエンジン、ダートMk542-10を搭載する最後の機体が151号機となった。すでに民間の航空会社や国土交通省航空局(JCAB)、海上保安庁、海自の機体は退役している。
式典であいさつした飛行点検隊司令の新崎秀樹1等空佐は、「飛行点検隊62年の歴史のうち、昭和、平成、令和と50年にわたり活躍した」と労をねぎらった。部品の関係などもあり運用を終えた点について、「非常に安定した飛行機で、まだまだ飛べる」と述べた。
退役後の扱いは「まだ決まっていないが、隊員のモチベーションや士気、部隊に対する帰属心につながるよう、使える部分は使っていきたい」と語った。
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【お知らせ】
自動点検装置について空自からの提供情報が更新されたため記事に反映しました。(21年4月6日 19:55 JST)